立教大学大学院文学研究科・文学部

立教大学文学部は、1907年、専門学校令に基づき立教大学が設立された際に設置された文科をルーツとする、歴史ある学部です。その歴史はさらに遡り、1859年、米国聖公会の宣教師ジョン・リギンズとチャニング・ウィリアムズが、タウンゼント・ハリスの支援を受けて長崎に私塾を開設したことに始まります。彼らは、英学教育の先駆けとして、西洋の学問を日本に紹介する役割を果たしました。リギンズによる『英和日用句集』の執筆や、ウィリアムズによる長崎英語伝習所での教育活動は、後の立教大学の礎を築いたと言えるでしょう。

1883年には、教育令により立教大学校が設立されました。ハーバード大学出身のジェームズ・ガーディナーが校長に就任し、東京大学の文学コースに匹敵する学習課程を持つ高等教育機関として、多くの学生を受け入れました。明治時代には、英米文学の分野で大きな発展が見られました。立教学校卒業生である河島敬蔵によるシェイクスピア劇の翻訳や、水田南陽によるシャーロック・ホームズの紹介は、日本の英米文学史に重要な足跡を残しています。また、長沢別天によるエドガー・アラン・ポーやジョン・ミルトンの紹介も、当時の英文学普及に貢献しました。さらに、1903年には、立教生の岡本鶴松がトマス・ヒューズの『トム・ブラウンの学校生活』を翻訳し、明治時代の高校生に広く読まれるベストセラーとなりました。

1920年には、英文学科の学生だった加藤まさをを中心とした文芸雑誌『塔』が創刊されました。加藤による独特な装幀や、掲載された詩作品は、当時の文芸界に新たな風を吹き込みました。1922年、大学令により立教大学が再び大学に昇格すると、文学部が設置され、英文学科、哲学科、宗教学科が設置されました。1925年には史学科が加わり、さらに充実した教育体制が整えられました。

史学科には、小林秀雄、原田淑人、白鳥清、竹岡勝也、辻善之助ら、各分野で第一人者となる教授陣が集まりました。彼らの指導の下、立教大学は史学研究においても重要な役割を果たすようになりました。また、日本の英語教育の第一人者である岡倉由三郎や、言語学者の金田一京助も教授に就任し、英文学科、言語学講座の充実にも貢献しました。立教大学の史学教育の歴史は古く、1859年の私塾においても、西洋の歴史に関する書籍が使用され、日本の知識人に大きな影響を与えていました。明治時代には、久米邦武が立教学校で史学を講じていました。

1922年には、高垣松雄が教授に就任し、日本のアメリカ文学研究の基盤を築きました。高垣の後継者として、富田彬も教授となり、アメリカ文学研究をさらに発展させました。高垣は、1939年には日本で最初のアメリカ研究所を創設しました。教育心理学の分野では、岡部弥太郎が教授として教育学や心理学を講じ、幼少教育の先駆者としても活躍しました。

太平洋戦争の影響により、1943年には文学部は一時閉鎖されましたが、戦後の1946年に復活し、キリスト教学科と英米文学科が設置されました。その後、社会学科、心理教育学科、日本文学科、フランス文学科、ドイツ文学科などが設置され、学部はますます発展していきました。考古学の分野では、中川成夫が博物館学を講じ、近世考古学の開拓者として知られる加藤晋平と共に、考古学研究に貢献しました。また、大久保利謙の日本近代史研究や、海老沢有道のキリスト教史学研究も、立教大学文学部の重要な研究活動として挙げられます。

1960年代後半には、新しいカリキュラムが導入され、吉田新一による英米児童文学の授業などが開講されました。吉田は、『ピーターラビット』研究の第一人者として知られ、多くの後進を育成しました。2006年には学部・学科の再編成が行われ、文学科が設置され、既存の各文学科は廃止されました。現在、立教大学文学部は、キリスト教学科、文学科（英米文学専修、日本文学専修、ドイツ文学専修、フランス文学専修、文芸・思想専修）、史学科、教育学科の4学科体制となっています。

立教大学文学部は、その長い歴史の中で、多くの著名な教授や卒業生を輩出し、日本の文化・学問の発展に貢献してきました。これからも、多様な分野における研究と教育を通して、社会に貢献していくでしょう。

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