薩摩藩家臣

薩摩藩家臣団の構造

薩摩藩の家臣団は、藩主である島津氏を支える重要な存在でした。その家格は、正徳元年までに整備され、大きく分けて10の階層に分かれていました。

家格

1. 御一門: 藩主一族の分家で、特に重んじられた4家（加治木家、垂水家、重富家、今和泉家）を指します。私領を持ち、藩主が断絶した場合の跡継ぎを出す役割も担っていました。
2. 一所持: 私領を持つ有力な家臣で、30家ありました。
3. 一所持格: 一所持に次ぐ家格で、13家ありました。
4. 寄合: 家老を出すことができる上士層で、約60家いました。
5. 寄合並: 寄合に準じる家格ですが、一代限りのため変動が激しい家格でした。寄合と合わせて約60家ありました。
6. 無格: 2家のみ存在しました。
7. 小番: 約760家いました。
8. 新番: 約24家いました。
9. 御小姓与: 約3000家いました。ここまでが城下士と呼ばれました。
10. 与力: 赦免士や座附士とも呼ばれ、准士分の扱いでした。

外城士（郷士）

地方の外城に在住する外城士は、江戸中期以降「郷士」と呼ばれるようになりました。家格は御小姓与と同格でしたが、藩政改革以降は城下士より下に見られるようになりました。郷士の中でも家柄や血統によって身分の上下があり、名門でなければ麓三役（外城行政の上級役人）にはなれませんでした。

私領士（家中）

直臣である城下士や郷士よりも下に見られていましたが、戊辰戦争後の藩政改革で私領が廃止された際に、ほとんどが郷士となりました。

身分間の移動

能力、養子縁組、分家、零落など様々な理由で身分間の移動がありました。

明治維新時

明治維新の際、薩摩藩には43,119戸の士族が存在しました。これは、薩摩藩が広大な領地を持ち、九州統一の過程で各地の武士を取り込んだ結果、諸藩と比較して非常に多い数でした。

有力分家

薩摩藩は77万石の大藩でしたが、支藩は佐土原藩のみでした。しかし、小大名級の所領に封じられた分家や庶流を多数抱えていました。

御一門

藩主直系の子孫を当主とする4家は「御一門」と呼ばれ、別格の扱いを受けていました。御一門は、藩主家が断絶した際に跡継ぎを出す役割も担っていました。また、家老などの役職には就きませんでしたが、藩主の命で政務に参加することもあり、その場合は家老よりも格上の扱いでした。

重富島津家：一門家の筆頭とされ、越前島津家が前身です。
加治木島津家：一門家として重要な役割を担いました。
垂水島津家：一門家の一つで、藩政に影響力を持っていました。
今和泉島津家：一門家の中で最も新しく成立した家です。

大身分

御一門に次ぐ家格で、4つの有力分家が存在しました。これらの家は、藩主への挨拶の儀式序列において、御一門の次に位置し、国老（家老）よりも上位とされました。

日置島津家：島津左衛門家とも呼ばれました。
花岡島津家：島津周防家とも呼ばれました。
都城島津家：島津筑後家とも呼ばれ、北郷氏の本家でもありました。
宮之城島津家：島津図書家とも呼ばれました。

特に都城島津家は、大身分の中で最も広大な領地を持っていました。これらの大身分は、一門四家と合わせて八家とされ、さらに種子島氏本家を加えることで、実質的に九家が特に重んじられていました。

近世前期の動向

近世前期には、本宗家に次ぐ「脇の惣領」を巡って、垂水家と加治木家・日置家が対立したり、宮之城家が日置家と同格を主張したりする訴訟が起きていました。また、年頭太刀進上の座席順をめぐり、新納家と佐多家の間で悶着が起きていました。

その他の氏族

戦国時代の島津氏の九州統一過程で臣従した国人の末裔が、江戸時代に家臣となりました。しかし、藩主の子息を養子に迎え入れられることが多く、血統は島津氏に乗っ取られた家も多かったとされています。これは、仙台藩でも同様の傾向が見られます。

主要な家臣団の家系

以下に、薩摩藩の主要な家臣団の家系をまとめます。

重富島津家：島津忠紀を初代とし、忠救、忠貫、忠公、忠教、忠鑑と続きました。
加治木島津家：島津忠朗を初代とし、久薫、久季、久連、久門、久方、久徴、久照、久徳、久長、久宝と続きました。
垂水島津家：島津久信を初代とし、久敏、忠紀、久治、忠直、貴儔、貴澄、貴品、貴柄、貴典、貴敦と続きました。
今和泉島津家：島津忠郷を初代とし、忠温、忠厚、忠喬、忠剛、忠冬、忠敬、忠欽と続きました。
佐土原島津家：島津以久を初代とし、忠興、久雄、忠高、惟久、忠雅、久柄、忠持、忠徹、忠施、忠寛と続きました。
日置島津家：島津常久を初代とし、久慶、忠朝、久竹、久健、久林、久甫、久統、久知、久風、久徴、久明と続きました。
花岡島津家：島津久儔を初代とし、久尚、久敦、久弼、久寛、久誠、久敬、久実、久基と続きました。
宮之城島津家：島津忠長を初代とし、久元、久通、久竹、久洪、久方、久倫、久亮、久濃、久郷、久儔、久中、久宝、久治と続きました。
都城島津家：北郷忠能を初代とし、翁久、忠亮、久直、久定、島津忠長、久理、久龍、久茂、久般、久倫、久統、久本、久静、久寛、久家と続きました。
種子島氏本家：種子島久時を初代とし、忠時、久時、久基、久達、久芳、久照、久道、久珍、久尚、守時と続きました。

これらの家系は、薩摩藩の歴史において重要な役割を果たしました。

まとめ

薩摩藩の家臣団は、複雑な階層構造を持ちながらも、藩主である島津氏を支える重要な役割を担っていました。御一門や大身分といった有力な家柄から、地方の郷士まで、多様な家臣団が薩摩藩の歴史を形作っていました。これらの家臣団の構造を理解することは、薩摩藩の歴史を深く理解する上で不可欠です。

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