1973年の鉄道

1973年（昭和48年）の鉄道

1973年は、日本の鉄道史において様々な変化が刻まれた年となりました。主要都市圏での新線開業や既存路線の延伸、長距離路線の電化・複線化が進む一方で、地方交通線を中心に複数の路線がその歴史に幕を下ろしました。また、労働争議に関連した混乱が社会問題となる中、新型車両の投入や既存路線のサービス改善も図られました。

主な出来事

年の初めには、北海道の旭川電気軌道で東川線および東旭川線の全線が廃止となり、多くの駅が姿を消しました。また、上武鉄道の日丹線も旅客営業を終了しています。西日本鉄道でも吉塚線（西鉄福岡市内線の一部）が廃止され、妙見停留場、吉塚駅前停留場が廃止されました。

3月には、名古屋鉄道の挙母線の一部区間（大樹寺駅から上挙母駅間）が廃止となり、沿線の主要駅も姿を消しました。同月末には富山地方鉄道の富山軌道線の一部支線も廃止されています。この時期には、国鉄中央本線の複線化が落合川駅から中津川駅間で進み、京葉臨海鉄道臨海本線が北袖分岐点から京葉久保田駅まで延伸し、新駅が開設されました。

4月1日は、国鉄にとって画期的な一日となりました。首都圏では武蔵野線の府中本町駅から新松戸駅間（57.5km）が開業し、新たな通勤・貨物輸送ルートが誕生しました。これに伴い、西国分寺駅、新小平駅、新秋津駅など多くの新駅が開設されています。また、中央本線の一部区間が武蔵野線に移管され、東京競馬場前駅が廃止されました。一方、同じく4月には根岸線が洋光台駅から大船駅まで延伸し、港南台駅と本郷台駅が開業しています。地方では、羽後交通雄勝線や越後交通栃尾線といった地方交通線が廃止されるなど、明暗が分かれました。また、京阪神急行電鉄が阪急電鉄へと社名を変更しています。

また、4月には労働組合の順法闘争に反発した乗客による混乱が深刻化しました。3月13日には高崎線上尾駅で上尾事件が発生し、多数の車両が被害を受けるなど暴動に発展。さらに4月24日には首都圏の赤羽、上野、新宿駅などで同様の首都圏国電暴動が発生し、大きな社会問題となりました。

5月には、中央本線の南木曽駅から田立駅間および田立駅から坂下駅間で複線化が進展。さらに5月27日には、中央本線の塩尻駅から中津川駅間（94.9km）が直流1,500Vで電化され、中央西線の輸送力増強が図られました。

夏から秋にかけても路線の開業が続きました。7月には国鉄盛線（現・三陸鉄道リアス線の一部）が綾里駅から吉浜駅まで延伸し、新たな駅が開業しています。9月1日には、関西本線の貨物支線を改良・延伸した伊勢線（現・伊勢鉄道）が南四日市駅から津駅間（26.0km）が開業し、鈴鹿駅（新）など6つの新駅が誕生しました。さらに9月9日には、札幌近郊で千歳線の新線（苗穂駅 - 北広島駅間、19.6km）が開業。旧線の一部区間は廃止・移管されました。月末には福井鉄道鯖浦線の一部区間が廃止されています。

10月には、南海電気鉄道（本線、高野線など）と大阪府都市開発（現・泉北高速鉄道）の泉北高速鉄道線で長年使用されてきた直流600Vから直流1,500Vへの大規模な昇圧が実施され、車両の性能向上と輸送力増強に寄与しました。また、国鉄牟岐線が牟岐駅から海部駅まで延伸しています。

年末にかけても延伸開業が続き、11月には東京都交通局の地下鉄6号線（現・三田線）が三田駅から日比谷駅まで延伸（3.3km）し、芝公園駅などが開業しました。12月には大阪府都市開発の泉北高速鉄道線が泉ケ丘駅から栂・美木多駅まで延伸（2.4km）しています。一方で、12月16日には三菱石炭鉱業大夕張鉄道線の一部区間が廃止されました。

車両と受賞

1973年には、国鉄の特急形電車181系をベースにした勾配線区用特急形電車381系（振子式車両）や、試験用新幹線電車961形など、多くの新型車両が登場しました。客車では24系、貨車ではタム9600形、トキ80000形などが加わっています。私鉄においても、近畿日本鉄道の8600系や名古屋鉄道の7700系、神戸電鉄の3000系などが新たに導入されています。海外では、ドイツ連邦鉄道の403形電車（ET403）、フランス国鉄のT2形客車、フィンランド国鉄のSr1形電気機関車などが登場しました。一方、国鉄のタム7300形など複数の貨車形式や、南海電気鉄道のサハ1831形、2051系などがこの年に形式消滅しています。

その年の優秀な鉄道車両に贈られる賞では、第16回ブルーリボン賞を日本国有鉄道の183系電車が受賞しました。特急「とき」などに使用されたこの車両は、それまでの直流特急形電車の集大成とも言える高性能車両でした。また、第13回ローレル賞には、小田急電鉄の9000形電車が選ばれています。前面貫通扉付きの地下鉄乗り入れ対応車両として登場し、その後の通勤形電車の設計に大きな影響を与えました。

1973年は、幹線網の近代化と通勤輸送力増強が進む一方で、地方交通の再編も進行した、日本の鉄道にとって多角的な変化が見られた一年と言えるでしょう。

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