45型駆逐艦

45型駆逐艦：イギリス海軍の防空の要

45型駆逐艦（Type 45 Destroyer）は、イギリス海軍が運用するミサイル駆逐艦の艦級です。1番艦の艦名から「デアリング級（Daring-class）」、または姉妹艦の艦名が全て「D」で始まることから「D級（D class）」とも呼ばれます。その高度な防空能力と革新的な技術は、現代の海軍において重要な役割を果たしています。

開発の経緯

1960年代以降、NATO諸国はフリゲートの共同開発を模索していましたが、1979年に発足したNFR-90計画は、各国の要求の差異から難航し、イギリスは1989年に脱退しました。その後、フランスと共同でA3F計画を開始しましたが、これも各国の意見対立により遅延し、イギリスは1999年に脱退。しかし、PAAMS（Principal Anti-Air Missile System）の開発には引き続き参加し、これを中核とした独自の防空艦を開発することを決定しました。これが45型駆逐艦です。

当初12隻が計画されましたが、建造費の高騰と予算削減、ネットワーク能力の強化などにより、2008年には6隻に削減されました。常時5隻を就役させる計画は変更されていませんが、イギリス国防省では困難視する意見も出ています。

設計

船体は、2層の全通甲板を備えた遮波甲板型で、7,000トン級と大型化しています。これは、主センサーであるサンプソン多機能レーダーのアンテナを海面上35メートルの高さに配置するためのものでした。艦内スペースも拡大され、居住性、抗堪性、整備性が向上しました。

居住性には特に配慮がなされており、士官は個室、下士官も個室または2人部屋が与えられています。また、iPodドックが設置されていることも話題になりました。定員は190人ですが、最大235人まで増員可能で、海兵隊員60人の乗艦も考慮されています。

船型は幅広で、艦首のフレアを強め、シアを高めるなどの改良が加えられています。これにより、レーダー反射断面積（RCS）を低減し、ステルス性が向上しました。構造設計には、ロイド艦船規則が導入され、ブロック方式による建造が行われました。

機関

45型駆逐艦の最大の特徴は、統合全電気推進（IFEP）方式を採用したことです。これは、主機関を電気推進のみとし、電力と艦内電力を共用する技術で、電力配分の最適化や維持コストの削減、水中騒音の抑制に貢献します。

主発電機には、ノースロップ・グラマン/ロールス・ロイス WR-21ガスタービンエンジンが2セット搭載されており、長大な航続距離を実現しています。また、バルチラ製ディーゼルエンジンを原動機とする発電機も搭載されています。推進器は固定ピッチ・プロペラですが、取付角度を調整できる組立式です。

最大速力は29ノットですが、ネームシップは海上公試で31.5ノットを記録しました。

問題点

2016年、2基の発電機の容量不足から頻繁に停電が発生し、全艦が機関に問題を抱えていることが報じられました。これは、より過酷な環境での運用を強いられたことが原因とされています。

2018年3月、発電ユニットを換装する改修が決定し、「プロジェクトネイピア」として実施されました。既存のディーゼル発電機を、より強力なロールスロイス製発電ユニット3基に置き換えることで、電力供給の安定化が図られています。

水中雑音の問題も指摘されており、デイリー・テレグラフの報道によると、45型駆逐艦の水中放射雑音が激しく、遠距離の潜水艦にも探知される可能性があるとされています。

装備

C4ISR:

SAMPSON多機能レーダー: Sバンドのアクティブ・フェーズド・アレイ（AESA）レーダーで、最大探知距離250 km、同時追尾可能目標数500～1,000、同時交戦可能目標数12。敵の電子攻撃に対する耐性が高い。
S1850M: Lバンドの広域捜索3次元レーダーで、遠距離での早期警戒を担当。SAMPSONレーダーを補完する。
MFS-7000: バウ・ドームに搭載されたソナーで、EDO社の997型ソナーのイギリス海軍制式版。
CMS-1: SSCSを基に発展させた戦術情報処理装置。
戦術データ・リンク: リンク 11、リンク 16、リンク 22、STDLに対応。

武器システム:

シーバイパー（GWS.45）艦対空ミサイル・システム: PAAMSのイギリス仕様。即応性、同時交戦能力、耐妨害性に優れる。
シルヴァーA50 VLS: 48セルを搭載し、アスター艦対空ミサイルを収容。
シーセプター（[CAMM]）用VLS: 24セルを追加装備。シルヴァーVLSはアスター30専用となる。
55口径114mm単装砲: 退役した42型駆逐艦の装備を流用し、砲盾のステルス化を図った。
GSA.9（ラダメック2000）: 電子光学式の砲射撃指揮装置。
DS30B 75口径30mm単装機銃: 近接目標への備えとして搭載。
ファランクス 20mmCIWS: 後日装備。
ハープーン艦対艦ミサイル: 一部の艦に装備。
リンクスHMA.8、マーリンHM.1: 艦載ヘリコプター。

同型艦

デアリング (D32)
ドーントレス (D33)
ダイヤモンド (D34)
ドラゴン (D35)
ディフェンダー (D36)
ダンカン (D37)

運用史

2021年6月23日、「ディフェンダー」がクリミア半島沖でロシアの領海を侵犯したとして、ロシア軍から警告射撃を受けました。イギリス国防省はこれを否定し、国際法に則り航行していたと主張しています。

2023年12月16日、「ダイヤモンド」が紅海で商船を狙っていたとみられるドローンを撃墜しました。

登場作品

映画:
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ|007_ノー・タイム・トゥ・ダイ』：「ドラゴン」が登場し、巡航ミサイルを発射します。

結論

45型駆逐艦は、高度な防空能力と革新的な技術を備えたイギリス海軍の主力艦艇です。しかし、電力不足や水中雑音といった問題点も抱えており、今後の改修や運用が注目されます。

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