パヤオ県

パヤオ県(タイ語: จังหวัดพะเยา)は、タイ北部に位置する県の一つです。北はチエンラーイ県、東はナーン県、南はプレー県、西はラムパーン県と接し、さらに東部ではラオスとの国境を形成しています。

地理的には、県の中心部が美しいクワーンパヤオ湖のほとりに広がり、その周囲をルワン山(標高1,697m)、クンメーファート山(標高1,550m)、クンメータム山(標高1,330m)といった標高の高い山々が取り囲んでいます。こうした地形は、古来よりこの地が自然豊かな環境であったことを示しています。

歴史的背景



パヤオは、歴史的に見ると、中国の雲南方面からタイ地域へ南下する民族が最初に到達する主要な盆地の一つでした。この地の肥沃さと穏やかな風光は、ラーオ族ヤオ族など、様々な民族の足跡を育んできました。

この地にタイ族の政治勢力が現れたのは早く、西暦1096年にはチョームタム王によってパヤオ王国が建国されました。これはタイ族の歴史において最初期に位置づけられるムアン(部族国家)であり、一般的にタイ史上最初の国家とされるスコータイ王国の建国よりも、およそ1世紀半ほど先行するものです。

13世紀には、パヤオ王国中興の祖とされるガムムアン王が登場します。彼は、当時の周辺有力勢力であったチエンマイのラーンナータイ王朝のマンラーイ王、そしてスコータイ王国ラームカムヘーン大王と歴史的な同盟を結び、王国の勢力を確立しました。この三王の同盟は、伝説的な要素を含んで語り継がれていますが、その背景には、当時急速に勢力を拡大し、大理国パガン王朝を征服して雲南・ビルマ方面からタイ地域に迫っていたモンゴル帝国(元朝)の脅威に対する備えがあったと考えられています。ガムムアン王のもと、パヤオ王国は北東方面へ領土を広げ、その歴史上最大の版図を実現しました。

しかし、この三王間の同盟は、彼らの個人的な信頼関係に基づく側面が強く、王たちが世を去るとともに実質的な結束力を失いました。ガムムアン王の死後、パヤオは周辺勢力からの度重なる侵攻を受けるようになり、王国は次第に衰退の一途をたどります。1338年には、ラーンナータイ王朝の属国とされ、さらにその後、ビルマのタウングー王朝の軍に占領されたことで、パヤオの町は一時廃墟となるほどの壊滅的な打撃を受けました。

19世紀後半、1865年から1890年にかけて発生したホー戦争では、この地域もその戦場となりました。近代に入ると、1897年チエンラーイ県の一部となりましたが、長い歴史を経て、1977年8月28日に再び独立した県として再出発しました。

経済と社会



パヤオ県は、かつてタイ国内でも特に貧困率が高い地域の一つとされていましたが、近年は経済状況の改善が見られます。県内にはヤオ族やモン族といった山岳少数民族が多く暮らしており、彼らの多くは社会経済的に厳しい状況に置かれていることが少なくありません。十数年前までは、こうした少数民族が抱える困難な状況が、パヤオ県全体の貧困というイメージを強く印象づける要因となっていました。また、県に暮らすタイ民族と少数民族の抱える問題が混同されて語られることも少なくなく、パヤオ県そのものが持つ本来の魅力や実態が十分に理解されていない側面もありました。

しかし、パヤオは歴史ある古都であり、また風光明媚なクワーンパヤオ湖に面するなど、観光地としての高い潜在力を持っています。これらの開発が進むことで、少数民族を含む県全体の経済状況や生活環境の改善が期待されています。現在、パヤオ県は日本とタイ両国による共同の貧困対策支援の対象地域となっているほか、YMCAをはじめとする様々な国内外のNGO団体が、少数民族の支援や人身売買防止といった活動に取り組んでいます。

県のシンボル



県のシンボルである県章には、県内にあるワット・コームカムに安置されているプラチャオ・トーンルワン仏が描かれています。仏像の後ろには威光を示す七つの炎、両脇には豊穣を象徴する稲穂が配されています。県木には、美しい花を咲かせるオクロカルプス(通称サーラピー、学名 Mammea siamensis)が指定されています。

行政区分



パヤオ県は、9つの郡(アムプー)で構成されており、さらにその下に68の町(タムボン)、632の村(ムーバーン)が置かれています。

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