元澄

元澄（げん ちょう）

元澄（467年 - 519年）は、北魏の皇族であり、任城文宣王の爵位を持ちました。字は道鏡と称しました。

生涯

元澄は、任城王拓跋雲と孟氏の長男として生まれました。481年に父が亡くなると、任城王の爵位を継承し、征北大将軍の号を授けられました。485年には、柔然が北魏に侵攻した際、使持節・都督北討諸軍事として柔然討伐の指揮を執りました。その後、西方で氐や羌といった諸民族が反乱を起こすと、都督梁益荊三州諸軍事・征南大将軍・梁州刺史として鎮圧に当たりました。彼は、氐の楊仲顕や婆羅、阿卜珍兄弟、苻叱盤らを帰順させ、北魏の官職を与えることで懐柔策を講じました。

後に、征東大将軍・開府・徐州刺史に任じられ、その地で優れた政治手腕を発揮しました。平城に召還されて中書令となり、その後尚書令に転じました。492年には、南朝斉からの使者である庾蓽が来朝した際、元澄はその風儀と礼法をもって応対し、七言詩を賦してその文雅を称えられました。

493年、孝文帝が洛陽遷都を強行する際、元澄はその計画策定に協力しました。撫軍大将軍・太子少保に任じられ、尚書左僕射を兼任しました。平城に赴き洛陽遷都を公表し、滑台で孝文帝に報告しました。孝文帝の鄴への巡幸にも同行し、吏部尚書に任じられました。

494年、孝文帝が北巡する間、元澄は洛陽の留守を預かりました。孝文帝が洛陽に帰還すると、再び尚書右僕射を兼任しました。南朝斉で蕭鸞が蕭昭文を殺害すると、南朝斉の雍州刺史であった曹虎が北魏への帰順を申し出てきました。孝文帝による南朝斉への親征について群臣の意見が分かれる中、元澄は李沖と共に親征に反対しましたが、孝文帝は自ら南伐の軍を指揮しました。495年、元澄は従軍して懸瓠まで進みましたが、病に倒れ洛陽へ帰還しました。孝文帝が洛陽に戻ると、元澄は群臣と共に清徽堂の夜宴に参加しました。孝文帝の鄴への巡幸にも同行し、その後洛陽に帰還しました。

496年、公務での失敗により一時免官されましたが、すぐに吏部尚書を兼任しました。恒州刺史の穆泰が反乱を起こすと、元澄は節を受け、行恒州事として雁門に急行し穆泰を捕らえました。497年、孝文帝が平城に巡幸した際、元澄はその功績を労われ、正式に尚書となりました。孝文帝が南征の軍を起こすと、元澄は洛陽の留守を任され、再び尚書右僕射を兼任しました。

499年、南朝斉の太尉である陳顕達が漢陽に侵攻してくると、病床にあった孝文帝は親征を公表し、元澄はこれに従いました。4月に孝文帝が崩御すると、元澄は遺命を受け後事を託されました。宣武帝が即位すると、南朝斉の降人である厳叔懋が尚書令の王粛が南朝斉と内通していると告発し、元澄はこれを信じて告発に加担しました。しかし、咸陽王元禧や北海王元詳らから糾弾を受け、免官となり邸に蟄居することとなりました。

その後、平西将軍・梁州刺史に任じられましたが、老母のことを理由に辞退しました。また、安東将軍・相州刺史にも任じられましたが、これも固辞しました。その後、安西将軍・雍州刺史に任じられました。501年、都督淮南諸軍事・鎮南大将軍・開府・揚州刺史となり、任地で孫叔敖の墓を封じ、蒋子文の廟を破壊しました。たびたび南征を願い出ましたが、宣武帝は許しませんでした。母のことを理由に揚州刺史の辞任を願い出ましたが、これも聞き入れられませんでした。

502年、南朝梁の将軍である張囂之が木陵戍を陥落させると、元澄は輔国将軍の成興を派遣して撃破させ、木陵戍を奪回しました。503年3月には、長風戍主の奇道顕を派遣して南朝梁の陰山戍を攻撃させ、その戍主である梅興祖を斬らせました。さらに白藁戍を攻めさせ、南朝梁の寧朔将軍である呉道爽を斬らせました。元澄は蕭宝寅や陳伯之らを率いて淮南の攻略を計画し、鍾離を攻撃しましたが、淮水の増水により寿春に撤退しました。

後に、鎮北大将軍・定州刺史に任じられました。母の孟氏が死去すると、辞職して喪に服しました。喪が明けると、太子太保に任じられました。当時、高肇が朝廷で権勢を振るい、皇族の抑制を図っていたため、元澄は保身のため酒に溺れ、退廃した生活を送りました。その様子は狂人と噂されるほどでした。

515年1月、宣武帝が崩御し、孝明帝が即位すると、元澄は尚書令に任じられました。さらに散騎常侍・驃騎大将軍の位を加えられました。8月には、司空に転じ、侍中の任を加えられました。まもなく尚書令を兼任しました。南朝梁の軍が浮山で淮水を堰き止め寿春を水没させようとしたため、元澄は使持節・大将軍・大都督・南討諸軍事に任じられ、10万の兵を率いて出征することとなりましたが、淮水の堰が自然に崩壊したため、南征は中止となりました。

この頃、元澄は『皇誥宗制』と『訓詁』を著し上表するなど、霊太后に意見することが多く、それらが取り上げられることもありました。519年5月、司徒公に任じられましたが、同年12月に死去しました。享年53歳。仮黄鉞・使持節・都督中外諸軍事・太傅・太尉公の位を追贈され、文宣王と諡されました。

家族

妻
李氏（? - 501年、長安で死去）
馮令華（馮熙の娘）
子
元順
元淑（早逝）
元斐（早逝）
元彝
元紀（字は子綱。永熙年間に給事黄門侍郎。孝武帝の西遷に従い、西魏の尚書左僕射・華山郡王となった）
女
新豊公主（杜攢の妻）
元氏（王翊（王粛の兄の王琛の子）の妻）

伝記資料

『魏書』巻19中 列伝第7中
『北史』巻18 列伝第6
魏上宰侍中司徒公領尚書令太傅領太尉公仮黄鉞九錫任城文宣王文竫太妃墓誌銘（馮令華墓誌）
雍州刺史任城王妃李氏墓誌

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