大圓寺 (恵那市)

大圓寺（だいえんじ）

大圓寺は、美濃国遠山荘（現在の岐阜県恵那市岩村町）に存在した臨済宗妙心寺派の寺院です。南北朝時代の建武2年（1335年）に、遠山氏によって創建され、戦国時代の元亀3年（1572年）に武田氏によって焼討ちされ、滅亡しました。現在は大円寺跡として、恵那市の指定史跡となっています。

歴史

大圓寺は、京都大徳寺栖真院の末寺として、建武2年（1335年）に美濃国恵那郡遠山荘の地頭で岩村城主の遠山三郎が、峰翁祖一を招き、遠山一族の総力を結集して建立されました。峰翁祖一は尾張国の妙興寺の一世であり、美濃国では阿木村の大禅寺や吉祥寺など数ヶ寺を開創しています。

二世は玉林宗璨、三世は月菴宗光と続き、四世は宝林清円、五世は進叟性勝であったと推察されています。応永17年（1417年）には、室町幕府の四代将軍足利義持が発令した大圓寺住職の辞令が、尾張の妙興寺の塔頭である耕雲院に現存しており、大圓寺が室町幕府の保護を受けていた官寺であったことを示しています。

隆盛を誇った大圓寺でしたが、何者かの兵火によって一時衰微しました。その後、天文3年（1534年）に遠山景前が甲斐恵林寺を再興した名僧明叔慶浚を招いて大圓寺を再興しました。明叔慶浚は、天文10年（1541年）まで止住しました。明叔は飛騨国の南部を治めた戦国大名三木直頼の義兄です。

明叔が去った後、希菴玄密禅師が住持となりました。希菴は快川紹喜と共に臨済二大徳と言われた高僧で、京都妙心寺で管長職を5度務めた他、恵林寺の住持にもなっています。

天文23年（1554年）に武田信玄が遠山氏の領地と接する信濃の伊那郡を制圧したため、遠山七頭は信玄の軍門に下りました。弘治2年（1557年）には、大圓寺に武田信玄の制札が掲げられました。

永禄7年（1564年）の信玄の母・大井の方の十三回忌法要は、信玄の願いにより当時、恵林寺にいた希菴により営まれました。その後、妙心寺に戻った希菴に、遠山氏より大圓寺住持の依頼が再び来ました。希菴はこれを受け入れ、再び住持となりました。

元亀3年（1572年）、岩村城主の遠山景任が病死すると、織田信長は東美濃の支配権を奪う好機として岩村城を占領しました。信玄は大圓寺にいた希菴に対し、恵林寺へ戻るように再三要請しましたが、希菴は応じませんでした。これに激怒した信玄は、秋山虎繁に命じて希菴の殺害と大圓寺の破壊を命じました。

元亀3年（1572年）11月26日、大圓寺を攻撃すると聞いた希菴は、寺から逃亡しましたが、秋山虎繁の刺客によって殺害されました。その後、大圓寺は武田勢によって徹底的に破壊され、歴史の幕を閉じました。

快川紹喜の存続依頼

希菴と並び臨済二大徳の一人であった快川紹喜は、希菴殺害の報を聞き、信玄に大圓寺の存続を依頼しましたが、大圓寺は徹底的に破壊されたため、存続は叶いませんでした。

歴代住持

峰翁祖一（大暁禅師）
玉林宗璨
月菴宗光
寶林清円
進叟性勝
明叔慶浚
希菴玄密

その他、大虫全岑・心王・定菴性守・南山●薫・絶照●晃・無言宗輷・中怡西堂・宗才首座・了室宗縁・竺華などが一時期住持であったと考えられています。

塔頭

東光院
通玄院（圓通院）
綱宗院
大聖院
栽松庵
倚松軒

大圓寺が焼亡した後に、上手向村の西尾氏らの願いによって、上手向村八つ田へ移し、桂堂首座により、圓徳寺が開山しました。

十境

大圓寺には、十境と呼ばれる景勝地がありました。
龍門関
水晶山
錦屏峰
長松嶺
載流橋（通天橋）

出土品

大圓寺跡からは、鎌倉・室町時代の古瀬戸系の骨壺、無釉の印花陶器、天目釉の茶碗や徳利、常滑系甕、瓦器、須恵皿、山茶碗、おろし皿、古井戸柵、木箸、宋からの渡来銭などが出土しています。

末寺

大明寺 (朝来市)
大通寺 (北条市)

所在地

岐阜県恵那市岩村町富田大円寺

参考文献

『岩村町史』
『山岡町史　通史編』
『恵那郡史』
『中世美濃遠山氏とその一族』

外部リンク

臨済宗五山派・美濃大円寺興亡史　花園大学国際禅学研究所
『岩村町史』 9.大円寺（明覚山） - WAIP（国立国会図書館）
* 大暁禅師(峰翁祖一)の木造　愛媛県松山市

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