宮本益光

宮本益光（みやもと ますみつ）は、1972年9月28日生まれ、愛媛県八幡浜市出身の日本の声楽家（バリトン）、オペラ歌手であり、合唱指揮者、音楽学者、音楽教育者、詩人（作詞家）、翻訳家（訳詞家）、著作家、脚本家、オペラ演出家、舞台演出家、作曲家としても活動する、多才な音楽家です。東京藝術大学にて博士（音楽）の学位を取得しています。

経歴

東京藝術大学を卒業、同大学大学院修士課程、博士後期課程を修了しました。博士論文では「オペラの日本語訳詞、その方法論」を研究し、博士号を取得しました。声楽は佐藤陽三、高橋大海に師事。1994年、大学卒業時に芸大ヘンデル『メサイア』のソリストとして初舞台を踏み、その後もバッハ『ロ短調ミサ』、ハイドン『ハルモニー・ミサ』などのソリストを務めました。

オペラ歌手としては、1996年に広島オペラルネッサンス モーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』のマゼット役でデビュー。その後、2001年には東京室内歌劇場 ブリテン『ヴェニスに死す』の旅行者役、2002年には新国立劇場小劇場シリーズ 原嘉壽子『シャーロック・ホームズの事件簿・告白』のホームズ役、神奈川県民ホール 三善晃『支倉常長 遠い帆』の徳川家康役など、数々のオペラに出演しました。

2003年には東京室内歌劇場 アンドレ・プレヴィン『欲望という名の電車』（日本初演）のスタンリー役で注目を集め、翌2004年には二期会で『ドン・ジョヴァンニ』のタイトルロールを演じ、二期会デビューを飾りました。主なオペラ出演歴としては、2006年東京二期会 モーツァルト『コジ・ファン・トゥッテ』のグリエルモ役（宮本亞門演出）、2010年神奈川県民ホール・びわ湖ホール プッチーニ『ラ・ボエーム』のマルチェッロ役、新国立劇場『鹿鳴館』（三島由紀夫原作、池辺晋一郎作曲、世界初演）の清原永之輔役、日生劇場 グルック『オルフェオとエウリディーチェ』のオルフェオ役などがあります。2011年には二期会『ドン・ジョヴァンニ』のタイトルロールを再演、2012年には日生劇場開場50周年記念特別公演 アリベルト・ライマン『メデア』のイヤソン役、2013年には東京二期会 ヨハン・シュトラウス2世『こうもり』のファルケ役、新国立劇場 香月修『夜叉ケ池』（世界初演）の学円役、日生劇場50周年特別公演 アリベルト・ライマン『リア』のオルバニー公役など、主要な役を数多く務めています。その後も2014年東京二期会 カールマン『チャールダーシュの女王』フェリ・バーチ役、2015年神奈川県民ホール 黛敏郎作曲・三島由紀夫原作『金閣寺』溝口役、2017年神奈川県民ホール モーツァルト『魔笛』パパゲーノ役、神奈川県民ホール フンパーディンク『ヘンゼルとグレーテル』パパ役、2019年東京二期会・フランス国立ラン歌劇場共同制作『金閣寺』溝口役、2020年二期会 レハール『メリー・ウィドウ』ダニロ役など、多数のオペラに出演しています。

コンサート活動も盛んで、ベートーヴェン『第九』やフォーレ『レクイエム』などの宗教曲、古典から現代作品、邦人作品まで幅広いレパートリーを持ち、東京都交響楽団、東京交響楽団、読売日本交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団など、全国各地の主要オーケストラと共演しています。2004年には読売日本交響楽団とのオルフ『カルミナ・ブラーナ』がテレビ放映されました。その端正な容姿からファンも多く、2020年にはサントリーホールで「ハンサム四兄弟」として出演しました。

リサイタル活動も積極的に展開しており、東京オペラシティ、フィリアホール、HAKUJU HALL、津田ホールなどで定期的に開催。銀座王子ホールでは「宮本益光の王子な午後」というシリーズコンサートを継続しており、2020年12月には27回目を迎えました。その中では、夫婦のがん闘病を綴った日記を連作歌曲にした企画も行われました。また、2015年には王子ホールでバリトンリサイタル「歌劇場への誘い」を開催しました。

オペラの日本語訳詞のエキスパートとしても知られており、ペルゴレージ『奥様女中』を皮切りに、ビゼー『カルメン』、オッフェンバック『地獄のオルフェ』、プーランク『カルメル会修道女の対話』、トマ『ミニヨン』、日生劇場『ラ・ボエーム』などの新日本語訳詞を手掛けています。

詩人・作詞家としては、詩集を出版し、加藤昌則、信長貴富など多くの作曲家へ詩を提供し、歌曲や合唱曲として演奏、出版されています。特に加藤昌則とは東京藝大の同期であり、リサイタルのピアノ伴奏を務めるなど、長年の協力関係を築いています。

合唱指揮者としては、シンフォニーヒルズ少年少女合唱団、洋光台男声合唱団、初音の杜ジュニアコーラス、カマラード横浜などの音楽監督を務め、八幡浜児童合唱団の特別講師も務めています。2018年には東京六大学合唱連盟定期演奏会で慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団を指揮しました。

教育者としては、桐朋学園大学准教授、聖徳大学客員准教授、東京藝術大学講師として後進の指導にあたっています。門下生には吉田安希、塚原絢、川並和香、澤原行正、及川響子などがいます。門下生による演奏会も開催されています。

また、多岐にわたる活動の中で、企画、構成、脚本、演出、字幕などを手掛け、その才能を発揮しています。コンサートでは司会や案内役、語りなども担当しています。

1995年には新しい日本の歌作品を創造する団体「桜声舎」を組織し代表を務め、2000年には故郷の音楽家たちと「アンサンブル・ソネット愛媛」を設立しました。

東京シティ・バレエ団の台本と演出も担当し、2016年にはオペラ『ヤマタノオロチ』で主役と演出を務めました。

自身で「黒い薔薇歌劇団」を結成し、構成・演出・字幕を手掛けた『魔笛』を複数回公演、また「MOZART SINGERS JAPAN」を主宰し、モーツァルトのオペラを上演、CDをリリースしています。

著作家としても活動し、著書に『宮本益光とオペラへ行こう』『職業：宮本益光』などがあります。

二期会会員、日本声楽アカデミー会員であり、2018年には「やわたはま応援隊」に任命されました。

受賞歴

友愛ドイツ歌曲コンクール学生の部第1位
奏楽堂日本歌曲コンクール奨励賞
第69回日本音楽コンクール入選
国際モーツァルトコンクール派遣者選考会にて優秀賞
よんでん文化振興財団奨学生
2005年「テレビ愛媛賞25」
2009年「よんでん芸術文化賞」芸術文化奨励賞
2012年度 第11回佐川吉男音楽賞 (オペラ『白虎』)
2006年 第61回文化庁芸術祭大賞 (オペラ『コジ・ファン・トゥッテ』)

学術論文

博士論文 『オペラの日本語訳詩、その方法論』
『ジーバー「8小節からなる36曲のヴォカリーズ集」の研究と活用法』

出版作品

著書
『宮本益光とオペラへ行こう』
『職業：宮本益光』

詩集
『もしも歌がなかったら』
『樹形図』

楽譜 (作詞)
『同声合唱組曲 あしたのうた』
『同声女声合唱とピアノのための 歌いたがりの歌の歌』
『二部合唱のための6つのソング うたうたう』
『女声合唱組曲 花流し』
『二部合唱曲集 いのちの寓話』
『女声合唱曲集 にじのソネット』
『ピアノと歌う 世界の歌曲 －歌の翼に－』

楽譜 (作曲)
『歌曲集 私の歌』
『男声合唱のための合唱詩「ふなたび」』

脚本
オペラ『白虎』

発売メディア

CD
『おやすみ』
『加藤昌則歌曲集 あしたのうた』
『千の風になって／小さな空』
『碧のイタリア歌曲』
『信長貴富歌曲集 うたうたう』
『宮本益光歌曲集 私の歌』
モーツァルト『コジ・ファン・トゥッテ』全曲
モーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』全曲
モーツァルト 音楽劇『バスティアンとバスティエンヌ』
『オーケストラル・シーン』
『クラシック 2007』
『今井重幸 回顧展コンサート ライブ録音』
『湯浅譲二 オーケストラの時の時』
『ラスト・ソング－人生を彩る奇跡の歌』
オペラ『白虎』

DVD
『宮本益光リサイタル－日本語訳詞で聴くオペラ名場面集』

Blu-ray
冨田勲『イーハトーヴ交響曲』

関連図書・DVD

『二本の木 夫婦がん日記』
『二本の木 －がんで逝った夫婦 815日の記録－』

放送出演

テレビ
テレビ朝日『題名のない音楽会21』
BSフジ『わがまま!気まま!旅気分』
NHK総合『家族で選ぶにっぽんの歌』
日本テレビ『深夜の音楽会』

ラジオ
* NHK-FM『名曲リサイタル』


宮本益光は、その幅広い才能と多岐にわたる活動を通じて、日本の音楽界に多大な貢献をしている音楽家であるといえるでしょう。

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