志摩町和具

志摩町和具について

志摩町和具は、三重県志摩市の南部に位置し、前島半島の中央に位置する集落です。北は英虞湾、南は熊野灘に面し、両方に港を持つという地理的な特徴があります。この地域は、海女の多い場所として知られており、鳥羽市の菅島や相差と並び称されています。また、間崎島や和具大島など、複数の離島を抱えています。

地理

和具の地形は、複雑な海岸線と点在する島々が特徴です。主な島としては、英虞湾には間崎島、座賀島、高崎島などがあり、熊野灘には大島、鳴神、幣ノ島などが浮かんでいます。これらの島々は、豊かな自然と多様な生態系を育んでいます。また、江田川、奥谷川、岡崎川といった河川が地域を流れ、生活用水や農業用水として利用されています。

中心集落は和具漁港の北側に広がり、住宅や商店が密集しています。特に、宅地の平均敷地面積は129平方メートルと狭く、建ぺい率の規制はあるものの、建物が密集している印象を受けます。この地域は、東は志摩町布施田、西は志摩町越賀と隣接しています。また、鳥羽市の答志島にも「和具」という集落があるため、「志摩の和具」や「崎島の和具」と呼ばれることがあります。

歴史

和具の歴史は古く、小字百部や石ヶで発見された円墳からは、石室や須恵器片が出土しており、古代から有力者が存在したことが示唆されています。文献においては、平城宮跡から出土した木簡に「志摩国志摩郡和具郷」という記述がありますが、これがこの地域を指すのか、答志島の和具を指すのかは確定していません。

この地域に関する最も古い記録は、嘉元3年（1305年）の『摂ろく（竹冠に録）渡荘目録』に見られ、当時、この地が摂関家渡領・勧学院領であったことが記されています。

戦国時代には、「志摩十三地頭」の一人である青山氏（和具氏）が勢力を持ち、和具に居城を構えていました。この城は「和具砦」と呼ばれ、7代にわたって使用されました。青山氏の初代・青山小平太は、暦応年間（1338年～1341年）に紀伊国から守護に招かれ、この地に来たと伝えられています。青山氏の子孫である青山豊前は、後に九鬼嘉隆の家来となり、九鬼姓を名乗り、軍功をあげました。その後、九鬼氏の家督争いで転封となり、摂津国三田藩に移っています。

江戸時代には、和具村は英虞郡鵜方組に属し、鳥羽藩の支配下にありました。主な産業は漁業で、耕地は稲作には不向きだったため、サツマイモなどの畑作が中心でした。サツマイモは、英虞湾対岸の鵜方や浜島の農民と取引され、生活物資が交換されていました。

明治時代に入ると町村制が施行され、和具村は単独で村制を敷き、1939年に和具町に昇格しました。その後、2度の大合併を経て現在の志摩市志摩町和具となりました。大正時代には、住民の生活水準が向上し、美珠通りに商店が立ち並ぶようになりました。しかし、1960年代頃から始まった宅地造成により、遊水地が失われ、1970年代には頻繁に浸水被害が発生するようになりました。近年、河川改修などの対策が進められ、浸水被害は減少しています。

地名の由来

地名の由来については複数の説があります。『三蔵寺文書』によると、かつて「矢納村」と呼ばれていた地域が、盗賊の被害から回復し平和になったことから「和具村」に改称されたとされています。また、中村精貮は、近隣住民が和具の人々を「サワグ（騒ぐ）」と呼んでいたが、忘れん坊なので「ワグ」になったという説を紹介しています。さらに、和具にある古墳に葬られた「乙若子命」にちなんで「ワグ」となったという説も唱えています。地名研究家の池田末則は、「ワ」を輪や凪、渚、「グ」を処と解釈し、吉田茂樹は和具を「脇」と解釈しています。

経済

和具の基幹産業は水産業です。和具漁港は漁業基地として機能し、イセエビ、アワビ、カツオ、タイなどが水揚げされます。かつては浜島と並ぶ漁業の中心地でしたが、浜島の衰退により、和具が志摩市の漁業を支える中心となっています。農業では、野菜やサツマイモが生産されています。

和具漁港

和具漁港は、三重県が管理する第4種漁港です。かつては天然の良港でしたが、明治末期から大正期にかけての台風で機能が損なわれたため、県の事業として港湾整備が行われました。近年では、地域活性化のため、県外からの漁船の誘致も進められています。

離島

和具には、間崎島、座賀島、大島などの離島があります。間崎島は有人島で、真珠養殖とイワシ漁が盛んです。座賀島は無人島で、三重大学大学院水産実験所や真珠養殖の作業小屋があります。大島は無人島で、ハマユウの群生地として知られています。

交通

和具には鉄道は通っていません。道路は狭く、対向車のすれ違いが難しい場所が多くあります。路線バスは三重交通が運行しており、御座港、磯部バスセンター、伊勢市駅前、伊勢赤十字病院を結んでいます。国道260号と美珠通りが幹線道路であり、美珠通りは商店街として賑わっています。海上交通としては、和具港から間崎島、賢島への定期船が運航されています。

文化

和具では、潮かけ祭りという祭りが毎年旧暦6月1日に行われます。また、手こね寿司は、和具発祥の郷土料理とされています。

出身者

和具出身の著名人としては、実業家・衆議院議員の石原円吉や、大相撲力士の志摩ノ海航洋がいます。

この文章は、志摩町和具の地理、歴史、経済、文化、交通など、多岐にわたる情報をまとめたものです。この地域を理解する上で役立つでしょう。

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