月山神社

月山神社について

月山神社は、山形県の霊峰月山の山頂、標高1,984mに鎮座する神社です。その歴史は古く、『延喜式神名帳』にも記載される名神大社であり、明治時代には東北地方唯一の官幣大社に列せられました。古来より修験道を中心とした山岳信仰の場として栄え、現在も多くの参拝者を集めています。

祭神

祭神は月読命（つくよみのみこと）です。神仏習合の時代には、月山神の本地仏は阿弥陀如来であると考えられるようになりました。八幡神の本地仏である阿弥陀如来が月読命になぞらえられたのは、東北地方特有の信仰形態であり、浄土教の浸透が阿弥陀如来信仰を月山に導いたと考えられています。室町時代までは、月山の神は八幡大菩薩とされていました。

また、月山の縁年は卯年とされており、卯年に参拝するとより大きなご利益が得られると伝えられています。

由緒

社伝によれば、崇峻天皇の第三皇子である蜂子皇子が、推古天皇元年（593年）に羽黒山を開山し、さらに同年、月山を開いて当社を創建したとされています。蜂子皇子は、人々の悩みや苦しみに耳を傾け、その面倒をよく見たことから「能除仙」と呼ばれるようになったと伝えられています。

しかしながら、史料を考察する限り、開祖である能除仙と蜂子皇子が同一人物であるという確たる根拠はありません。また、磐舟柵が3度目に修理された文武天皇4年（700年）から出羽郡が建てられた和銅元年（708年）の間には、越国以北の夷征が行われていましたが、出羽の蝦夷征討が開始される前に出羽三山に登ることは困難だったと考えられます。

月山神に関する最も古い記録は、『新抄格勅符抄』に記載された宝亀4年（773年）の神封2戸の寄進です。その後、『日本三代実録』には、月山神が神階の陞叙を受ける様子が度々登場します。例えば、貞観6年（864年）には従三位に、貞観18年（876年）には正三位に昇叙されています。また、貞観10年（868年）には、月山と大物忌の両神社の前に石鏃が降ったという記録も残っています。

延長5年（927年）には、『延喜式神名帳』によって名神大社に列格され、国家から祭祀料が与えられるなど、朝廷からの手厚い保護を受けていました。しかし、『日本三代実録』や『延喜式』では、月山の神が飽海郡の神とされている記述があり、これは当時、鳥海山の大物忌神社と共に、国府に近い飽海郡に社殿が設けられていたためと考えられています。

平安時代中期から明治の神仏分離まで、月山は出羽三山の一角として修験道の重要な道場となっていました。奈良時代末期までの開山を裏付ける資料は見つかっていませんが、平安時代になって初めてその存在が確認できます。

出羽三山の宗教勢力は次第に隆盛し、戦国時代から安土桃山時代には、武藤氏、上杉氏、最上氏などの戦国武将から干渉を受けました。特に最上義光は、庄内平野へ侵攻する際に月山を越えたため、兵卒によって御室が荒らされたり、仏像や神宝が略奪されたりしました。このため、羽黒山では、月山の西の覗にある洞穴に仏像や神宝を隠し、その秘密を守るため妻帯修験の重陽坊に一子相伝で管理させたと言われています。しかし、関ヶ原の戦い後、庄内や由利を領有した最上義光は、出羽三山を懐柔するため、羽黒山・月山の修理再建を行いました。その一つとして、慶長6年（1601年）には、月山神社本宮の修復が行われています。

江戸時代に入っても、出羽三山は修験道の場として人々の信仰を集めました。元禄2年（1689年）には、俳聖松尾芭蕉が出羽三山を訪れ、月山に登拝しています。その紀行文『おくのほそ道』には、「雲の峯 いくつ崩れて 月の山」という句が残されています。

明治時代になると、神仏分離令によって出羽三山は廃仏毀釈の激しい波に晒されました。僧侶や山伏は還俗を余儀なくされ、多くの貴重な仏像や仏具が破壊されたり、散逸したりしました。明治5年（1872年）には修験宗廃止令が出されましたが、その後、生き残った山伏達の努力によって、出羽三山の修験の命脈は保たれました。

このような混乱の中、出羽三山の神仏分離は進められ、明治7年（1874年）に当社は国幣中社に列せられ、その後、官幣中社、官幣大社へと昇格しました。しかし、第二次世界大戦後、近代社格制度が廃止されると、昭和23年（1948年）に神社本庁が包括する別表神社となりました。

昭和29年（1954年）には、当社と出羽神社、湯殿山神社を併せた宗教法人として出羽三山神社（三神合祭殿）が羽黒山に置かれています。

現在でも、月山は古くからの信仰と歴史を受け継ぎ、多くの参拝者にとって特別な場所であり続けています。

参考文献

黒板勝美 國史大系編修会 編 『國史大系 第27巻 新抄格勅符抄・法曹類林・類聚符宣抄・続左丞抄・別聚符宣抄』 （株）吉川弘文館 1965年1月
黒板勝美 國史大系編修会 編 『國史大系 第4巻 日本三代実録』 （株）吉川弘文館 1966年4月
黒板勝美 國史大系編修会 編 『國史大系 第2巻 続日本紀』 （株）吉川弘文館 1966年9月
戸川安章 『出羽三山 －歴史と文化－』 （株）郁文堂書店 1973年8月
山形県 編 『山形県史蹟名勝天然紀念物調査報告 第11輯 出羽の三山』 名著出版 1974年6月 （昭和15年刊の複製）
山形県 編 『山形県史蹟名勝天然紀念物調査報告 第12輯 出羽の三山』 名著出版 1974年6月 （昭和16年刊の複製）
全国神社名鑑刊行会史学センター 編 『全国神社名鑑 上巻』 全国神社名鑑刊行会史学センター 1977年7月
神道大系編纂会 編 『神道大系 神社編32 出羽三山』 神道大系編纂会 1982年8月
谷川健一 編 『日本の神々 -神社と聖地- 12 東北・北海道』 （株）白水社 1984年6月
萩原恭男 校注 『おくのほそ道 付 曾良旅日記 奥細道管菰抄』 （株）岩波書店 1991年12月

関連項目

岩根沢三山神社

外部リンク

出羽三山神社

もう一度検索