楊寛

楊寛（よう かん）

楊寛（よう かん、生年不詳 - 561年）は、中国の南北朝時代、北魏から北周にかけて仕えた軍人、政治家です。字は景仁。本貫は恒農郡華陰県。激動の時代を、その才覚と義侠心で生き抜きました。

生涯

幼い頃から非凡な才能を示し、周囲から注目されていました。成長すると文武両道に秀で、20歳で奉朝請に任じられます。父・楊鈞に従い各地を転戦、功績を重ねました。

520年、柔然の阿那瓌が北魏に亡命。翌年、楊寛は父に従い、阿那瓌の帰国を護送する任務に就きます。この功績により、行台郎中に任じられました。

524年、破六韓抜陵の部将・衛可孤が懐朔鎮を包囲すると、父の死後、楊寛は城民に推挙され、懐朔鎮を守ります。しかし、懐朔鎮は陥落。楊寛は柔然へ逃亡しますが、後に反乱軍を破り帰国を果たしました。

広陽王・元淵との親交が深く、元淵が罪に問われた際には連座して逮捕されます。526年、長楽王・元子攸の庇護を受け難を逃れ、後に赦免。宗正丞に任じられました。528年、北海王・元顥が葛栄を討伐しようとした際、楊寛に協力を求めますが、元子攸への恩義を理由に断ります。元顥は諦めませんでしたが、李神軌の説得により、招聘を断念しました。同年、元子攸（孝荘帝）が即位すると、楊寛は通直散騎侍郎に任じられ、河南尹丞を兼ね、洛陽県令を代行しました。

529年、邢杲が反乱を起こすと、楊寛は都督として上党王・元天穆に従い、反乱を鎮圧。通直散騎常侍に昇進します。元顥が南朝梁の支援を受け洛陽に入ると、楊寛は元天穆に対し、成皋を奪取し兵を糾合するよう進言。元天穆は楊寛の意見を聞き入れ成皋へ向かいます。太行にて孝荘帝に謁見し、散騎常侍・安東将軍に任じられ、河内の平定に従軍しました。

南朝梁の将軍・陳慶之が元顥のために洛陽の北門を守備すると、楊寛は元天穆の命を受け、陳慶之に降伏を勧告。孝荘帝が洛陽に帰還すると、中軍将軍・太府卿・華州大中正に任じられ、澄城県伯に封じられました。

530年、爾朱栄が殺害されると、爾朱世隆らが洛陽を攻撃。楊寛は使持節・大都督・鎮北将軍に任じられ、これを防ぎます。爾朱世隆との激しい攻防の末、爾朱世隆は北へ逃走。楊寛は河内郡まで追撃しました。その後、爾朱兆が洛陽を攻略し孝荘帝を捕らえると、楊寛は南朝梁へ亡命。武帝の支援を受け帰国します。爾朱仲遠の下に身を寄せ、大行台・吏部尚書に任じられました。

孝武帝の時代には、散騎常侍・驃騎将軍・給事黄門侍郎に任じられ、監内典書事を務めました。夏州の反乱鎮圧後、政争に巻き込まれますが、後に黄門侍郎、武衛将軍を兼任します。534年、孝武帝と高歓の対立が深まると、楊寛は孝武帝のために兵を募り、禁軍を統括。孝武帝に従い関中へ入り、吏部尚書を兼ねました。西魏建国後は、車騎大将軍・太子太傅・儀同三司に任じられます。537年、柔然への使節として郁久閭皇后を迎えました。

帰国後、侍中・都督涇州諸軍事・涇州刺史、驃騎大将軍・開府儀同三司・都督東雍州諸軍事・東雍州刺史などを歴任。544年には河州刺史に転じました。550年、大丞相府司馬を兼任。

551年、南朝梁の南鄭を包囲。楊寛は、南朝梁の援軍を撃破し、数千人を捕斬する功績を挙げました。凱旋後、南豳州刺史に任じられます。廃帝の時代には、尚書左僕射・将作大監に任じられますが、事件により免官。555年、廷尉卿に任じられました。

557年、大将軍に任じられ、559年には賀蘭祥に従い吐谷渾を討伐。宜陽県公に封じられます。小冢宰、御正中大夫を歴任。560年、明帝の命を受け経籍の校定に参与しました。

数々の州刺史を歴任し、清廉で簡明な統治を行ったことで知られました。しかし、柳慶との不仲により、彼を陥れようとしたことは批判されました。561年、都督梁興等十九州諸軍事・梁州刺史に任じられますが、その地で病没。華陝虞上潞五州刺史の位を追贈され、諡は元とされました。

子女

楊文思（字は温才、正平定公）
楊文紀（字は温範、上明恭公）
楊文矩
楊文愻（普安県男）

伝記資料

『周書』巻22 列伝第14
『北史』巻41 列伝第29

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