源信 (公卿)

源信（みなもと の まこと）

源信は、平安時代初期に活躍した公卿で、嵯峨天皇の第一皇子として生まれました。嵯峨源氏の祖であり、初代源氏長者として知られています。

生涯

弘仁5年（814年）に源朝臣姓を賜り臣籍降下しました。その後、順調に昇進を重ね、淳和朝、仁明朝において重要な役職を歴任しました。特に仁明朝では、天皇の外伯父である橘氏公や、嵯峨上皇の信頼が厚かった藤原良房には及ばないものの、着実に昇進を重ねました。承和2年（835年）には正三位、承和9年（842年）には中納言、承和15年（848年）には大納言に任ぜられました。

嘉祥3年（850年）には従二位に昇進。文徳天皇の時代には、次期皇位継承について相談を受けました。当時、藤原良房が後見する惟仁親王（後の清和天皇）が有力候補でしたが、信は、惟仁親王に罪がない限り、他の皇子を擁立すべきではないと主張し、天皇の意向に反する意見を述べました。斉衡4年（857年）には左大臣に昇進し、天安2年（858年）には正二位に至りました。

貞観6年（864年）には、弟の源融らと共謀して反乱を企てているという噂が流れ、世間を騒がせました。この事件を機に、以前から不仲であった伴善男が信を陥れようと画策。翌貞観8年（866年）には応天門の変が発生し、伴善男の誣告によって信は放火の嫌疑をかけられました。朝廷の兵に邸宅を包囲されるという事態に陥りましたが、太政大臣・藤原良房の取りなしにより、辛うじて難を逃れました。しかし、この事件は信に大きな精神的打撃を与え、以後、彼は自宅に引き籠もるようになりました。

貞観10年（868年）に狩猟に出かけた際、落馬し深泥に陥り、意識不明のまま薨去。享年59歳。遺命により薄葬とされました。没後、正一位を贈位されています。

人物

源信は、才知に優れ、洗練された上品な人物であり、人並みならぬ気高さがあったと伝えられています。書物を好み、書道や絵画にも才能を発揮し、特に馬の絵はまるで本物のように見えたとされています。また、嵯峨上皇から楽器の教習を受け、音楽にも造詣が深かったと言われています。鷹狩りを好み、その道も深く究めました。

官歴

弘仁5年（814年）5月8日：臣籍降下（源朝臣）
弘仁6年（815年）6月19日：貫附左京
天長2年（825年）10月20日：従四位上（直叙）
天長3年（826年）正月28日：侍従、7月3日：治部卿
天長5年（828年）正月13日：播磨権守
天長8年（831年）7月11日：参議、治部卿播磨権守如元
天長9年（832年）正月7日：正四位下、11月7日：左兵衛督、去治部卿
天長10年（833年）3月6日：従三位
承和2年（835年）正月7日：正三位、正月11日：兼近江守、4月16日：左近衛中将
承和4年（837年）2月23日：兼左衛門督、近江守如故
承和8年（841年）7月28日：兼武蔵守
承和9年（842年）7月15日：服解（嵯峨上皇服喪）、7月25日：中納言
承和15年（848年）正月10日：大納言
嘉祥3年（850年）4月17日：従二位、11月25日：東宮傅
仁寿4年（854年）8月28日：兼右近衛大将、9月23日：止大将
斉衡4年（857年）2月19日：左大臣
天安2年（858年）11月7日：正二位
貞観2年（860年）10月29日：賜山城国宇治郡地25町
貞観10年（868年）閏12月28日：薨去（左大臣正二位）
貞観11年（869年）3月4日：正一位

系譜

父：嵯峨天皇
母：広井氏または広幡氏、藤井氏


生母不詳の子女

男子：源叶
男子：源平
男子：源恭（初名は謹）
男子：源有
男子：源好
男子：源保 - 若狭守従五位下
男子：源任
男子：源昌
男子：春尋

脚注

注記のないものは『六国史』による。

参考文献

武田祐吉、佐藤謙三訳『読み下し 日本三代実録 上巻』戎光祥出版、2009年
『公卿補任 第一篇』吉川弘文館、1982年
『尊卑分脈 第三篇』吉川弘文館、1987年
『国史大辞典 第13巻』吉川弘文館　国史大辞典編集委員会(編）ISBN 4642005137

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