石川氏 (丹後国)

石川氏：丹後国を舞台に活躍した武家の興亡

石川氏は、丹後国与謝郡を拠点とした武家、国人です。石河氏、丹後石川氏とも呼ばれ、その本姓は河内源氏、または信濃源氏とされています。家紋は飛び鶴で、鎌倉時代から戦国時代にかけて、一色氏の被官として、また丹後国や伊勢国の守護代として活躍しました。

石川氏の歴史

初期の石川氏

正応元年（1288年）の『庄郷保田数帳』には、倉富保と光富保を領有した石川中務の名前が見られます。太田亮の『姓氏家系大辞典』によれば、「赤井系図」に「井上満実-葦田家光十三世孫赤井幸長─貴成（石河弥左衛門尉）」とあるとされますが、太田は「石川氏は赤井氏よりも古かるべし」と指摘しています。また、『大日本史料』天正13年（1585年）閏8月2日条にも、赤井幸家の子に貴成がおり、徳川家康に仕えたことが記されています。萩藩には「石川弥左衛門尉貴成書状」が伝わっており、そこには正保元年（1644年）から慶安3年（1650年）にかけての日付が記されています。

河村昭一は、元弘3年（1333年）5月に番場・蓮華寺で自害した石川九郎道コ（享年50）とその子息・亦次郎通近（享年21）を、丹後石川氏の人物であると推定しています。暦応5年（1342年）4月4日には、石川孫三郎入道覚道の名前が見られます。河村は、覚道が丹後国に所領を持ち、かつ在京を基本とする将軍直属の御家人であったとし、丹後石川氏の祖であると考察しています。覚道の跡を継いだと考えられる人物の中には、丹後石川氏の通称と同じ「（石川）勘解由左衛門尉」を用いる人物がおり、貞治4年（1365年）には上総国守護代として活動しています。また、覚道が育てた上杉朝房・朝宗兄弟は、建武4年（1337年）に丹後国守護に任ぜられた上杉朝定の養子となっています。

室町時代の石川氏

明徳3年（1392年）に一色満範が丹後守護に就任すると、長貞はこれに従いました。また、同年の相国寺供養の際には、満範の弟である範貞に従っています。応永16年（1409年）3月には、石川城に幽閉されていた若狭守護代の小笠原長春とその子・小笠原長頼が切腹しました。その後、長春が務めていた若狭国今富名代官職には、石川佐渡守八郎左衛門尉長貞が就任しました。長貞は、一色範貞から偏諱を賜っています。長禄2年（1458年）7月4日付の史料には、「守護代石河道道悟尊行状」が存在します。石川佐渡入道道悟は、一色義貫、一色教親、一色義春、一色義直の伊勢守護代として活躍しました。

戦国時代の石川氏

応仁の乱では、北伊勢で新守護の土岐政康と、一色家の守護代である石川道悟が戦いました。『応仁記』巻2には一色衆として石川佐渡守、石川九郎が、『応仁略記』には一色の騎馬衆として石川某が、『応仁別記』には一色氏被官の石川佐渡守道悟とその子・蔵人親貞の名前が確認できます。文明12年（1480年）4月には、一色義春が伊勢守護に復帰し、守護代として石河直清が入国しています。明応7年（1498年）5月28日には、丹後の善王寺で石河中務亟が割腹しました。これは、伊賀次郎左衛門らに反乱を起こされていた一色義秀に協力していたためと考えられます。永正3年（1506年）5月25日には、細川澄之、細川澄元、細川政賢、赤沢朝経、三好之長、香西元長、武田元信らが丹後国の一色義有討伐に赴き、石川勘解由左衛門尉直経が籠る加悦城（安良山城）を攻めました。しかし、澄之と元長は直経と内通し、同月28日に落城を装って兵を退きました。永正4年（1507年）6月23日の永正の錯乱当時、赤沢朝経が細川政元の命令を受けて一色義有を攻めていましたが、その最中に政元が暗殺されたことを知ると、軍を京都に撤退させようとしました。しかし、一色義有や石川直経ら丹後の国人は反撃し、6月26日または7月4日に丹後九世戸の文殊堂で朝経を自刃に追い込みました。

永正9年（1512年）に26歳で一色義有が病死すると、次期当主の座を巡って、一色義清・石川直経と一色九郎・延永春信との間で家督争いが発生しました。春信が直経に勝利し、直経を加悦の安良山城から加佐郡まで追い落としましたが、永正13年（1516年）には、丹後国は与謝郡加悦城主の直経、与謝郡宮津城主の小倉播磨守、熊野郡久美浜城主の伊賀右京亮の3人が分割統治することになりました。翌年5月には、春信勢が若狭国大飯郡和田まで進撃し、高浜城主の逸見河内守国清が武田元信を裏切り春信に寝返りました。これに対し、管領・細川高国は幕府に御教書を出させ、直経や義清、近江国の朽木稙綱、越前国の朝倉孝景による幕府軍が編成され、春信を敗走させています。

16世紀前半（天文7年（1538年）か）に成立した『丹後国御檀家帳』によれば、加悦城に国奉行の石川殿、五ヶ御城に石川殿の子・石川小太郎、嶋高尾城に石川中務丞が居城していたとされています。丹波国何鹿郡館城は、永禄年間（1558年 - 1570年）に石川備後守（後の繁か）が居城していましたが、慶長5年（1600年）には関ヶ原の戦いに関連して西軍方についた福知山城主の小野木重勝によって燃やされました。

天正4年（1576年）のものと思われる5月19日付吉川元春宛「石河繁書状」から、光秀敗北後の丹波の様子がわかります。石河弥七郎繁は丹波国何鹿郡栗村荘の館城主ですが、繁は毛利氏が足利義昭を奉じて出陣することを聞きつけ、赤井直正や赤井幸家と相談して忠節を尽くす気持ちを述べており、丹波の国人はその考えで一致していると言っています。また、繁は直正を通じて吉川元春に取り入っています。

天正10年（1582年）には、与謝郡の亀山城には石川悪四郎（浄雲斎？）、嶋村城には石川尾張、江田城には石川玄蕃助が居城していましたが、細川藤孝によって追放されました。また、瀧城には石川直経の末裔の石川弥三左衛門尉秀門（石川秀廉の子か）が居城していましたが、同年9月8日に田辺城で討ち死にし、嫡男の文吾秀澄は一色義俊を守り弓木山で同年9月28日に討ち死に、次男の五郎左衛門は千鳥の香炉を盗んだとされています。

石川氏の終焉

戦国時代末期には、石川氏は細川氏などの勢力に押され、その勢力を失っていきました。しかし、石川氏の歴史は、丹後国の歴史を語る上で欠かせない重要な要素です。

注釈

石川氏の系譜については、諸説あり、確定的なものではありません。
各人物の活動時期や関係性についても、史料が不足しているため、不明な点が多くあります。

出典

『庄郷保田数帳』
太田亮『姓氏家系大辞典』
『大日本史料』
『応仁記』
『応仁略記』
『応仁別記』
『丹後国御檀家帳』
吉川元春宛「石河繁書状」

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