紀元二千六百年

紀元二千六百年（きげんにせんろっぴゃくねん）

『紀元二千六百年』は1940年、すなわち昭和15年に日本で制作された国民歌で、神武天皇の即位紀元2600年を祝した作品です。この歌はラジオを通じて広く知られるようになり、様々な替え歌でも有名です。正式に発売されたのは同年2月で、実は前年の12月20日頃から市場に流通していました。

制作の経緯

この国民歌は、1939年8月に内閣奉祝会と日本放送協会（現在のNHK）が主催し、全国から「奉祝歌」を募集する企画の一環として生まれました。応募総数は約1万8000件に上り、その中から増田好生が作詞した歌が一等に選ばれました。また、作曲は当時東京・杉並区に住んでいた音楽教諭の森義八郎によるものが採用されました。この歌は、東京音楽学校に嘱託された「紀元二千六百年頌歌」（作曲：信時潔）とは異なる曲で、「奉祝国民歌」として認知されています。

レコードは複数のレコード会社から競作として製作され、特別なデザインのレーベルが使用されました。江口夜詩や斉藤丑松の手による行進曲版のアレンジも存在します。

吹き込み歌手

この国民歌には多くの著名な歌手が録音をしました。

• - コロムビアレコード: 松平晃、伊藤久男、藤山一郎、霧島昇、松原操、二葉あき子、渡辺はま子、香取みほ子、高橋祐子
• - ビクターレコード: 徳山璉、波岡惣一郎、四家文子、中村淑子
• - キングレコード: 永田絃次郎、長門美保、キング児童合唱団
• - テイチクレコード: 桜井健二、鬼俊英、服部富子、中村柾子
• - ポリドールレコード: 奥田良三、関種子、上原敏、小林千代子、東海林太郎
• - タイヘイレコード: 立花ひろし、有島通男、三原純子

替え歌

日中戦争（支那事変）が長期化する中、国家の専売物資として戦費調達のために行われたタバコの値上げに関連して、「金鵄あがって十五銭、栄えある光三十銭、朝日は昇って四十五銭」といった内容の替え歌が作られました。この替え歌は当初の国民歌よりも後に多くの人に知られるようになりました。

後日談

作曲者の森は、その後音楽家としても活動を続け、井の頭音頭やいくつかの小学校の校歌などを手がけました。酒癖が良くなかったとも言われていますが、特に物議を醸したのは、作曲後に飲み屋での酩酊中に「此の曲は大塚の花街で遊女を抱いた時の腰のリズムを使って作曲した」と発言したことです。

参考文献

• - 長田暁二『日本軍歌大全集』全音楽譜出版社、2002年。

このように『紀元二千六百年』は日本の音楽史における重要な作品であり、国民の心に深く根付いた歌として広く認識されています。

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