続大奥(秘)物語

映画『続大奥㊙物語』について

『続大奥㊙物語』は、1967年に公開された時代劇映画で、東映京都撮影所が製作、東映が配給を手がけました。監督は中島貞夫、主演は小川知子が務めました。この作品は、同年公開され大ヒットした『大奥㊙物語』の続編として製作されました。前作の主演を務める予定だった佐久間良子が降板したため、前作でレズビアンの腰元役を演じ注目を集めた小川知子が、急遽主演に抜擢されました。

あらすじ

物語の舞台は、江戸城大奥。将軍の寵愛を巡る女たちのエゴイズムと哀歌が描かれています。前作はオムニバス形式でしたが、本作では一つの物語に焦点を当てています。時代設定は、江戸幕府第10代将軍・徳川家治と第11代将軍・徳川家斉の時代です。

タイトル表記について

本作のタイトル表記には、『続・大奥㊙物語』と『続大奥㊙物語』の2種類が存在します。公開当時の映画雑誌や週刊誌の記事でも表記が混在していました。現在でも、DVDのタイトル表記や映画データベースなどで表記が統一されていません。

キャスト

おちさ：小川知子
おこと：緑魔子
おしの：桜町弘子
おふで：万里昌代
おりつ：三島ゆり子
おきよ：桑原幸子
あや：悠木千帆
お民：木暮実千代
藤岡：宮城千賀子
おせん：国友和歌子
水野出羽守：堀正夫
了賢：藤岡重慶
松戸：川谷拓三
御典医：中村錦司
順観：沢淑子
比丘尼：岡田千代
寛永寺大僧正：市川男女之助
寛永寺の僧：佐々木松之丞
藤岡の部屋子：司みのり
阿部主水正：小沢栄太郎
家治：三島雅夫
遠藤弥左衛門：新田昌玄
板倉源三郎：西村晃
英法尼：東山千栄子
ナレーター：東野英治郎

スタッフ

監督：中島貞夫
脚本：国弘威雄、中島丈博
企画：岡田茂、翁長孝雄、三村敬三
撮影：赤塚滋
音楽：池野成
美術：鈴木孝俊
編集：神田忠男
録音：溝口正義
照明：和多田弘

製作の背景

本作は、東映京都撮影所の所長であった岡田茂が、任侠路線と並ぶ二大路線として企画した「エロティシズム＝性愛路線」の作品です。前作『大奥㊙物語』のヒットを受け、「㊙シリーズ」の第二弾として製作されました。

脚本は、国弘威雄と中島丈博が担当しました。中島にとって、国弘は師である橋本忍を紹介してくれた恩人であり、本作の脚本は、二人が東映太秦寮に缶詰になり執筆されました。

キャスティングの舞台裏

撮影は、1967年9月下旬にクランクインし、約1ヶ月の予定で行われました。当初、主演は佐久間良子が予定されていましたが、タイトルやプロモーションにおける「エロ」の強調に反発し降板しました。監督の中島貞夫が佐久間を説得を試みましたが、交渉は不調に終わりました。

その後、藤純子、新珠三千代、池内淳子、岡田茉莉子、久保菜穂子らにオファーしましたが、スケジュール等の理由で断られ、前作で話題になった小川知子が急遽主演に抜擢されました。小川は当時18歳で、本作が初主演映画となりました。監督の中島は、前作で小川に惚れ込んだとも言われています。

また、前作で山田五十鈴が演じた役どころには、中島監督が学生時代から面識のあった東山千栄子を希望しました。中島が東山を直接説得し、出演が実現しました。

おしの役の瑳峨三智子は、体調不良を訴え降板。代役として、桜町弘子が起用されました。桜町はもともと、おふで役で出演していましたが、大役へのスライドとなりました。

撮影について

物語は、江戸城のシーンは冒頭のみで、以降は尼寺に幽閉された中﨟たちの悲劇を描く密室劇が中心となっています。この手法は、後の日活ロマンポルノの大奥モノに影響を与えたと言われています。

小川知子、緑魔子、桜町弘子、宮城千賀子は、男勝りの酒豪として知られており、劇中の酒盛りシーンでは、実際に酒を飲んで演技をしたと言われています。小川は、ベッドシーンでは冴えない演技を見せたものの、万里昌代とのレズシーンでは水を得た魚のように生き生きとした演技を見せたと言われています。

作品の影響

本作の興行成績は振るいませんでしたが、小川知子の艶技は高く評価されました。岡田茂は、本作の後も「㊙シリーズ」を企画しましたが、小川が「裸が足りない」と怒鳴られたことに反発し、出演を拒否しました。

小川はその後、歌手として再出発し、「ゆうべの秘密」が大ヒットしました。この騒動は、当時の映画産業の力の衰退と、女優が自分の意見を主張できるようになったことを象徴する出来事として捉えられています。

小川が降板した『尼寺㊙物語』では、藤純子が主演を務めました。その後、岡田はピンク映画に力を入れ、石井輝男監督による『徳川女系図』が制作され、異常性愛路線が展開されることとなりました。

参考文献

小川知子『美しく燃えて』学習研究社、1992年。ISBN 4054000193。
松島利行『風雲映画城』 下、講談社、1992年。ISBN 4062062267。
永田哲朗『殺陣 チャンバラ映画史』社会思想社〈現代教養文庫1471〉、1993年。ISBN 4390114719。
渡邊達人『私の東映30年』1991年。
『悪趣味邦画劇場〈映画秘宝Vol.2〉』洋泉社、1995年。ISBN 9784896911701。
俊藤浩滋、山根貞男『任侠映画伝』講談社、1999年。ISBN 4062095947。
岡田茂『悔いなきわが映画人生 東映と、共に歩んだ50年』財界研究所、2001年。ISBN 4879320161。
杉作J太郎、植地毅『東映ピンキー・バイオレンス浪漫アルバム』徳間書店、1999年。ISBN 4198610169。
阿部嘉昭『日本映画が存在する』青土社、2000年。ISBN 479175865X。
『Hotwax 日本の映画とロックと歌謡曲 vol. 8』シンコーミュージック・エンタテイメント、2007年。ISBN 9784401751167。
佐藤忠男 編『日本の映画人 日本映画の創造者たち』日外アソシエーツ、2007年。ISBN 9784816920356。
「東映『大奥』シリーズ 文・藤木TDC」『映画秘宝』2007年8月号、洋泉社。
文化通信社 編『映画界のドン 岡田茂の活動屋人生』ヤマハミュージックメディア、2012年。ISBN 9784636885194。
春日太一『仁義なき日本沈没 東宝VS.東映の戦後サバイバル』新潮社〈新潮新書〉、2012年。ISBN 9784106104596。
春日太一『あかんやつら 東映京都撮影所血風録』文藝春秋、2013年。ISBN 4163768106。
二階堂卓也『ピンク映画史』彩流社、2014年。ISBN 9784779120299。
中島貞夫『遊撃の美学 映画監督中島貞夫 (上)』ワイズ出版〈ワイズ出版映画文庫(9)〉、2015年。ISBN 9784898302835。
東映株式会社総務部社史編纂 編『東映の軌跡』東映株式会社、2016年。

関連項目

雪夫人絵図

外部リンク

続大奥㊙物語 - KINENOTE
続大奥㊙物語 - allcinema
続大奥㊙物語 - IMDb（英語）

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