胃腸薬

胃腸薬とは

胃腸薬は、胃や腸の疾患の治療、または症状の緩和に用いられる医薬品の総称です。一般的には「胃薬」と呼ばれることが多いです。

胃腸薬の種類と効果

胃腸薬は、その薬効によって大きく以下の2つに分類できます。

1. 胃腸活動抑制型：胃酸の過剰分泌を抑えたり、胃腸の過度な働きを抑制する。
2. 胃腸活動促進型：胃酸の分泌を促進したり、胃腸の働きを活発にする。

症状に合わない薬を選ぶと、効果がないだけでなく症状を悪化させる可能性があるので注意が必要です。また、これらの成分を複数配合した胃腸薬も市販されています。瀉下薬や止瀉薬も広義の胃腸薬に含まれます。

胃腸活動抑制型

胃酸過多や消化性潰瘍などに有効です。主な成分として、制酸薬やヒスタミンH2受容体拮抗薬（H2ブロッカー）などがあります。

制酸薬：胃のpHを上昇させ、増えすぎた胃酸を中和します。水酸化アルミニウムや炭酸カルシウムなどのアルカリ性の化合物が配合されています。
胃酸分泌受容体拮抗剤
プロトンポンプ阻害薬
H2ブロッカー：ヒスタミンH2受容体に拮抗し、胃酸の分泌を抑制します。シメチジンやファモチジンなどが配合されています。
ムスカリン受容体拮抗薬：ムスカリン受容体に拮抗し、胃酸の分泌を抑制します。ピレンゼピンなどが配合されています。
胃粘膜保護成分：荒れた胃粘膜を覆って保護し、修復を補助します。スクラルファートやグリチルリチン酸二カリウム、銅クロロフィリンナトリウム、アズレンスルホン酸ナトリウムなどがあります。
鎮痛鎮痙薬：抗コリン薬として臭化水素酸スコポラミンやロートエキス、局所麻酔薬としてアミノ安息香酸エチル、平滑筋弛緩薬として塩酸パパベリンなどが処方されます。
消泡剤：消化管内部のガスを取り除き腹部の張りを抑えるため、ジメチルポリシロキサンが胃腸活動抑制型・促進型を問わず配合されることがあります。

胃腸活動促進型

消化管機能改善薬として、胃の運動を促す薬（モサプリド、トリメブチンなど）があります。

健胃薬：唾液分泌を促したり胃の働きをうながす香りや苦みのある生薬が配合された薬です。食欲不振や消化不良に使われます。アロエ、ウコン、ケイヒ、陳皮など生薬が主体で、乾燥酵母などが配合されることもあります。
健胃消化剤：消化酵素も配合されているためそう呼ばれます。伝統的には百草丸、S・M散などが用いられます。S・M散は、処方医薬品の健胃消化薬で、消化薬、制酸薬、生薬が配合されています。トリメブチンが配合されたものもあります。
消化薬：ジアスターゼやリパーゼなどの消化酵素、ウルソデオキシコール酸やデヒドロコール酸などの胆汁成分が配合されています。
整腸剤：乳酸菌や酪酸菌、納豆菌などが配合されています。

その他

胃粘膜微小循環改善薬：代表的なものにスルピリドがあります。主に精神・情動安定剤として使用されますが、元々は神経性の胃炎や食道炎、十二指腸潰瘍など胃腸疾患の薬として開発されました。そのため、現在も胃腸薬として処方されることがあります。離脱症状として食欲不振や吐き気、焦燥感や抑うつ感などが見られることがあるため、用法・用量を守ることが重要です。

胃腸薬を選ぶ際の注意点

胃腸薬を選ぶ際には、自身の症状をよく理解し、薬剤師や登録販売者と相談することが大切です。また、服用する際には用法・用量を守り、副作用が現れた場合は使用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。

参考情報

齋藤洋; 福室憲治; 武政文彦著『一般用医薬品学概説（第2版）』じほう、2006年。ISBN 9784840735940。

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