藤原兼光

藤原兼光（ふじわらのかねみつ）は、平安時代後期から鎌倉時代初期にかけて活躍した公卿であり、歌人としても知られています。藤原北家真夏流日野家の一員として生まれ、父は権中納言・藤原資長、母は源季兼の娘です。官位は従二位・権中納言にまで昇り、「姉小路」と号しました。日野家13代当主としてもその名を知られています。

兼光は、その卓越した実務能力により、摂関家の家司、後白河院の院司、そして高倉天皇と後鳥羽天皇という二代の天皇の侍読を歴任しました。弁官や蔵人頭といった要職を務め、参議を経て権中納言にまで昇進しました。政治的な手腕も高く、当初は近衛家に仕えていましたが、九条兼実が政権を握ると九条家にも接近し、その才能を高く評価されました。建久2年から5年の間には、検非違使別当も務めています。また、後白河法皇の寵妃であった丹後局の婿という立場を利用し、源頼朝が推した議奏公卿にも名を連ねるなど、複雑な政界を巧みに泳ぎました。これらの活躍により、日野家の地位を確固たるものとしたのです。

経歴

保元元年（1156年）には、勧学院の学問料が支給された記録があり、大学寮で紀伝道を学んでいたことがわかります。2年後には文章得業生となり、永暦元年（1160年）には対策に及第し、従五位下・修理亮兼右近衛少尉に任じられました。その後、応保3年（1163年）には治部少輔に任じられ、翌年には昇殿を許されました。仁安元年（1166年）には治部少輔のまま従五位上・東宮学士に叙任されています。翌年には正五位下に昇進し、仁安3年（1168年）には蔵人兼備中権介に転任し、東宮学士を辞任しました。

嘉応元年（1170年）に右少弁に任じられると、以降は弁官として昇進を重ね、承安2年（1172年）には左少弁、治承3年（1179年）には右中弁に勧学院弁別当を兼ね、さらに造東大寺長官を兼ねて従四位下に昇叙しました。養和元年（1181年）には左中弁に進み、造興福寺長官となります。寿永元年（1182年）には正四位下に昇り、翌年には安徳天皇の蔵人頭に任命されましたが、安徳天皇の西下には従わず、後鳥羽天皇の蔵人頭を続けて務め、その後、参議兼右大弁として公卿に列しました。

元暦元年（1184年）には、従三位・左大弁に叙任され、近江権守を兼ねました。院近臣であった四条隆房よりも先に公卿に列したことから、義母である丹後局の支援があったとされています。文治元年（1185年）には勘解由長官、翌年には権中納言に任じられました。建久元年（1190年）には右兵衛督を、建久2年（1191年）には検非違使別当を兼務し、建久4年（1193年）には右衛門督に転じ、京都の治安回復に尽力しました。建久5年（1194年）には右衛門督・検非違使別当を辞任し、翌年には従二位に叙されました。

建久7年（1196年）に腫物の病のため、4月12日に出家し法名を玄寂としましたが、間もなくこの世を去りました。

人物

兼光は、高倉天皇と後鳥羽天皇の侍読を務めただけでなく、歌人としても才能を発揮し、『千載和歌集』、『新古今和歌集』、『新勅撰和歌集』の三つの勅撰和歌集に計3首の和歌が採録されています。また、日記『姉言記』（『兼光卿記』）も残されており、当時の様子を知る上で貴重な資料となっています。学識に優れ、実務にも長けた官人として、平氏政権と後白河院政の両方で重用されました。

系譜

父：藤原資長
母：源季兼の娘
妻：藤原実教の娘
妻：源家時の娘
長男：日野資実（1162-1223） - 日野家の祖
男子：藤原長親（禅寂）
妻：院尚の娘
五男：広橋頼資（1182-1236） - 広橋家の祖
妻：平業房の娘
男子：藤原宣実
生母不詳の子女
男子：藤原有兼
男子：藤原基長
男子：良兼（?-1227）
男子：覚証
女子：後鳥羽院按察使典侍
女子：宣陽門院左衛門督
女子：姉小路公宣室
女子：葉室宗行室
女子：葉室長宗室
女子：源信定室
女子：一条高能室

このように、藤原兼光は、政治、文化、そして家系において、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて重要な役割を果たした人物でした。

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