衛臻

衛臻（えい しん）

衛臻（生没年不詳）は、後漢末期から三国時代の魏にかけて活躍した政治家であり、字は公振といいました。兗州陳留郡襄邑県（現在の河南省睢県）の出身です。父は衛茲、子は衛烈、衛京、衛楷、孫は衛権です。その事績は『三国志』魏志に記録されています。

生涯

衛臻の父である衛茲は、曹操が董卓討伐のために義兵を挙げた際に協力しましたが、曹操が徐栄に敗れた戦いで戦死しました。

夏侯惇が陳留太守であった頃、衛臻は計吏として登用されました。ある時、夏侯惇が衛臻の妻を酒宴に呼び寄せようとした際、衛臻はそれを道徳に反する行為として拒否しました。このことで夏侯惇は怒り、衛臻を拘束しましたが、後に赦免しました。

後漢朝廷に仕えた衛臻は、黄門侍郎となりました。東郡で朱越が反乱を起こし、衛臻に協力を求めましたが、曹操は亡き衛茲の忠節を重んじていたため、衛臻を信用しました。荀彧からも同様の報告があったため、曹操の衛臻に対する信頼はさらに強まりました。

後に衛臻は勅命を受け、貴人を迎えるために曹操政権を訪問しました。曹操はこれを機に衛臻を自身の配下に留め、丞相府に所属させ、軍事に参画させました。亡き衛茲の功績を改めて評価し、衛臻に関内侯を与えました。その後、戸曹掾に任じられました。

曹植が曹操から寵愛を受けていた頃、丁儀が衛臻に曹植と結託するように求めましたが、衛臻はこれに応じませんでした。

曹丕が王位に就くと、衛臻は散騎常侍に任じられ、曹丕が皇帝（文帝）となると、安国亭侯に封じられました。曹操の時代からの群臣たちが魏を称える一方で、後漢を貶す中、衛臻は禅譲の徳義を理由に後漢の徳を称えました。曹丕は衛臻を高く評価し、山陽公と同等の待遇にすべきであるとし、尚書に昇進させ、侍中・吏部尚書に転任させました。

曹丕が広陵へ遠征した際には、中領軍代行として随行しました。曹休が呉の降伏者から得た孫権の動静情報について、「それは偽りではないか」と意見しました。後に衛臻の意見が正しかったことが判明しました。

時が経ち、曹丕は曹霖を寵愛するようになりました。ある時、曹丕は衛臻に対し、平原侯となっていた曹植について尋ねました。衛臻は曹植の徳を称えましたが、曹霖については決して言及しませんでした。

曹叡（明帝）の時代には、康郷侯に爵位が上がりました。尚書僕射に移り、官吏の登用を担当し、侍中の官位も再び加えられました。蔣済と人事について意見を交わした記録が残っています。

蜀漢が諸葛亮を先頭に天水に侵攻（北伐）してくると、衛臻は兵を派遣して糧道を断つように進言しました。さらに征蜀将軍・仮節都督涼州諸軍事に任命され、長安に向かいましたが、長安に到着する頃には蜀軍が撤退していたため、そのまま帰還しました。帰還後、元の職に復帰し、光禄大夫に任じられました。

曹叡が宮殿造営に熱中するようになると、衛臻は厳しく諫めました。また、殿中監が勝手に蘭台令史を逮捕した事件では、殿中監を厳しく追及し、曹叡の干渉にも毅然と反論しました。

再び蜀漢が斜谷に侵攻し、また征南将軍から呉の朱然が荊城を通過し攻め寄せてきているという情報が入りました。衛臻は朱然の動きは陽動であり、最終的には孫権の合肥攻撃に合流すると予測しました。果たして孫権は朱然を居巣に呼び寄せ、合肥を攻撃しました。この時、曹叡は自ら合肥の援軍に出向こうとしました。

衛臻は、孫権の侵攻は諸葛亮に同調する姿勢を見せているだけで、実際には形勢を傍観していること、また合肥は堅城であることを理由に、親征せずに軍隊の費用を節約すべきだと述べました。曹叡が尋陽まで赴いたところで、孫権は撤退しました。

後に毌丘倹が遼東の公孫淵を征伐することの許可を求めてきた際、衛臻は毌丘倹の計画が無謀であるとして反対しました。しかし、毌丘倹は兵を動かすことを許されましたが、やはり上手くいきませんでした（遼隧の戦い）。

高齢となった衛臻は司空に昇進し、さらに司徒となりました。正始年間には長垣侯に封じられました。千戸の領邑を有し、一子も列侯されました。ある時、曹爽は夏侯玄を使いに送り、衛臻に尚書令を兼務させたいと伝えさせ、また、弟に娘を嫁がせたいとも申し入れましたが、いずれも拒絶されました。

衛臻は死後、太尉の官を追贈され、敬侯と諡されました。

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