高橋武智

高橋武智



高橋武智(たかはし たけとも、1935年2月19日 - 2020年6月22日)は、日本の仏文学者、翻訳家であり、日本戦没学生記念会(わだつみ会)の理事長を務めた人物です。

生涯



1935年東京に生まれた高橋武智は、1953年に麻布高校を卒業後、東京大学仏文科に進学。1957年に卒業後、同大学大学院18世紀仏文学・思想を専攻しました。1963年からは立教大学で講師(後に助教授)として教鞭を執り、1965年から1967年までフランス政府給費留学生としてパリ大学に留学しました。

ベトナム戦争の時代には、ベ平連の別組織であるジャテックに所属し、反戦活動に身を投じました。立教大学の教員を辞職し、専従活動家として活動。アメリカ軍のスパイが組織に侵入し、ソ連ルートが断たれた後、脱走米兵を秘密裏に国外へ脱出させる新たな方法を模索するため、ヨーロッパに渡り、支援者や協力者を探す活動に従事しました。

パスポートの偽造などの非合法な手段を用いて、数名の脱走米兵をヨーロッパへ出国させることに成功しましたが、ベ平連やジャテックの方針が変わり、「脱走兵をアメリカ軍に帰還させ、軍隊内で精神疾患などの医療的認定を受けさせ、前線からの配置転換や除隊を求める」という戦術に転換したため、その後は非合法な密出国は行われなくなりました。

1970年頃からは、パレスチナ解放人民戦線との間にネットワークを築き、在欧日本人らによる反米平和活動グループに参加。同グループは1971年の昭和天皇訪欧抗議運動に参加し、天皇の車列に糞尿入りのコンドームを投げつけるという過激な行動を起こしました。パレスチナ解放人民戦線を介して重信房子と接触し、1974年頃からは日本赤軍ヨーロッパでの工作活動(翻訳作戦)に関与しましたが、パリ・オルリー空港で偽造旅券と偽ドルを所持していた山田義昭がフランス警察に逮捕されたことで、西ドイツデュッセルドルフの日本総合商社支店長の誘拐計画が発覚し、フランスから強制送還されました。

1975年以降は、代々木ゼミナールフランス語講師などを経て、翻訳家として活動。1998年からはスロヴェニア・リュブリャナ大学文学部の講師も務めました。2020年6月22日、低ナトリウム血症のため死去しました。

著書



『私たちは、脱走アメリカ兵を越境させた…… - ベ平連/ジャテック、最後の密出国作戦の回想』作品社、2007年
『日本思想におけるユートピア』くろしお出版、2014年
『群論 - ゆきゆきて、神軍松田政男共編、倒語社、1988年
『ベ平連と市民運動の現在 - 吉川勇一が遺したもの』高草木光一編、吉岡忍・山口幸夫共著、花伝社、2016年
『天皇制と共和制の狭間で』小沢信男、日野百草、山本健治藤田真利子重信房子天野恵一、松田ひろむ、鹿島正裕他、第三書館、2018年

訳書



エレーヌ・カレール・ダンコース『崩壊した帝国 - ソ連における諸民族の反乱』新評論、1981年、改題増補新版『崩壊したソ連帝国 - 諸民族の反乱』藤原書店、1990年
アンドレ・ゴルツ『エコロジスト宣言』緑風出版、1983年
シャルル・ベトレーム『ソ連の階級闘争 1917-23』第三書館、1987年
ベルナール・レーヌ『祟りの村 文明〈災害〉とたたかったコロンビア・グアリノ族の冒険』筑摩書房、1987年
アパルトヘイト否 (ノン)!- 国際美術展』(展覧会カタログ)前田礼・太田昌国・鵜飼哲共訳、現代企画室、1988年
イグナシ・デ・ソラ=モラレス『アントニオ・ガウディ』美術出版社、1988年
クロード・ランズマンSHOAH ショア作品社、1995年
ロニー・ブローマン『人道援助、そのジレンマ -「国境なき医師団」の経験から』産業図書、2000年
ジャン=フランソワ・フォルジュ『21世紀の子どもたちに、アウシュヴィッツをいかに教えるか?』作品社、2000年
アンジェロ・デル・ボカ『ムッソリーニの毒ガス - 植民地戦争におけるイタリアの化学戦』大月書店、2000年
フランソワ=グザヴィエ・ヴェルシャヴ『フランサフリック - アフリカを食いものにするフランス緑風出版、2003年
ステファヌ・クルトワ、ジャン=ルイ・マルゴランほか『共産主義黒書 - 犯罪・テロル・抑圧〈コミンテルン・アジア篇〉』恵雅堂出版、2006年、『共産主義黒書〈アジア篇〉』筑摩書房、2017年
シュロモー・ザンドユダヤ人の起源 - 歴史はどのように創作されたのか』浩気社、2010年、筑摩書房、2017年
クロード・ランズマン『パタゴニアの野兎 - ランズマン回想録』(下巻)人文書院、2016年

関連項目



ベトナムに平和を!市民連合
脱走
良心的兵役拒否

外部リンク



「私たちは、脱走アメリカ兵を越境させた」(「田口裕史のウェブサイト」内)
『SHOAH』DVDについて高橋武智さんがアピール (吉川勇一のサイト内)

もう一度検索

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。