2002年の鉄道

2002年の鉄道

2002年（平成14年）は、日本の鉄道にとって様々な動きが見られた一年でした。新幹線網の拡大や新しい鉄道路線の誕生、そして都市部での利便性を高めるICカード乗車券の利用エリア拡大などが進められた一方で、役目を終える路線の廃止や、安全運行上の課題を突きつける事故の発生も相次ぎました。

主な出来事

新線開業・延伸

年の瀬である12月1日には、東北新幹線がこれまでの終点だった盛岡駅から青森県の八戸駅まで、約96.6キロメートル延伸開業し、東北地方北部の主要都市間を結ぶ新たな大動脈が誕生しました。これに伴い、並行する東北本線の一部区間（盛岡～目時、目時～八戸）は、それぞれIGRいわて銀河鉄道といわて森鉄道へと経営が移管され、第三セクター鉄道として地域輸送を担うこととなりました。高知県では、7月1日に土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線（後免～奈半利間 42.7キロメートル）が開業し、地域の活性化に期待が寄せられました。首都圏では、東京臨海高速鉄道りんかい線が12月1日に天王洲アイル駅から大崎駅まで延伸し、JR埼京線との相互直通運転が開始され、都心と臨海部を結ぶネットワークが強化されました。また、10月27日には京成電鉄東成田駅から芝山千代田駅までの芝山鉄道線（2.2キロメートル）が開業し、京成線や都営浅草線、京浜急行線との相互直通運転も始まりました。国外では、ドイツで8月1日にケルン-ライン＝マイン高速線が開業、韓国では京仁線の一部複々線化（3月15日）、京義線の延伸（4月11日）、大邱地下鉄1号線の延伸（5月10日）が行われています。

路線網の動き

路線の廃止も複数ありました。4月1日には長野電鉄河東線の一部（木島線 信州中野～木島間 11.3キロメートル）が、5月26日には南海電気鉄道和歌山港線の一部（和歌山港～水軒間 2.6キロメートル）が廃止されました。休止が続いていた南部縦貫鉄道線（野辺地～七戸間 20.9キロメートル）も8月1日に正式に廃止となりました。前年の事故運休から復旧が進まなかった京福電気鉄道永平寺線（東古市～永平寺間 6.2キロメートル）も10月1日に廃止されています。一方で、地域輸送を担ってきた加越能鉄道の高岡軌道線と新湊港線は、4月1日に万葉線として新たな運営体制で引き継がれました。また、北神急行電鉄は4月1日より運行を継続しつつ、運営形態を第一種鉄道事業者から第二種鉄道事業者へと変更しています。新駅は全国各地で開業し、利便性向上が図られました（例: 上信電鉄高崎商科大学前駅、JR西日本新広駅、JR九州大分大学前駅、東武つきのわ駅など）。都営大江戸線の汐留信号所が11月2日に常設駅化され、隣接してゆりかもめにも同日汐留駅が開業しています。

サービスの向上と変化

ICカード乗車券の利用エリアが拡大したことも特筆されます。JR東日本のSuicaは、青梅線や八高線の一部区間（2月8日）、鶴見線、南武線南武支線（3月22日）、相模線厚木駅（8月1日）、常磐線綾瀬駅、南武線八丁堀駅（12月10日）と着実にエリアを広げました。東京モノレールでは4月21日にモノレールSuicaが導入され、同日Suicaとの相互利用も開始。りんかい線でも12月1日にりんかいSuicaが導入され、こちらもSuicaとの相互利用が可能となり、首都圏でのシームレスな移動が一層進みました。駅設備の面では、帝都高速度交通営団千代田線北綾瀬支線（2月15日）や東京モノレール（8月20日）でホームドアが使用開始され、安全対策が強化されました。列車運行面では、JR東日本常磐線いわき～原ノ町間（2月1日）やJR九州各線（3月23日）、近鉄南大阪線古市～橿原神宮前間（3月20日）、JR西日本紀勢本線紀伊田辺～御坊間（11月2日）、京阪京津線御陵～浜大津間（11月30日）などでワンマン運転が開始・拡大し、効率化が進められました。

企業と法制度

6月21日には、東日本旅客鉄道が完全民営化を達成しました。また、今後の帝都高速度交通営団民営化を見据え、12月18日には東京地下鉄株式会社法が公布・施行されています。

鉄道車両の動向

新しい車両も多数登場し、営業運転を開始しました。JR北海道の特急用789系、JR東日本の試験車両E993系「ACトレイン」や事業用E491系「East i-E」、JR西日本の近郊型125系、JR貨物の交直流電気機関車EF510形などが開発・導入されました。私鉄でも東京急行電鉄5000系（2代）、京浜急行電鉄新1000形、相模鉄道10000系、京阪電気鉄道10000系、近畿日本鉄道21020系など、次世代を担う車両が営業運転を開始しています。路面電車でも低床車両の導入が進み、伊予鉄道モハ2100形、土佐電気鉄道100形（3代）、岡山電気軌道9200形などが登場しました。一方で、東急から十和田観光電鉄への車両譲渡や、伊豆急行100・1000系、近鉄900系、三木鉄道ミキ180形など、役目を終えて消滅した形式も見られました。この年デビューしたJR東日本E257系電車が鉄道友の会ブルーリボン賞を、JR西日本187系気動車が同ローレル賞を受賞しています。

事故・災害・事件

2002年の鉄道界で特に憂慮すべき点として、踏切事故の多さが挙げられます。自動車の踏切内への進入や一時停止無視による列車との衝突事故が、名古屋鉄道（羽島線1月3日、名古屋本線9月26日）、九州旅客鉄道（鹿児島本線1月13日、佐世保線8月13日、久大本線9月7日）、東日本旅客鉄道弥彦線（7月11日）、近畿日本鉄道大阪線（8月12日）、小田急電鉄小田原線（9月1日）、山陽電気鉄道本線（10月29日）など全国各地で発生し、列車脱線や死傷者が出る深刻な事態となりました。その他の主な事故としては、九州旅客鉄道鹿児島本線での追突事故（2月22日）、寝台特急「サンライズ出雲」の車両火災（5月16日）、京成電鉄高砂検車区での構内脱線（6月10日）、真岡鐵道久下田駅構内での救援列車の脱線（8月1日）、福島臨海鉄道本線小名浜駅構内での貨物列車の脱線（10月10日）などが発生しました。また、南海電気鉄道高野線（3月28日～）やわたらせ渓谷鐵道わたらせ渓谷線（5月17日～8月4日）では、土砂災害による不通や脱線も発生しています。特異な事件としては、東海道新幹線名古屋車両所での車両への銃撃（5月7日）や、山陰本線を走行中の列車連結器にしがみついていた人物の保護（11月16日）などがありました。JR京都駅構内では、信号扱いのミスによる列車接近インシデントが短期間に複数回発生しています（4月13日、4月14日）。また、11月6日には東海道本線（JR神戸線）で列車事故の救護活動中の救急隊員が後続列車に轢かれる痛ましい事故も発生しています。

主なダイヤ改正

年間を通じて多くの鉄道事業者でダイヤ改正が実施されました。特に、新線開業・延伸区間では大規模な改正が行われ、相互直通運転が開始されるなど、運行体系が大きく変わりました（例: 東北新幹線、ごめん・なはり線、りんかい線、芝山鉄道線）。既存路線でも、JR北海道千歳線でのエル特急名称変更（ライラック→スーパーホワイトアロー、3月16日）、近鉄京都線での全特急停車駅化（近鉄丹波橋駅、3月20日）、東急田園都市線での急行停車駅追加（あざみ野駅、3月28日）、JR京浜東北線での快速停車駅追加（浜松町駅、7月14日）、JR西日本特急停車駅追加（西九条駅、7月20日）、のと鉄道能登線での急行「のと恋路号」廃止（10月21日）など、利用状況や車両の置換に合わせた見直しが進められました。

まとめ

2002年は、東北新幹線延伸やごめん・なはり線開業といったネットワークの拡大、そしてICカードの普及拡大による利便性向上が図られた一年でした。また、新型車両の導入やワンマン運転の拡大など、効率化やサービス向上に向けた取り組みも進められました。一方で、地域を支えてきた路線の廃止や、特に踏切事故の多発は、鉄道が抱える課題を改めて浮き彫りにしました。安全確保と安定輸送の重要性が再認識された一年であったと言えるでしょう。

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