CPUソケット

CPUソケットとは

CPUソケットは、マザーボード上にCPUを物理的かつ電気的に接続するための部品です。CPUは、数十から数千もの接点を持ち、高い周波数で動作するため、専用のソケットが必要です。基本的には、CPU以外のLSI用のICソケットと大きな違いはありませんが、CPUとマザーボード間のインターフェースとしての電気的・論理的な仕様を含めて、「Socket AM4」のように名前で識別されることもあります。また、形状によっては「Slot 1」のように「CPUスロット」と呼ばれるものもあります。

近年では、CPU以外のプロセッサ（GPU）や組み込み向けのCPU、ノートパソコン向けのCPUは、直接ハンダ付けされることが多く、ソケットが使われることは少なくなっています。

CPUソケットの役割

CPUソケットの主な役割は以下の通りです。

CPUとマザーボードの電気的な接続を確立する
CPUを物理的に固定し、安定した動作を確保する
CPUの交換を容易にする

CPUソケットの歴史

ソケットの登場

初期のCPUは、マザーボードに直接ハンダ付けされていましたが、CPUの交換やアップグレードの需要が増えるにつれて、ソケットが導入されました。

スロットの登場

1990年代後半には、CPUをスロットに挿入する方式も登場しました。これは、CPUを搭載したプリント基板を拡張スロットのようなコネクタに挿入するもので、L2キャッシュメモリの拡張やCPUの着脱の容易さが利点でした。しかし、配線長が長くなることで、クロック周波数が高くなるとインピーダンスの問題が生じ、やがてソケット方式に戻ることになりました。

現在のCPUソケット

現在では、ほとんどのデスクトップPCのマザーボードでCPUソケットが採用されています。Intel製CPUではLand Grid Array（LGA）が、AMD製CPUではPin Grid Array（PGA）が主流です。LGAでは、ピンがソケット側にあり、CPUの底面にあるパッドと接触します。PGAでは、CPU底面のピンがソケットの穴に嵌ります。

Zero Insertion Force（ZIF）ソケットでは、CPUをほとんど抵抗なく挿入でき、レバーを倒すことで確実に固定できます。

CPUソケットの種類

CPUソケットには、様々な種類があり、それぞれ対応するCPUが異なります。以下に、主なCPUソケットの例を挙げます。

Intel製CPUソケット

Socket 1～Socket 7：初期のPentiumや486プロセッサで使用されたソケット
Socket 8：Pentium Pro専用ソケット
Slot 1：Pentium II、Pentium IIIで使用されたスロット
Socket 370：Pentium III、Celeronで使用されたソケット
Socket 423、Socket 478：Pentium 4で使用されたソケット
Socket 479：Pentium Mで使用されたソケット
Socket T (LGA775)：Pentium 4、Core 2 Duoなどで使用されたソケット
Socket B (LGA1366)：Core i7 (Nehalem) で使用されたソケット
Socket H (LGA1156)：Core i7/i5/i3 (Nehalem/Westmere) で使用されたソケット
Socket H2 (LGA1155)：Core i7/i5/i3 (Sandy Bridge/Ivy Bridge) で使用されたソケット
Socket H3 (LGA1150)：Core i7/i5/i3 (Haswell/Broadwell) で使用されたソケット
Socket H4 (LGA1151)：Core i9/i7/i5/i3 (Skylake/Kaby Lake/Coffee Lake) で使用されたソケット
Socket R (LGA2011)：Core i7 Extreme (Sandy Bridge/Ivy Bridge) で使用されたソケット
Socket R3 (LGA2011-v3)：Core i7 Extreme (Haswell/Broadwell) で使用されたソケット
Socket R4 (LGA2066)：Core i9/i7/i5 (Skylake/Kaby Lake) で使用されたソケット
Socket G1～G3：モバイル向けCPUで使用されたソケット
LGA1567,LGA1356,LGA2011,LGA3647：サーバー向けCPUで使用されたソケット

AMD製CPUソケット

Super Socket 7：AMD K6-2、K6-IIIなどで使用されたソケット
Slot A：Athlonで使用されたスロット
Socket A (Socket 462)：Athlon、Duronなどで使用されたソケット
Socket 754：Athlon 64、Sempronで使用されたソケット
Socket 939：Athlon 64、Athlon 64 X2で使用されたソケット
Socket AM2：Athlon 64、Athlon 64 X2などで使用されたソケット
Socket AM2+：Athlon 64、Athlon 64 X2などで使用されたソケット
Socket AM3：Phenom IIなどで使用されたソケット
Socket AM3+：Bulldozerなどで使用されたソケット
Socket AM4：Ryzenで使用されたソケット
Socket FM1、Socket FM2：APUで使用されたソケット
Socket AM1：SoCデスクトップ向けAPUで使用されたソケット
Socket TR4：Ryzen Threadripperで使用されたソケット
Socket sTRX4：Ryzen Threadripper 3000シリーズで使用されたソケット
Socket sWRX8：Ryzen Threadripper Proシリーズで使用されたソケット
Socket 563,754,S1,FS1,FP5：モバイル向けCPUで使用されたソケット
Socket 940,F,F+,G3,SP3：サーバー向けCPUで使用されたソケット

CPUソケットのインターフェース

CPUソケットの名前は、しばしばCPUのピン数やソケットの規格を表しています。例えば、「LGA775」は775本のピンを持つLGAソケットを指します。

CPUソケットのインターフェースには、以下のような要素が含まれます。

物理的な形状とピン数
電気的な特性（電圧、電流、インピーダンスなど）
論理的な仕様（メモリインターフェース、PCI Expressインターフェースなど）

CPUソケットの注意点

CPUソケットは、CPUとマザーボードの相性を決める重要な要素です。CPUを購入する際には、必ずマザーボードのソケットに対応しているかを確認する必要があります。ソケットが合わない場合、CPUをマザーボードに接続することはできません。

また、CPUソケットの名称は、CPUのパッケージ名やマザーボードのプラットフォーム名と混同されることがあります。例えば、「LGA775」はCPUの形状を指す場合もあれば、マザーボードの部品やハードウェア仕様を指す場合もあります。文脈から判断する必要があります。

その他のソケット

汎用のICソケットが使われるマイクロプロセッサもあります。これらはZIFソケットではないものが多く、引き抜く際に適切な工具が必要になります。

DIPソケット：8086, 8088, Z80などで使用されたソケット
PLCCソケット：80186, 80286, MC68000などで使用されたソケット
* PGAソケット：80386, MC68040などで使用されたソケット

まとめ

CPUソケットは、CPUとマザーボードを接続する重要な部品であり、CPUの進化とともに様々な種類が登場してきました。CPUを交換やアップグレードする際には、必ずCPUソケットの種類と互換性を確認しましょう。この記事がCPUソケットについての理解を深める一助となれば幸いです。

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