KCP+

KCP+（ケイ・シー・ピー・プラス）とは

KCP+は、KDDIがクアルコムと共同で開発したau携帯電話専用の共通プラットフォームです。KDDI Common Platform + の略称で、クアルコムのCPU統合チップセット「MSM7500」（600MHz）に対応しています。KDDIと沖縄セルラー電話の一部のau携帯電話で利用されていました。オペレーティングシステムの開発はKDDIテクノロジー、東芝、三洋電機が担当しました。本稿では、KCP+の発展版であるKCP3.xについても解説します。

概要

KDDIは、端末のソフトウェア開発コストを削減するため、通信キャリアとして初めてクアルコムとチップセットのライセンス契約を締結し、開発会社として参加メーカーが出向する形式を採用しました。KDDI独自の要求をすべての参加メーカーに共有し、共通プラットフォーム「KCP」として開発を進めました。これにより、チップセットの統一による生産コストの削減、EメールソフトやEZwebブラウザなどのサービスアプリの共通化が実現しました。

KCP+では、携帯電話の高機能化に伴う開発コスト削減のため、共通化の範囲をBREW以外にも拡大しました。ミドルウェア、無線通信制御、KCP+端末共通のデバイス、オペレーティングシステムの共通化を図りました。これにより、各メーカーは端末デザインや独自機能に注力できるようになりました。KDDIは2008年4月当時、au携帯電話の新サービスをKCP+上で開発していくと発表しました。しかし、2011年春モデルのSH011を最後に、KCP+搭載の音声端末の新規開発は終了しました。

KCP3.x

2010年5月、クアルコムのモバイルプロセッサ「Snapdragon S1」（QSD8650・1GHz）用に最適化されたKCP3.0が発表され、S004およびT004に搭載されました。KCP3.0は、KCP+に準拠していますが、基盤となるプラットフォームがBREWからBrew MPに変更されました。KCP+の共通化に加え、一部ハードウェアも共通化されています。

2010年秋冬モデルの一部と2011年春モデルのWIN HIGH SPEED対応機種にはKCP3.1が、2011年夏モデル以降にはKCP3.2が導入されました。KCP3.2では、クイックアクセスメニューがセルフメニューに変更され、モバイルアプリ版のSkype auに対応しました。KCP3.xを搭載した音声端末の新規開発は、2014年冬モデルのMARVERA2 KYY09を最後に終了しました。

共通化された機能

KCP+で共通化された機能は以下の通りです。ただし、一部機能はKCP+に後から組み込まれたため、初期の機種では利用できない場合があります。

マルチプレイウィンドウ

二つのアプリケーションを同時に表示できる機能。当初は標準搭載でしたが、2009年秋冬モデル以降は開発コスト削減のため省略されました。

クイックアクセスメニュー

ユーザーが頻繁に使う機能を自動的に登録する機能。2009年夏モデルのT002およびbiblioで先行採用され、2009年秋冬モデル以降に正式採用されました。クイックアクセスメニューと2画面同時表示機能が搭載された最後の機種はCA003です。

EV-DO Rev.AまたはEV-DO Rev.A+

一部端末でテレビ電話機能に対応しています。

アクロディア製のVIVID UI

シャープ開発のLCフォント

W62T以降の東芝機はUni-Typeを採用。一部のKCP3.X対応機種ではUni-Typeを選択できることがあります。ダウンロードフォントに対応しており、アウトラインフォントが利用可能です。シャープ機は、太ゴシック・明朝体を含めた3種類から選択可能で、P001はイワタUD丸ゴシックを採用しています。KCP3.X対応機種はLIM丸ゴシック体を採用していますが、初期はLIM新ゴシック体がデフォルトでした。Android 2.3 - 5.1で採用されていたモトヤシーダ・モトヤマルベリと同一です。

日本語入力システム

ジャストシステムの「ATOK for au + APOT」が採用されています。ソニー・エリクソン機は「POBox Pro」シリーズを、シャープ機は「ケータイShoin」シリーズ、または「iWnn」を採用しています。

LISMO PortやLISMO Videoへの対応

法人専用端末（E00番台）は除く。

「着うたフルプラス」対応

AAC-LC・320kbpsのオーディオコーデックを使用。法人専用端末と一部機種を除く、2009年春モデル以降のKCP+対応機種で標準対応。

EZアプリ「Full Game!（フル・ゲーム!）」対応

BREW4.0をベースに、1アプリあたりの最大ファイル容量が約10倍になり、3D描画が高速化。

待ち受け画面へのウィジェット（au oneガジェット）機能

初期は標準搭載でしたが、一部機種を除き、2009年夏モデル以降は開発コスト削減のため省略。

高音質再現ポストデコードエンジン「net K2」の搭載

一部機種を除く、2008年春モデル以降のKCP+対応機種に標準搭載。

EZwebブラウザ (Myriad Browser V7)

操作の統一（上下キーで1行スクロール、左右キーで1画面スクロールなど）が図られています。

問題点

初期のKCP+採用端末では、キー操作のレスポンス低下、フリーズ、リセットなどの問題が指摘されました。不具合修正のアップデートが頻繁に行われました。

KCP+端末では、ユーザーインターフェースの統合が図られましたが、メーカー独自の機能が共通化により利便性を損なう場合がありました。例えば、メールアドレス選択の方法が変わり、効率が低下するなどの例がありました。

新しい技術導入と統合による一時的な混乱と位置づけられ、より新しい機種での改良が図られました。2009年春モデル以前の機種では、microSDHCメモリーカードやタッチパネルなどのインターフェースにKCP+が対応しておらず、同年夏モデル以降に順次解消されました。

KCP+内のPCサイトビューアー(Opera Mobile)にはDigest認証のバグがありました。

採用端末

2018年 12月現在、以下の端末がKCP+またはKCP3.xを採用しています。

◇：法人向けKCP+搭載機種
★：KCP3.0・Snapdragon S1搭載機種
☆：KCP3.1・Snapdragon S1・WIN HIGH SPEED搭載機種
◎：KCP3.2・Snapdragon S1・WIN HIGH SPEED搭載機種

周辺機器

au BOX：パソコンなしで、テレビ経由で携帯電話に曲を転送する機能があります。（法人向け専用のE05SHとE06SHを除く）