西域

西域：古代中国とユーラシア世界の接点

西域とは、古代中国において中国の西方地域を指す呼称です。その範囲は時代や文献によって異なり、当初はタリム盆地周辺の国々を指していましたが、次第にジュンガル盆地、中央アジア、インド亜大陸の一部、さらには西アジアにまで拡大していきました。地理的には、概ね中央アジア地域を指し、場合によってはインド亜大陸や西アジアをも含みます。

西域の地理と主要国家

西域はパミール高原を境に東西に大きく分けられます。東側には、現在の新疆ウイグル自治区にあたる地域があり、トルファン盆地、ジュンガル盆地、タリム盆地といったオアシスを中心に、焉耆、亀茲、于闐、楼蘭などの多くの国家が栄えました。一方、西側の中央アジア地域には、ソグディアナ、バクトリア、大宛、康居といった国家が存在していました。これらの地域は、シルクロードという東西交易路の要衝として、古くから東西文化交流の中心地として重要な役割を果たしました。

西域の歴史：古代からの交流と興亡

西域の歴史は、紀元前6世紀以降、アケメネス朝ペルシアの支配下にあった西部地域と、東部地域における匈奴の影響下のタリム盆地地域との違いによって特徴づけられます。アケメネス朝は西アジアから中央アジアまで広く版図を拡大しましたが、パミール高原を越えてタリム盆地へ進出することはありませんでした。一方、タリム盆地では、匈奴が支配力を及ぼす以前から楼蘭、焉耆、亀茲といった国家が存在していました。この時代のタリム盆地の歴史は謎が多く、明確な記述は少ないのが現状です。

張騫の探検と漢の西域進出

前漢の武帝の時代、匈奴の脅威に対抗するため、武帝は張騫を西域へ派遣しました。張騫は中央アジアを訪れ、大宛、康居、大月氏といった国々との接触に成功します。しかし、大月氏との軍事同盟は実現せず、代わりに烏孫という遊牧国家と同盟を結び、匈奴を牽制する戦略をとりました。張騫の探検は、漢の西域への関与を深める契機となり、西域諸国との外交、軍事的な関係構築を進めることになります。

漢による西域支配とその後

漢は楼蘭、姑師といった小国を服属させ、大宛への遠征も行いました。烏孫との同盟関係は継続し、匈奴の勢力に対抗する上で重要な役割を果たしました。その後、西域都護府が設置され、漢の西域支配が強化されましたが、新の時代には一時的に混乱を招きます。後漢時代には莎車国が一時的に強大な勢力を持つものの、西域経営は困難を極めます。

班超の西域平定とローマへの使節

後漢の明帝の時代、班超は西域に派遣され、多くの国々を服属させました。また、甘英という使節を安息（パルティア）へと派遣し、地中海沿岸への到達を果たしました。このことは、西域を通じて中国とローマ帝国との間接的な交流があったことを示しています。

三国時代以降の西域

三国時代以降、西域は中国の支配から離れ、さまざまな勢力の支配下に置かれました。この時代、鄯善国から出土したカローシュティー文字による文書は、当時の西域におけるクシャーナ朝の影響を示す貴重な史料です。西晋、五胡十六国時代、北朝時代を通して、西域諸国は中国王朝と関わりを持ちながら、独自の政治的・文化的発展を遂げました。

突厥の台頭と唐の支配

6世紀以降、突厥が中央アジアを制圧し、西域諸国を支配下に置きました。唐の時代には、再び中国による西域支配が開始され、高昌国を滅ぼして安西都護府が設置されるなど、強力な支配体制を敷きました。西突厥の阿史那賀魯の反乱を鎮圧するなど、西域支配を拡大し、西域は唐の版図に組み込まれることになります。しかし、吐蕃の台頭などにより唐の支配は次第に衰え、西域は再び複雑な歴史的展開を迎えていくことになります。

西域の文化と交流

西域は、東西交易路であるシルクロードの要衝として、様々な文化が交差する地域でした。仏教はシルクロードを通じて西域に伝わり、その後中国に広がっていきました。西域の都市国家や遊牧民の文化は、中国文化、中央アジア文化、インド文化など多様な文化要素を含んでおり、その多様な文化交流こそが西域の歴史を特徴づける重要な要素となっています。西域の歴史を理解することは、ユーラシア大陸における東西文化交流の歴史を理解する上で不可欠です。

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