隠岐国分寺

隠岐国分寺は、島根県隠岐郡隠岐の島町池田に位置する東寺[[真言宗]]の寺院です。山号を禅尾山と称し、本尊には釈迦如来を祀っています。この寺院は、奈良時代に聖武天皇の詔によって日本各地に建立された国分寺の一つ、隠岐国国分僧寺の後継寺院にあたります。境内は国の史跡に指定されており、毎年4月21日には蓮華会舞（国の重要無形民俗文化財）が奉納されることで知られています。

概要

隠岐国分寺は、隠岐諸島の主島である島後の最大の平野、八尾平野の北側の丘陵に位置しています。この地は、古代より隠岐地方の中心地として栄え、国分寺の近くには隠岐諸島最大の平神社古墳も築造されています。寺伝によると、隠岐に流された後醍醐天皇がこの寺を行在所としたとされ、境内にはその跡を示す石碑が建てられています。

現在の国分寺境内は、1934年に遺跡包含地として国の史跡に指定されました。2007年には本堂が火災で焼失しましたが、2009年度からの再建に伴う発掘調査で、旧国分寺跡と見られる遺構が発見されています。また、毎年4月21日に行われる蓮華会舞は、古代の様式を伝える貴重な文化財として、国の重要無形民俗文化財に指定されています。

歴史

古代

隠岐国分寺の創建時期は明確ではありませんが、天平13年（741年）の国分寺建立の詔の頃に創建されたと考えられています。『日本三代実録』には、貞観9年（867年）に新羅調伏のため、伯耆国、出雲国、石見国、隠岐国、長門国に四天王像が送られ、隠岐国では国分寺境内に「四王寺」が設けられたと記録されています。また、『延喜式』によれば、隠岐国の国分寺には稲5千束が充てられていました。

中世

鎌倉時代末期には、元弘の変で敗れた後醍醐天皇が隠岐国分寺を行在所としたとされています。『増鏡』や古文書にもその記述が見られますが、一方で、西ノ島町の黒木御所も行在所候補とされており、正確な場所は判然としません。応安2年（1369年）には国分寺内の四王寺の田地が国分寺に寄進され、康正3年（1457年）には守護から国分寺領の段銭免除指示が出されています。しかし、明応8年（1499年）には四王寺が国分寺境内から分離して再建され、国分寺の勢力は衰退したと考えられます。永正11年（1514年）には、国分寺本堂が守護代によって再建されています。

近世

江戸時代には、国分寺の寺領は5石でした。

近代以降

明治時代に入ると、廃仏毀釈の影響で、国分寺は明治2年（1869年）に本堂と三重塔を焼失し、翌年に廃寺となりました。また、南東にあった真言宗の尼寺も廃寺となり、それぞれ「池田村」「小原村」と村名が改称されました。その後、国分寺は1879年に再興され、1934年に境内が国の史跡に指定されました。本堂は1950年に再建されましたが、2007年に焼失、2014年に再建されました。尼寺跡は1972年に島根県指定史跡に指定されています。

境内

境内には、本堂、鐘楼、庫裏などが配置されています。本堂は、2014年に再建されたもので、瓦葺きの入母屋造りの建物です。鐘楼は、袴腰付きの建物で、境内に響き渡る鐘の音は、古くから人々の心を癒やしてきました。庫裏は、寺院の台所として使用されており、僧侶たちの生活を支えています。

行事

毎年4月21日には、蓮華会舞（れんげえまい）が催されます。この舞は、奈良時代から平安時代頃に大陸から伝わった舞楽・無言仮面劇に近い様式を残すと言われ、元々は6月15日に四王寺で行われた行事とされています。現在では、「麦焼舞」「眠り仏」「獅子舞」「貴徳山神」「竜王」「太平楽」「仏舞」の7番が演じられます。この蓮華会舞は、1977年に「隠岐国分寺蓮華会舞」として国の重要無形民俗文化財に指定されています。

隠岐国分寺跡

僧寺跡は、現在の国分寺の境内一帯に位置すると考えられています。寺域は一町四方（約109メートル四方）以上あったと見られています。2009年度からの発掘調査では、根巻き瓦を持つ柱穴列が検出され、旧国分寺の遺構である可能性が指摘されています。境内には、礎石や瓦が保存されています。

隠岐国分尼寺跡

尼寺跡は、国分寺の南東約500メートルの場所に位置しています。寺域も一町四方（約109メートル四方）と推定され、発掘調査では建物跡、柵跡、溝状遺構、瓦溜まりなどが発見されています。特に、金堂、講堂、中門と見られる建物跡が注目されますが、伽藍配置が通常の寺院と異なるため、周吉郡の役所であったとする説も存在します。出土した瓦は、他の寺院跡の瓦と文様が共通しており、当時の交流を示すと考えられます。寺跡は1972年に島根県指定史跡に指定されています。

文化財

国の史跡

隠岐国分寺境内（1934年指定、2018年に追加指定）

重要無形民俗文化財（国指定）

隠岐国分寺蓮華会舞（1977年指定）

島根県指定文化財

史跡：隠岐国分尼寺跡（1972年指定）

その他

かつては蓮華会舞の古面も県指定文化財でしたが、2007年の火災で焼失したため指定解除されています。

現地情報

所在地

国分寺：島根県隠岐郡隠岐の島町池田風呂前
国分尼寺跡：島根県隠岐郡隠岐の島町有木

交通アクセス

西郷港から隠岐一畑バスで「国分寺前」バス停下車

周辺

平神社古墳（隠岐諸島最大規模の古墳）

脚注

境内説明板
隠岐国分尼寺跡史跡説明板（島根県教育委員会・隠岐島後教育委員会、2001年3月設置）
『日本歴史地名大系 33 島根県の地名』平凡社、1995年
中世諸国一宮制研究会編『中世諸国一宮制の基礎的研究』岩田書院、2000年
「隠岐国分寺境内」『国指定史跡ガイド』講談社

関連文献

『隠岐国分尼寺調査報告』隠岐島後教育委員会、1971年

外部リンク

隠岐国分寺境内 - 国指定文化財等データベース（文化庁）
隠岐国分寺跡 - 島根県ホームページ
* 国指定文化財 > 隠岐国分寺境内・隠岐国分寺蓮華会舞 - 隠岐の島町ホームページ

もう一度検索