アテナイのアクロポリス
アテネのアクロポリスは、世界で最もよく知られているアクロポリスであり、古代ギリシャ文明の象徴として重要な存在です。ギリシャには多くのアクロポリスが存在しますが、一般的に「アクロポリス」と言えば、このアテネのアクロポリスを指すほど、その知名度は圧倒的です。2007年には、ヨーロッパの文化遺産リストに卓越した遺産として登録され、その価値が改めて認められました。アクロポリスは、アテネの海抜150メートルの岩山の上に位置し、約3ヘクタールの広さを誇ります。かつては、最初のアテネ王ケクロプスにちなんで「ケクロピア」とも呼ばれていました。
アクロポリスの歴史は非常に古く、新石器時代初期（紀元前6000年頃）には既にアッティカ地方で人類の居住が確認されています。青銅器時代後期には、ミケーネ文明の巨大な建物（メガロン）が丘の上に建てられていたと考えられています。このメガロンは木造であったため、現在では石灰岩の柱や砂岩の階段の一部しか残っていません。メガロンの建設後には、長さ760メートル、高さ10メートル、幅3.5～6メートルの巨大な円形の壁が建設されました。この壁は、アクロポリスの主要な防御施設として5世紀まで使用されました。壁は、大きな岩のブロックとモルタルで構成され、侵入者を防御しやすいように設計されています。丘の北側には、岩を削って作られた階段からなる、もう一つの進入路がありました。ホメーロスの叙事詩『オデュッセイア』に登場するエレクセウスの館は、この防御施設を指しているという説もあります。
13世紀以前に起こった数回の地震は、アクロポリスの北東端に亀裂を生じさせ、この亀裂は柔らかい泥灰土の床を約35メートルほど引き伸ばしました。この亀裂に沿って階段が建設され、井戸が掘られました。この井戸は、ミケーネ文明時代には包囲された際の貴重な飲料水源として利用されました。
アテネのアクロポリスにミケーネ文明の宮殿があったという明確な証拠はありません。しかし、もし宮殿が存在していたとすれば、後のアクロポリスでの建築活動に伴い、その痕跡は失われたと考えられます。紀元前7～6世紀には、この場所はキュノンの反乱やペイシストラトスのクーデター未遂によって一時的に占拠されています。
紀元前6世紀中期には、アテナ（都市の守護神）に捧げられた神殿が建設されました。この石灰岩のドーリア式建築物は、髭が青黒く塗られた3つの体を持つ蛇男の彫刻にちなんで「青ひげ」神殿と呼ばれています。この神殿が古い神殿を置き換えたのか、単なる聖域であったのかは不明です。紀元前6世紀後期には、さらに別の神殿が建設され、「古い神殿」（Archaios Naos）と呼ばれました。「青ひげ」神殿と「古い神殿」が同時に存在していたかどうかは不明であり、その正確な位置についても議論があります。
紀元前490年のマラトンの戦いでの勝利に伴い、初期のパルテノン神殿（Ur-Parthenon）の建設が開始されました。この新しい壮大な大理石建築物の建設のために、アクロポリスの南部分から古い遺物が取り除かれ、ピレウス産の石灰岩でできたブロックが運び込まれました。基礎は最大で11メートルまで掘り下げられ、擁壁によって土が台の上に盛り土されました。しかし、紀元前480年にペルシャ人が侵攻した際、初期のパルテノン神殿は建設中であり、建物は焼失し、古い神殿やその他の建造物も略奪されました。ペルシャ戦争終結後、アテナイ人は、未完成の神殿の資材を利用して、アクロポリスの北側に新しい壁を建設しました。これらは戦勝記念碑となり、今日でも見ることができます。荒廃したアクロポリスの瓦礫は取り除かれ、彫刻、宗教的な奉納品、修復不可能な建築資材は、初期のパルテノン神殿の周囲に人工的な台地を作るために埋められました。この「ペルシャの瓦礫」は、アクロポリスの発掘において、考古学的に非常に重要な発見となっています。
アテナイの黄金時代（紀元前460～430年）には、ペリクレスの指導のもとで、重要な神殿のほとんどが再建されました。この再建は、偉大な彫刻家ペイディアスの総指揮の下、建築家イクティノスとカリクラテスによって行われました。紀元前5世紀中に、アクロポリスは最終的な形を完成させました。紀元前466年のエウリュメドン川の戦いでの勝利後、キモンとテミストクレスは北側と南側の壁の再建を命じ、ペリクレスはパルテノン神殿の建設をイクティノスとカリクラテスに委ねました。
紀元前437年には、ムネシクレスがプロピュライアの建設を開始しました。プロピュライアは、ペイシストラトスによって建設された古い門の一部を拡張した、壮大な大理石の柱を持つ門です。これらの柱廊は紀元前432年頃に完成し、2つの翼を持ち、北側の翼は絵画ギャラリーとして使用されました。同時期には、南側に小さなイオニア様式の神殿であるアテーナー・ニーケー神殿の建設も開始されました。ペロポネソス戦争による中断の後、この神殿はニキアスの和平期間である紀元前421年から紀元前415年の間に完成しました。
同じ時期に、エレクテイオンの建設も始まりました。エレクテイオンは、アテナ・ポリアス神殿、ポセイドン神殿、エレクセウス神殿、ケクロプス神殿、ヘルセ神殿、パンドロソス神殿、アグラウロス神殿など、複数の神々を祀る複合的な神殿です。また、カリアティードバルコニー（またはコレーの柱廊）としても知られる有名な柱廊も、このエレクテイオンの一部です。
アテーナー・ニーケー神殿とパルテノン神殿の間には、アルテミス・ブラウロニアの聖域（ブラウロネイオン）がありました。この聖域では、クマとして象徴される女神が、ブラウロンの都市で崇拝されていました。古代の神像や、紀元前4世紀にプラクシテレスによって作られた像が、この聖域に安置されていました。
プロピュライアの後方には、ペイディアスが紀元前450年から448年の間に作った、巨大なブロンズ像であるアテナ・プロマコス像がそびえ立っていました。この像の高さは約9メートルで、金メッキされた槍と、ケンタウロスとラピテース族の戦いを描いた大きな盾を持っていました。その他にも、カルコテケ、パンドロセイオン、パンディオーンの聖域、アテナの祭壇、ゼウス神の聖域、ローマ時代にはアウグストゥス神殿、ローマの円形神殿などが存在していましたが、その多くは現在ではその姿をとどめていません。
ヘレニズムとローマ支配下の時代には、既存の建造物の多くが経年劣化や戦争による損傷から修復されました。アッタロス朝の王たち（アッタロス2世やエウメネス2世）は、記念碑を建設しました。これらはローマ帝国初期には、アウグストゥスやアグリッパにそれぞれ献呈されました。エウメネスは、アゴラの下にあるアッタロスの柱廊に似た、南斜面の柱廊の建設を担当しました。
ユリウス＝クラウディウス朝の時代には、パルテノン神殿から23kmの場所に、ローマとアウグストゥスのための小さな円形神殿が建てられました。同時期には、北斜面の洞窟にパーンを祀る聖域が設けられ、アルコンは就任時にアポロンに捧げ物をしました。次の世紀には、南斜面にヘロディス・アッティコスがオデオンを建設しました。
3世紀には、ヘルール族の侵攻の脅威から、アクロポリスの壁が修復され、プロピュライアの前の入り口を制限するために「ブール門」が建設されました。これにより、アクロポリスは再び要塞としての役割を果たしました。
ビザンティン時代には、パルテノン神殿が聖母マリアに捧げられた教会となりました。アテネ公国時代には、アクロポリスは行政の中心として機能し、パルテノン神殿やプロピュライアは宮殿の一部として使用されました。「フランク人の塔」と呼ばれる大きな塔が増築されましたが、19世紀に破壊されました。オスマン帝国による支配下では、パルテノン神殿はトルコ軍の司令部として使われ、エレクテイオンは総督の私的なハレムへと姿を変えました。アクロポリスの建造物は、1687年のヴェネツィア軍による包囲戦で大きな被害を受けました。特に、火薬庫として使われていたパルテノン神殿は大砲の攻撃で爆発し、甚大な損傷を受けました。
アクロポリスの入り口は、プロピュライアと呼ばれる壮大な門です。入り口の南には、小さなアテーナー・ニーケー神殿があります。かつて、アクロポリスの中心には、ペイディアスによって制作されたアテナの青銅像が立っていました。アクロポリスの中心部には、パルテノン神殿がそびえ立っています。プロピュライアの東、パルテノン神殿の北には、エレクテイオンと呼ばれる神殿があります。アクロポリスの頂上を形成する高台の南側には、ディオニューソス劇場があります。数百メートル先には、部分的に復元されたディオニューソス劇場もあります。
アクロポリスのすべての貴重な古代の遺物は、南斜面から260メートルの場所にあるアクロポリス博物館に保管されています。
パルテノン神殿
アテナ古神殿
エレクテイオン
アテナ・プロマコスの像
プロピュライア
アテーナー・ニーケー神殿
エレウシニオン
アルテミス・ブラウロニアの聖域
カルコテケ
パンドロセイオン
アリフォリオン
アテナの祭壇
ゼウス・ポリエウスの聖域
パンディオーンの聖域
ヘロディス・アッティコス音楽堂
エウメネスの柱廊
アスクレペイオン
ディオニューソス劇場
アテナイ音楽堂（ペリクレスのオデオン）
アグラウロス聖堂
1975年に開始された修復事業は、まもなく完了を迎えます。この修復の目的は、経年劣化、汚染、戦争による破壊、過去の修復ミスを修正することです。アクロポリスとその斜面から残った石を集め、鑑定し、できる限り元の素材で修復するという試みです。全ての修復にはチタンの釘が使用され、将来の専門家が変更する際に完全に元に戻せるように設計されています。最先端の技術と、古代の技術の分析、再発明を組み合わせて修復が行われました。
17世紀のヴェネツィア軍による砲撃で大きく破壊されたパルテノン神殿の柱廊は、誤った構成を修正して再建されました。プロピュライアの屋根と床は新しい大理石で一部が修復され、元の青と金の装飾が施されました。アテーナー・ニーケー神殿も修復が進んでおり、残っている完全に近い部分を適切に配置する段階にあります。修復された建築部材は合計2675トンに及び、そのうち686個の石が元の部材であり、905個が新しい大理石によって継ぎ足され、186個が完全に新しい大理石で作成されました。使用されたピレウス産大理石の総量は530立方メートルです。
4年ごとにアテネで開催されていたパナテナイア祭では、アテナイの人々がアクロポリスに行進し、パルテノン神殿に入りました。パルテノン神殿のフリーズに描かれているように、大きなウール織物の礼服が、ペイディアス作の巨大な象牙と金の女神アテナ像に儀式的に捧げられました。
アテネのアクロポリスは、以下の基準を満たし、世界遺産に登録されています。
(1) 人類の創造的才能を表現する傑作である。
(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すものである。
(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠である。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例である。
* (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するものである。
2023年7月には、欧州を襲った熱波の影響で気温が上昇し、観光客の健康を確保するため、アクロポリスは正午から午後5時まで閉鎖されました。
歴史
初期の村落
アクロポリスの歴史は非常に古く、新石器時代初期（紀元前6000年頃）には既にアッティカ地方で人類の居住が確認されています。青銅器時代後期には、ミケーネ文明の巨大な建物（メガロン）が丘の上に建てられていたと考えられています。このメガロンは木造であったため、現在では石灰岩の柱や砂岩の階段の一部しか残っていません。メガロンの建設後には、長さ760メートル、高さ10メートル、幅3.5～6メートルの巨大な円形の壁が建設されました。この壁は、アクロポリスの主要な防御施設として5世紀まで使用されました。壁は、大きな岩のブロックとモルタルで構成され、侵入者を防御しやすいように設計されています。丘の北側には、岩を削って作られた階段からなる、もう一つの進入路がありました。ホメーロスの叙事詩『オデュッセイア』に登場するエレクセウスの館は、この防御施設を指しているという説もあります。
13世紀以前に起こった数回の地震は、アクロポリスの北東端に亀裂を生じさせ、この亀裂は柔らかい泥灰土の床を約35メートルほど引き伸ばしました。この亀裂に沿って階段が建設され、井戸が掘られました。この井戸は、ミケーネ文明時代には包囲された際の貴重な飲料水源として利用されました。
暗黒時代
アテネのアクロポリスにミケーネ文明の宮殿があったという明確な証拠はありません。しかし、もし宮殿が存在していたとすれば、後のアクロポリスでの建築活動に伴い、その痕跡は失われたと考えられます。紀元前7～6世紀には、この場所はキュノンの反乱やペイシストラトスのクーデター未遂によって一時的に占拠されています。
初期のアクロポリス
紀元前6世紀中期には、アテナ（都市の守護神）に捧げられた神殿が建設されました。この石灰岩のドーリア式建築物は、髭が青黒く塗られた3つの体を持つ蛇男の彫刻にちなんで「青ひげ」神殿と呼ばれています。この神殿が古い神殿を置き換えたのか、単なる聖域であったのかは不明です。紀元前6世紀後期には、さらに別の神殿が建設され、「古い神殿」（Archaios Naos）と呼ばれました。「青ひげ」神殿と「古い神殿」が同時に存在していたかどうかは不明であり、その正確な位置についても議論があります。
紀元前490年のマラトンの戦いでの勝利に伴い、初期のパルテノン神殿（Ur-Parthenon）の建設が開始されました。この新しい壮大な大理石建築物の建設のために、アクロポリスの南部分から古い遺物が取り除かれ、ピレウス産の石灰岩でできたブロックが運び込まれました。基礎は最大で11メートルまで掘り下げられ、擁壁によって土が台の上に盛り土されました。しかし、紀元前480年にペルシャ人が侵攻した際、初期のパルテノン神殿は建設中であり、建物は焼失し、古い神殿やその他の建造物も略奪されました。ペルシャ戦争終結後、アテナイ人は、未完成の神殿の資材を利用して、アクロポリスの北側に新しい壁を建設しました。これらは戦勝記念碑となり、今日でも見ることができます。荒廃したアクロポリスの瓦礫は取り除かれ、彫刻、宗教的な奉納品、修復不可能な建築資材は、初期のパルテノン神殿の周囲に人工的な台地を作るために埋められました。この「ペルシャの瓦礫」は、アクロポリスの発掘において、考古学的に非常に重要な発見となっています。
ペリクレスの建築計画
アテナイの黄金時代（紀元前460～430年）には、ペリクレスの指導のもとで、重要な神殿のほとんどが再建されました。この再建は、偉大な彫刻家ペイディアスの総指揮の下、建築家イクティノスとカリクラテスによって行われました。紀元前5世紀中に、アクロポリスは最終的な形を完成させました。紀元前466年のエウリュメドン川の戦いでの勝利後、キモンとテミストクレスは北側と南側の壁の再建を命じ、ペリクレスはパルテノン神殿の建設をイクティノスとカリクラテスに委ねました。
紀元前437年には、ムネシクレスがプロピュライアの建設を開始しました。プロピュライアは、ペイシストラトスによって建設された古い門の一部を拡張した、壮大な大理石の柱を持つ門です。これらの柱廊は紀元前432年頃に完成し、2つの翼を持ち、北側の翼は絵画ギャラリーとして使用されました。同時期には、南側に小さなイオニア様式の神殿であるアテーナー・ニーケー神殿の建設も開始されました。ペロポネソス戦争による中断の後、この神殿はニキアスの和平期間である紀元前421年から紀元前415年の間に完成しました。
同じ時期に、エレクテイオンの建設も始まりました。エレクテイオンは、アテナ・ポリアス神殿、ポセイドン神殿、エレクセウス神殿、ケクロプス神殿、ヘルセ神殿、パンドロソス神殿、アグラウロス神殿など、複数の神々を祀る複合的な神殿です。また、カリアティードバルコニー（またはコレーの柱廊）としても知られる有名な柱廊も、このエレクテイオンの一部です。
アテーナー・ニーケー神殿とパルテノン神殿の間には、アルテミス・ブラウロニアの聖域（ブラウロネイオン）がありました。この聖域では、クマとして象徴される女神が、ブラウロンの都市で崇拝されていました。古代の神像や、紀元前4世紀にプラクシテレスによって作られた像が、この聖域に安置されていました。
プロピュライアの後方には、ペイディアスが紀元前450年から448年の間に作った、巨大なブロンズ像であるアテナ・プロマコス像がそびえ立っていました。この像の高さは約9メートルで、金メッキされた槍と、ケンタウロスとラピテース族の戦いを描いた大きな盾を持っていました。その他にも、カルコテケ、パンドロセイオン、パンディオーンの聖域、アテナの祭壇、ゼウス神の聖域、ローマ時代にはアウグストゥス神殿、ローマの円形神殿などが存在していましたが、その多くは現在ではその姿をとどめていません。
ヘレニズムとローマ支配下の時代
ヘレニズムとローマ支配下の時代には、既存の建造物の多くが経年劣化や戦争による損傷から修復されました。アッタロス朝の王たち（アッタロス2世やエウメネス2世）は、記念碑を建設しました。これらはローマ帝国初期には、アウグストゥスやアグリッパにそれぞれ献呈されました。エウメネスは、アゴラの下にあるアッタロスの柱廊に似た、南斜面の柱廊の建設を担当しました。
ユリウス＝クラウディウス朝の時代には、パルテノン神殿から23kmの場所に、ローマとアウグストゥスのための小さな円形神殿が建てられました。同時期には、北斜面の洞窟にパーンを祀る聖域が設けられ、アルコンは就任時にアポロンに捧げ物をしました。次の世紀には、南斜面にヘロディス・アッティコスがオデオンを建設しました。
3世紀には、ヘルール族の侵攻の脅威から、アクロポリスの壁が修復され、プロピュライアの前の入り口を制限するために「ブール門」が建設されました。これにより、アクロポリスは再び要塞としての役割を果たしました。
東ローマ帝国とオスマン帝国時代
ビザンティン時代には、パルテノン神殿が聖母マリアに捧げられた教会となりました。アテネ公国時代には、アクロポリスは行政の中心として機能し、パルテノン神殿やプロピュライアは宮殿の一部として使用されました。「フランク人の塔」と呼ばれる大きな塔が増築されましたが、19世紀に破壊されました。オスマン帝国による支配下では、パルテノン神殿はトルコ軍の司令部として使われ、エレクテイオンは総督の私的なハレムへと姿を変えました。アクロポリスの建造物は、1687年のヴェネツィア軍による包囲戦で大きな被害を受けました。特に、火薬庫として使われていたパルテノン神殿は大砲の攻撃で爆発し、甚大な損傷を受けました。
遺跡
アクロポリスの入り口は、プロピュライアと呼ばれる壮大な門です。入り口の南には、小さなアテーナー・ニーケー神殿があります。かつて、アクロポリスの中心には、ペイディアスによって制作されたアテナの青銅像が立っていました。アクロポリスの中心部には、パルテノン神殿がそびえ立っています。プロピュライアの東、パルテノン神殿の北には、エレクテイオンと呼ばれる神殿があります。アクロポリスの頂上を形成する高台の南側には、ディオニューソス劇場があります。数百メートル先には、部分的に復元されたディオニューソス劇場もあります。
アクロポリスのすべての貴重な古代の遺物は、南斜面から260メートルの場所にあるアクロポリス博物館に保管されています。
見取り図
パルテノン神殿
アテナ古神殿
エレクテイオン
アテナ・プロマコスの像
プロピュライア
アテーナー・ニーケー神殿
エレウシニオン
アルテミス・ブラウロニアの聖域
カルコテケ
パンドロセイオン
アリフォリオン
アテナの祭壇
ゼウス・ポリエウスの聖域
パンディオーンの聖域
ヘロディス・アッティコス音楽堂
エウメネスの柱廊
アスクレペイオン
ディオニューソス劇場
アテナイ音楽堂（ペリクレスのオデオン）
アグラウロス聖堂
アクロポリス修復事業
1975年に開始された修復事業は、まもなく完了を迎えます。この修復の目的は、経年劣化、汚染、戦争による破壊、過去の修復ミスを修正することです。アクロポリスとその斜面から残った石を集め、鑑定し、できる限り元の素材で修復するという試みです。全ての修復にはチタンの釘が使用され、将来の専門家が変更する際に完全に元に戻せるように設計されています。最先端の技術と、古代の技術の分析、再発明を組み合わせて修復が行われました。
17世紀のヴェネツィア軍による砲撃で大きく破壊されたパルテノン神殿の柱廊は、誤った構成を修正して再建されました。プロピュライアの屋根と床は新しい大理石で一部が修復され、元の青と金の装飾が施されました。アテーナー・ニーケー神殿も修復が進んでおり、残っている完全に近い部分を適切に配置する段階にあります。修復された建築部材は合計2675トンに及び、そのうち686個の石が元の部材であり、905個が新しい大理石によって継ぎ足され、186個が完全に新しい大理石で作成されました。使用されたピレウス産大理石の総量は530立方メートルです。
文化的な意義
4年ごとにアテネで開催されていたパナテナイア祭では、アテナイの人々がアクロポリスに行進し、パルテノン神殿に入りました。パルテノン神殿のフリーズに描かれているように、大きなウール織物の礼服が、ペイディアス作の巨大な象牙と金の女神アテナ像に儀式的に捧げられました。
世界遺産
アテネのアクロポリスは、以下の基準を満たし、世界遺産に登録されています。
(1) 人類の創造的才能を表現する傑作である。
(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すものである。
(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠である。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例である。
* (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するものである。
その他
2023年7月には、欧州を襲った熱波の影響で気温が上昇し、観光客の健康を確保するため、アクロポリスは正午から午後5時まで閉鎖されました。
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