キッド級ミサイル駆逐艦

キッド級ミサイル[[駆逐艦]]

キッド級ミサイル[[駆逐艦]]は、アメリカ海軍がかつて運用していたミサイル[[駆逐艦]]です。元々はイラン海軍が発注したものの、イラン革命によってキャンセルされた艦を、アメリカ海軍が買い取って建造・就役させたという経緯を持ちます。

来歴

1970年代、イランは豊富なオイルマネーを背景に軍備拡張を進めていました。その一環として、防空の中核となる巡洋艦の保有を検討していました。当時アメリカでは、スプルーアンス級[[駆逐艦]]をベースとした防空艦（DXG）の計画が進められており、イラン海軍はこれに着目し1974年に6隻を発注しました。しかし、船価の高騰やイラン革命の影響でキャンセルされ、アメリカ海軍が建造を引き継ぐことになりました。

アメリカ海軍は元々DXGの設計に関心がありましたが、実現には至っていませんでした。イランがキャンセルした艦の建造を引き継ぐことで、比較的安価に防空能力の高い艦を入手できると判断したのです。

設計

キッド級は、スプルーアンス級[[駆逐艦]]の設計をベースに、防空艦としての機能を強化したものです。船体はスプルーアンス級とほぼ同じですが、イラン海軍の要求に応じて、装甲の追加や空調設備の強化などが行われています。特に、ペルシア湾での運用を考慮し、砂嵐対策としてフィルターが強化されました。これらの設計変更により、排水量はスプルーアンス級より1,000トン増加しています。

主機は、スプルーアンス級と同様に、ゼネラル・エレクトリック LM2500ガスタービンエンジン4基をCOGAG方式で組み合わせた構成です。電源もスプルーアンス級と同じく、出力2,000キロワットのガスタービン発電機3基を搭載しています。

装備

キッド級は、DXG計画およびバージニア級原子力ミサイル[[巡洋艦]]に準じた装備を搭載しています。海軍戦術情報システム（NTDS）を中核とした統合システム艦であり、高度な情報処理能力を有していました。

C4ISR

NTDSの[戦術情報処理装置]]を搭載し、リンク4A、11、14での戦術データ・リンクに対応していました。対空センサーとしては、AN/SPS-48C 3次元[[レーダー]]を後檣に、AN/SPS-49(V)2 2次元レーダーを前檣に搭載していました。ソナーはAN/SQS-53Aをバウ・ドームに収容しています。電子戦装置としては、[[AN/SLQ-32|AN_SLQ-32]2電波探知装置を備えていました。

武器システム

主兵装はターター・システムであり、AN/SPG-51D火器管制レーダーを2基備えたMk.74 ミサイル射撃指揮装置を搭載していました。ミサイル発射機としては、連装のMk.26が艦の前後に搭載され、SM-1MR艦対空ミサイルを運用していました。NTU改修により、電子機器の更新やSM-2MRミサイルの運用能力の獲得が行われました。

艦砲は54口径127mm単装砲（Mk.45 5インチ砲）を2門、対艦兵器はハープーン艦対艦ミサイルの4連装発射筒2基を搭載していました。対潜兵器としては、アスロック対潜ミサイルと324mm3連装短魚雷発射管を装備していました。

航空機

艦載ヘリコプターとしては、SH-2シー・スプライトLAMPS Mk.Iを搭載し、格納庫は2機分が用意されていました。台湾海軍では、SH-60B シーホークLAMPS Mk.IIIを基にしたS-70C(M)サンダーホークへ変更されました。

運用

アメリカ海軍では、1998年から1999年にかけて運用を終了しました。その後、ギリシャ海軍やオーストラリア海軍が導入を検討しましたが、費用対効果の問題などで断念しました。最終的に、中華民国（台湾）に売却され、基隆級駆逐艦として再就役しました。

台湾海軍では、8億ドルをかけて再就役および改修が行われ、2005年から2006年にかけて4隻全艦が引き渡されました。SM-2ブロックIIIA艦対空ミサイルやハープーン・ブロックII対艦ミサイルも同時に引き渡され、防空能力が強化されました。ただし、アスロック対潜ミサイルの運用能力は削除されています。

キッド級ミサイル[[駆逐艦]]は、その特異な経緯と高い防空能力から、アメリカ海軍のみならず、台湾海軍においても重要な役割を果たした艦級と言えるでしょう。

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