ブルドッグ・ブラワー

ディック・"ザ・ブルドッグ"・ブラワー：狂犬ヒール、その生涯

ディック・"ザ・ブルドッグ"・ブラワー（本名：リチャード・グランド）は、1933年9月17日にデラウェア州ウィルミントンで生まれ、1997年9月15日に63歳でこの世を去ったプロレスラーです。

怪童誕生からプロレスラーへ

5歳で20キロの丸太を担いだという逸話が残るブラワーは、幼少の頃からその並外れた力で知られていました。学生時代はウェイトリフティングとレスリングに打ち込み、肉体を鍛え上げます。カイロプラクティックの学校を中退後、1958年にプロレスラーとしてのキャリアをスタートさせました。

北米を席巻したヒール

プロレスラー転向後、ブラワーは「デラウェア・デストロイヤー」の異名を持つヒールとして、カルガリーやトロントなど、カナダの主要テリトリーで活躍しました。その狂犬のようなファイトスタイルは観客を熱狂させ、憎悪を掻き立てました。

1961年にはカルガリーでマイティ・ウルススことジェス・オルテガと激しい抗争を繰り広げました。1963年2月28日には、トロントでジョニー・バレンタインとのタッグで、ブルーノ・サンマルチノ&ホイッパー・ビリー・ワトソンからNWAインターナショナル・タッグ王座を奪取しました。1964年にはバンクーバーで、ジン・キニスキー、ドン・レオ・ジョナサン、エンリケ・トーレス、ベアキャット・ライト、キンジ渋谷といった強豪レスラーたちと対戦しています。

1960年代中盤からはWWWF（現WWE）にも参戦し、1966年11月7日にはマディソン・スクエア・ガーデンで、ブルーノ・サンマルチノの持つWWWF世界ヘビー級王座に挑戦しました。その後もフィラデルフィアやピッツバーグでサンマルチノに再三挑戦したほか、エドワード・カーペンティアやボボ・ブラジルといった名レスラーたちとも対戦しています。1968年1月には、グレート東郷のブッキングで国際プロレスに初来日し、ルー・テーズ、ダニー・ホッジ、ワルドー・フォン・エリック、ハンス・シュミットらと対戦しました。

その後も北米を主戦場に、NWF（ナショナル・レスリング・フェデレーション）では1969年から1970年にかけて、ジョニー・パワーズやアーニー・ラッドと北米ヘビー級王座を巡る抗争を展開しました。NWFに参戦していたザ・シークとも、トロントやクリーブランドなどで血みどろの戦いを繰り広げています。WWWFへの出場も続け、1971年には新王者ペドロ・モラレスにも東部各地で挑戦しています。

1972年2月には、エース格としてハーリー・レイスらと共に日本プロレスに参戦し、2月29日に大田区体育館でジャイアント馬場のインターナショナル・ヘビー級王座に挑みました。1970年代前半には、南半球にも遠征し、オーストラリアではスパイロス・アリオン、ニュージーランドではジョン・ダ・シルバとタイトルを争っています。

IWA参戦、そしてWWFへ

1975年には、エディ・アインホーンとNWFの残党がミル・マスカラスを世界王者として旗揚げしたIWA（インターナショナル・レスリング・アソシエーション）に参戦し、エースのマスカラスやNWF時代の旧敵ラッド、サンダーボルト・パターソン、マイティ・イゴール、ディノ・ブラボーらと激しい抗争を繰り広げました。IWA崩壊後は、キャプテン・ルー・アルバーノをマネージャーにWWWF/WWFに再登場し、1979年4月30日のMSG定期戦ではボブ・バックランドのWWFヘビー級王座に挑戦しました。

1980年には、カルロス・コロンが主宰するプエルトリコのWWC（ワールド・レスリング・カウンシル）にて、4月14日にルーク・グラハムのパートナーとしてWWC北米タッグ王座を獲得しました。WWFには1981年にも登場し、10月4日にイースト・ラザフォードにて、ラリー・シャープと組んでリック・マーテル&トニー・ガレアのWWFタッグ王座に挑戦。1983年10月には、デトロイトで行われたNWAアメリカン・タッグ王座争奪トーナメントにてロディ・パイパーとのコンビで優勝し、チャンピオン・チームとして認定されました。

引退と晩年

1988年に現役を引退。晩年は糖尿病との闘病を続け、1997年9月15日、股関節手術後の合併症により死去しました。63歳でした。

逸話

全盛期の1960年代には、ターンバックルのクッションを外し、露出させた金具に相手の頭を打ちつけようとして失敗し、自らの後頭部を金具に引っ掛けて頭蓋骨が見えるほどの重傷を負ったにもかかわらず、そのまま試合を続け、数日後にはリングに上がったという逸話が残っています。

得意技

アバランシュ・ホールド
エルボー・ドロップ
パンチ攻撃
噛みつき、かきむしり、凶器など反則攻撃全般

タイトル歴

数々のタイトルを獲得し、その実績をリングに刻みました。

NWF北米ヘビー級王座：3回
NWAインターナショナル・タッグ王座（トロント版）：5回
NWA豪亜ヘビー級王座：1回
NWA英連邦ヘビー級王座（ニュージーランド版）：1回
WWC北米タッグ王座：1回
NWAアメリカン・タッグ王座：1回
* IWA北米ヘビー級王座：1回

ディック・"ザ・ブルドッグ"・ブラワーは、その狂犬のようなファイトスタイルと数々の実績で、プロレス史に名を刻んだ名レスラーです。

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