ポントス・カスピ海草原

ポントス・カスピ海草原

ポントス・カスピ海草原は、東ヨーロッパ南部から中央ユーラシア北西部にかけて広がる広大な草原地帯です。具体的には、黒海の北岸からカスピ海の北岸にかけて広がり、東はカザフステップへと繋がっています。この地域はユーラシア・ステップの一部を構成しています。

地理と生態

ポントス・カスピ海草原の面積は約994,000平方キロメートルに及びます。その範囲は、ブルガリア北東部のドブルジャから、ルーマニア南東部、モルドバ南部、ウクライナ、ロシアを経て、カザフスタン北西部からウラル山脈まで広がっています。

北側は東ヨーロッパの森林草原に接し、南側はクリミア半島とコーカサス山脈西部に広がる「クリミア亜地中海性森林群」が境界となっています。草原はロシアのダゲスタン地方のカスピ海西岸まで達していますが、カスピ海の北西岸・北岸には乾燥したカスピ海低地砂漠が広がっています。東側はカザフ草原が隣接しています。

この草原は、かつて中生代から新生代にかけて存在したツルガイ海（パラテチス海の一部）の痕跡であり、ウラル山脈の南と東に広がり、現在の西シベリア平原の大部分を覆っていました。

歴史

ポントス・カスピ海草原は、ウマが最初に家畜化された場所の一つと考えられています。また、クルガン仮説によれば、この地域はインド・ヨーロッパ語族の起源地である可能性が指摘されています。

古来より、キンメリア人、スキタイ、テュルク系民族、モンゴル系民族など、数多くの騎馬民族がこの地で興隆しました。

穀倉地帯として

現在、ポントス・カスピ海草原は肥沃なチェルノーゼム（黒土）型の土壌に恵まれ、世界有数の穀倉地帯となっています。

先史時代の文化

この地域では、以下のような先史時代の文化が栄えました。

線帯文土器文化 (紀元前5500年～紀元前4500年)
ククテニ文化 (紀元前5300年～紀元前2600年)
フヴァリンスク文化 (紀元前5000年～紀元前3500年)
スレドニ・ストグ文化 (紀元前4500年～紀元前3500年)
クラ・アラクセス文化 (紀元前4000年～紀元前2000年)
マイコープ文化 (紀元前3700年～紀元前3000年)
ヤムナ文化 (紀元前3500年～紀元前2300年)
横穴墓文化 (紀元前3000年～紀元前2200年)
スルブナヤ文化 (紀元前1600年～紀元前1200年)
コバン文化 (紀元前1100年～紀元前400年)
ノヴォチェルカッスク文化 (紀元前900～紀元前650年)

歴史的に現れた民族と国

ポントス・カスピ海草原には、以下のような民族や国家が歴史的に登場しました。

キンメリア人 (紀元前12世紀～紀元前7世紀)
ダキア人 (紀元前11世紀～紀元前3世紀)
スキタイ人 (紀元前8世紀～紀元前4世紀)
サルマティア人 (紀元前5世紀～紀元後5世紀)
東ゴート族 (3世紀～6世紀)
フン族 (4世紀～6世紀)
ブルガール人（オノグル）(4世紀～7世紀)
アラン人 (5世紀～11世紀)
アヴァール人 (6世紀～8世紀)
突厥 (6世紀～8世紀)
サビル人 (6世紀～8世紀)
ハザール (6世紀～11世紀)
ペチェネグ (8世紀～11世紀)
キプチャクとクマン人 (11世紀～13世紀)
ジョチ・ウルス (13世紀～15世紀)
コサック、カルムイク人、クリミア・ハン国、ヴォルガ・タタール人、ノガイ族、その他のテュルク系の国と部族 (15世紀～18世紀)
ロシア帝国 (18世紀～20世紀)
ソビエト連邦 (20世紀)
ロシア連邦 (20世紀～21世紀)

もう一度検索