劉輿

劉輿（りゅう よ）

劉輿（265年頃 - 311年頃）は、中国西晋時代の人物です。字は慶孫（けいそん）。光禄大夫であった劉蕃（りゅうはん）を父に持ち、弟には同じく名を馳せた劉琨（りゅうこん）がいます。母の兄弟には尚書の郭奕（かくえき）がおり、漢王室につながる宗族の家系でした。

生涯

劉輿は若くして俊秀・聡慧であると評価され、非凡な才能と器量を持っていました。弟の劉琨と共にその名は洛陽に轟き、人々は彼らを「洛中奕奕、慶孫越石（洛陽において名声高く輝いているのは、慶孫（劉輿の字）と越石（劉琨の字）である）」と称えました。

若い頃、劉輿と劉琨は武帝の外戚であった王愷（おうがい）に恨まれ、生き埋めにされそうになったことがありました。しかし、太僕の石崇（せきすう）が彼らと親交があったため、異変を察知して夜に王愷の家を訪れ、劉輿らを救出しました。石崇は彼らを叱責しましたが、劉輿は深く感謝したと伝えられています。

その後、劉輿は招聘を受け、丞相府尚書郎に任じられます。

時期は不明ですが、胡毋輔之（こぶほし）、王澄（おうちょう）、傅暢（ふちょう）、荀邃（じゅんすい）、裴遐（はいか）らと共に、河南功曹の甄述（しんじゅつ）と洛陽県令の曹攄（そうちょ）の解任を求めて、幾度も働きかけました。

291年、恵帝の皇后である賈南風（かなんふう）が国政を掌握するため、汝南王の司馬亮（しばりょう）と録尚書事の衛瓘（えいかん）を排除しました。劉輿は劉琨と共に賈謐（かひつ）の傘下に入り、文学政治団体『金谷二十四友』の一人に数えられました。

300年、趙王の司馬倫（しばりん）が賈氏一派を誅殺して政権を掌握すると、側近の孫秀（そんしゅう）が専横を極めました。劉輿兄弟はかねてより孫秀を侮っていたため、孫秀は彼らを免官としました。しかし、劉輿の妹が司馬倫の世子である司馬荂（しばふ）に嫁いだことで、劉輿は再び重用され、散騎侍郎に任じられました。

301年、三王（斉王の司馬冏（しばけい）、成都王の司馬穎（しばえい）、河間王の司馬顒（しばぎょう））が司馬倫討伐を掲げて決起すると、弟の劉琨は司馬倫の軍を率いて迎撃しましたが、大敗を喫しました。

司馬倫が殺害された後、斉王の司馬冏が執政を開始すると、劉輿の一族はその人望から特別に許され、中書侍郎に任じられました。

305年、東海王の司馬越（しばえつ）が河間王の司馬顒と中領軍の張方（ちょうほう）討伐を掲げて決起すると、劉輿も司馬越に加担し、潁川郡太守に任じられました。司馬顒は劉喬（りゅうきょう）に司馬虓（しばこう）を討つよう命じ、劉輿兄弟の罪を訴えました。

劉喬が司馬虓を攻撃すると、司馬虓は敗れて河北に逃走し、劉輿もこれに従いました。

306年、司馬顒が敗れて乱が鎮まると、司馬虓は鄴に出鎮し、劉輿を征虜将軍・魏郡太守に任じ、長史としました。

成都王の司馬穎が頓丘郡太守の馮嵩（ふうすう）に捕らえられ、鄴に送られると、劉輿は司馬虓の喪を秘匿し、司馬穎に自殺を命じて殺害しました。

司馬虓の死後、司馬越は劉輿を朝廷に招聘しましたが、重用しませんでした。しかし、劉輿は密かに兵簿や倉庫を観察し、軍事に関する知識を蓄えました。そして、司馬越の前で計略を述べると、その才能を認められ、左長史に任じられました。

劉輿は司馬越の信任を得て、その進言は全て記録されるようになりました。彼の下には多くの賓客が集まり、遠近から学ぶ者が数千人に及びました。劉輿は彼らに知識を教え、誰もが彼に従いました。その議論は流暢で誠意があり、人々は劉輿の才能を称賛しました。

劉輿は弟の劉琨に并州を守らせることを司馬越に進言し、劉琨は并州刺史に任じられました。

309年、懐帝が側近を政治の中枢に関わらせようとすると、司馬越は不安を抱き、劉輿に相談しました。劉輿は潘滔（はんとう）と共に側近を誅殺するよう勧め、司馬越はこれに従いました。

王延（おうえん）の愛妾であった荊氏（けいし）を娶ろうとした際、太傅従事中郎の王俊（おうしゅん）に奪われましたが、司馬越は劉輿を罪に問いませんでした。

永嘉の乱が起こる前に、劉輿は病に倒れ、47歳で亡くなりました。驃騎将軍を追贈され、定襄侯に封じられ、貞と諡されました。子の劉演（りゅうえん）が後を継ぎました。

参考文献

『晋書』 - 巻62 列伝第32
『資治通鑑』 - 巻82 - 巻87

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