山村良候

山村良候の生涯



山村良候(やまむら よしとき)は、天文14年(1545年)に山村良利の子として生まれました。戦国時代から安土桃山時代にかけての武将であり、木曾氏の重臣として活躍しました。後に徳川家康にその能力を認められ、木曾代官に任命された人物です。

武田氏との関わり


弘治5年(1555年)、木曾義康が甲斐国の武田信玄に降伏すると、父・良利は信玄に重用されました。元亀3年(1572年)9月、武田氏の西上作戦において、木曾義昌は長峰峠を越えて飛騨へ侵攻し、日和田口から三木自綱を破りました。この時、良利・良候親子は檜田次郎左衛門を討ち取る武功を挙げ、信玄から感状と美濃国恵那郡安弘見郷の3百貫、さらに千旦林村と茄子川村の3百貫を与えられました。この功績は、山村氏の武勇を示すものとして、歴史に刻まれています。

小牧・長久手の戦いと妻籠城の戦い


武田家滅亡後、天正12年(1584年)3月、徳川家康と羽柴秀吉の間で小牧・長久手の戦いが勃発すると、木曾義昌は当初家康に味方しましたが、後に秀吉に寝返りました。同年9月、義昌は妻籠城に良侯の嫡男・山村良勝を配し、300騎を付けて守らせました。これに対し、徳川方の菅沼定利、保科正直、諏訪頼忠らが清内路峠を越えて攻め寄せ、妻籠城の対岸にある愛宕山を占拠して攻撃を開始しました。しかし、良勝は巧みな指揮で大軍を破り、徳川方を撃退することに成功しました(妻籠城の戦い)。この戦いは、良勝の武将としての才能を示す出来事となりました。

徳川家康への帰属と木曾代官就任


秀吉と家康の講和後、木曾義昌は家康の傘下に入り、天正18年(1590年)の家康の関東移封に伴い、良侯は嫡男・良勝と共に下総の網戸(阿知戸)へ移りました。義昌の没後、良侯は義昌の子である木曾義利に仕えましたが、慶長5年(1600年)に義利が不行状により改易されると、良侯は剃髪して道祐と号し、木曽に戻って三留野村の田屋に住みました。木曾氏の領地は太閤蔵入地となり、尾張犬山城主の石川貞清(備前守光吉)が木曾代官を兼務していました。石川貞清は村ごとに下代官を命じて支配を行い、良侯もその一人となりました。

関ヶ原の戦いと木曾谷奪還


慶長5年(1600年)の関ヶ原の戦いを前に、家康はかつての木曾氏の重臣であった良勝、千村良重、馬場昌次を召し出し、木曾氏の旧領を与えることを約束し、木曽谷を西軍の石川貞清から奪還するよう命じました。東軍に属した良勝は、徳川秀忠中山道進軍に先んじて進軍するなかで、塩尻で松本城主の石川康長のもとにいた次男の山村一成、甲斐の浅野長政のもとにいた三男の山村三得と合流しました。良勝と千村良重が贄川の砦を攻めようとした時、石川貞清の家臣であった千村次郎右衛門、原図書助、三尾将監長次が内応したため、砦を容易に突破し木曽谷を奪還しました。



木曽にいた良侯(道祐)は、家康に通じることを恐れた石川貞清によって犬山城に留置されていましたが、木曾衆が挙兵した報を聞き、犬山城を脱出して中津川で嫡男の良勝と再会しました。関ヶ原の戦いで勝利した家康は、その2週間後の10月2日に良侯を木曾代官に任命しました。家康は木曾衆の山村氏、千村氏、三尾氏、原氏に木曾谷1万石を与えようとしましたが、良侯は木曽には中山道が通り、良質な木材が採れる土地であるため、私たちが領有すべきではないと進言しました。この良侯の廉直な姿勢に感動した家康は、木曾衆に6,200石を加増し、木曽谷の代わりに美濃国内に知行地を与えました。その結果、木曾衆の知行地の合計は16,200石8斗3升となりました。良侯は1,300石、嫡男の良勝は4,600石、次男の三得は700石、三男の一成は500石を得ました。

死去と子孫


慶長7年(1602年)11月20日、山村良候は59歳でその生涯を閉じました。嫡男の良勝は江戸幕府旗本となった後、尾張藩の重臣となり、子孫は代々木曽代官と福島関所の関守を任されました。次男の三得と三男の一成は美濃可児郡の久々利村に屋敷を与えられ、久々利九人衆の一員として尾張藩に仕えました。四男は盲人であったため、京都で鍼灸を学び、検校に叙せられて山室検校と称しました。三人の娘は、それぞれ千村良重、千村重照、千村重次に嫁ぎました。

山村良候は、その生涯を通じて武将としての勇猛さだけでなく、領民を思う誠実な人柄を示しました。その功績と人柄は、後世まで語り継がれています。

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