慕容汗

慕容汗（ぼよう かん、生没年不詳）は、五胡十六国時代の前燕に仕えた人物です。昌黎郡棘城県の出身で、鮮卑慕容部の大人である慕容廆の子として生まれました。

生涯

慕容汗は、同じく鮮卑慕容部の大人である慕容皝に仕え、寧遠将軍に任じられました。彼の軍事的な才能は、当時の混乱した情勢の中で重要な役割を果たしました。

咸和8年（333年）10月、征虜将軍慕容仁と広武将軍慕容昭が慕容皝に対して反乱を起こしました。慕容昭は処刑されましたが、慕容仁は平郭で自立しました。慕容皝は、広武将軍高詡、建武将軍慕容幼、慕容稚、広威将軍慕容軍、そして寧遠将軍慕容汗、司馬冬寿に5千の兵を与え、慕容仁討伐に向かわせました。しかし、汶城の北での戦いで慕容仁に大敗を喫しました。その後、遼東城へ向かおうとしましたが、慕容仁に呼応した者がいたため入城できず、軍諮祭酒の封奕とともに帰還しました。

咸和9年（334年）2月、柳城が段部の段蘭と慕容翰に攻められました。慕容皝は慕容汗と司馬封奕らを救援に派遣しました。慕容皝は慕容汗に対し、速戦を戒めましたが、慕容汗は千余騎を前鋒として直進させました。封奕はこれを止めましたが、慕容汗は従いませんでした。牛尾谷で段蘭らと遭遇し、慕容汗の兵は大半が死ぬという大敗を喫しましたが、封奕が戦列を整えて力戦したため、辛うじて窮地を脱しました。

咸康3年（337年）11月、慕容皝は揚烈将軍宋回を遣わし、後趙への称藩と段部討伐を要請しました。慕容皝自身も兵を挙げて合流することを約束し、慕容汗を人質として後趙に送りました。後趙の天王石虎は大いに喜び、答礼の書面と共に慕容汗を本国へ帰還させ、段部討伐を約束しました。

しかし、これ以後の慕容汗の事績は、史書には記録されていません。

家系

慕容汗の家系は以下の通りです。

父: 慕容廆
兄弟:
慕容翰 - 庶長子
慕容皝 - 嫡長子で三男
慕容仁
慕容昭
慕容幼
慕容稚
慕容軍
慕容評
慕容彪
姉妹:
慕容氏 - 代王拓跋什翼犍にとついだ

参考文献

『晋書』巻109
『資治通鑑』巻95
『十六国春秋』巻24、巻30

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