慕容軍

慕容軍（ぼよう ぐん）

慕容軍は、五胡十六国時代の前燕に仕えた人物で、生没年は不明です。昌黎郡棘城県の出身で、鮮卑慕容部の大人である慕容廆の子として生まれました。

生涯

慕容廆の時代における慕容軍の動向は明らかではありません。咸和8年（333年）5月、慕容廆が亡くなり、慕容皝が後を継ぐと、慕容軍は広威将軍に任じられました。同年11月、慕容皝の同母弟である慕容仁が反旗を翻し平郭で自立すると、慕容軍は広武将軍高詡、建武将軍慕容幼、慕容稚、寧遠将軍慕容汗、司馬冬寿らと共に5千の兵を率いて討伐に向かいました。しかし、討伐軍は汶城の北で慕容仁に大敗し、慕容軍は慕容幼、慕容稚らと共に捕らわれの身となりました。その後、慕容仁に仕え、引き続き広威将軍に任じられました。

咸康2年（336年）1月、慕容皝は慕容仁征伐の兵を起こし、昌黎から氷上を渡って平郭へ進撃しました。平郭城から7里まで迫った所で慕容仁は敵の襲来を知り、慌てて迎え撃つために軍を城の西北に布陣させました。この時、慕容軍は配下を率いて慕容仁に反旗を翻し、慕容皝側に寝返ったため、慕容仁軍は大いに動揺しました。慕容皝はこの機を逃さず攻撃し、慕容仁軍を大破しました。慕容仁は捕らえられて処刑されましたが、慕容軍は罪を免じられ、引き続き広威将軍を任されました。

咸康5年（339年）4月、前軍師慕容評、折衝将軍慕輿根、盪寇将軍慕輿泥と共に後趙領の遼西へ侵攻し、千家余りを捕獲して軍を帰還させました。帰還の途中、後趙の鎮遠将軍石成、積弩将軍呼延晃、建威将軍張支らに追撃を受けましたが、慕容軍はこれらを全て返り討ちにし、呼延晃と張支の首級を挙げました。

建元2年（344年）2月、慕容皝が宇文部討伐のために親征を行うと、慕容軍は度遼将軍慕容恪、平狄将軍慕容覇（後の慕容垂）、折衝将軍慕輿根らと共に別動隊を率いて三道に分かれて進軍しました。宇文部の大人宇文逸豆帰は南羅大渉夜干に精鋭を与えて迎撃を命じましたが、前燕軍はこれを返り討ちにし、渉夜干を戦死させました。これにより宇文逸豆帰は軍を放棄して漠北へ逃走し、宇文部の勢力は散亡しました。この戦勝により前燕は領土を千里余り広げました。

永和2年（346年）1月、世子慕容儁の指揮の下、折衝将軍慕輿根、度遼将軍慕容恪と共に1万7千の兵を率いて夫余討伐に向かいました。慕容軍は諸将と共に矢石に身を晒しながら大胆に進撃し、一挙に本拠地を攻略すると、玄王と部落の民5万余りを捕虜として連行しました。

永和4年（348年）11月、慕容皝が亡くなり、慕容儁が即位しました。

永和8年（352年）4月、輔弼将軍慕容評と中尉侯龕が精鋭騎兵1万を引き連れて冉魏の都である鄴へ侵攻しましたが、守将の蒋幹はこれを阻みました。5月、慕容儁の命により、慕容軍は殿中将軍慕輿根、右司馬皇甫真らと共に騎兵歩兵併せて2万を率いて加勢に向かい、共に鄴を攻めました。8月、前燕軍は鄴を陥落させました。

その後、撫軍将軍に任じられました。

元璽2年（353年）12月、衛将軍慕容恪、左将軍慕容彪らと共に幾度も上表し、給事黄門侍郎慕容覇には世に名高い才能があるとして、大任を委ねるよう勧めました。慕容儁はこれを受け入れ、慕容覇を使持節・安東将軍・北冀州刺史に昇進させ、常山を鎮守させました。

元璽3年（354年）4月、襄陽王に封じられました。

その後の事績は明らかになっていません。

参考文献

『晋書』巻109、巻110
『資治通鑑』巻95 - 巻99
* 『十六国春秋』前燕録

もう一度検索