日本の公衆電話

日本の公衆電話

日本の公衆電話は、かつては社会インフラとして重要な役割を果たしていましたが、携帯電話の普及によりその数は減少しています。しかし、災害時には重要な通信手段として再び注目されています。

概要

公衆電話は、設置された時期や場所によって様々な種類が存在します。21世紀に入り、携帯電話やスマートフォンの普及に伴い、通話時間が減少したため、公衆電話の設置数は減少傾向にあります。市役所や病院などの公共施設でもその数は減っていますが、災害時には通信がしやすいという特性から、非常時の連絡インフラとして機能しています。

台数

2021年時点で、NTT東日本とNTT西日本が設置を義務付けられている第一種公衆電話は合計10万9000台、両社が任意で展開している第二種公衆電話を含めると15万1000台あります。携帯電話の普及により、公衆電話の利用回数は2002年度の11億8000万回から2019年度には4000万回へと激減しており、両社の事業収支は赤字となっています。

運営事業者

主にNTT東日本・西日本、NTTコミュニケーションズ、NTTドコモなどが運営しています。設置方法は事業者によって異なります。かつてはKDDI、ソフトバンク、BBモバイルなども運営していました。

設置場所

公衆電話は、全ての国民に対して公平な利用環境を提供するユニバーサルサービスとして位置づけられています。そのため、市街地には概ね1km四方に1台、それ以外の地域には概ね2km四方に1台設置することが省令で定められています。2021年1月時点では全国に約11万台が設置されていましたが、2022年から2027年の5年間で約4万台が撤去され、最終的には3万台程度になる見込みです。この他に、企業などが独自に設置している第二種公衆電話が約4万台あります。

公衆電話は、主に鉄道駅構内、市街地の電話ボックス、市役所、空港、病院などの公共施設に設置されています。かつては電話機の盗難防止のため設置場所は公開されていませんでしたが、2012年にNTTが公式サイトで公開しました。これは、東日本大震災時に公衆電話の重要性が再認識されたことが背景にあります。情報通信審議会の委員会も、公衆電話の設置情報公開を求める報告書をまとめています。

観光地や一部の地域では、地域住民が独自に調査した設置場所を掲載した地図や表が存在します。住宅地図には掲載されていない場合もありますが、一部の住宅地図メーカーでは掲載・販売しています。

電話番号

メンテナンスの都合上、着信可能な公衆電話が多いですが、街頭に設置されているものは悪用防止のため電話番号は公開されていません。また、呼び出し音が鳴らないものがほとんどです。ただし、警察本部や消防本部の通信指令室は、通報後の回線保持と通報地点特定を目的に呼び返しが可能です。

国内のNTTの公衆電話から発呼した場合、ナンバーディスプレイ対応端末には「公衆電話」または「C」と表示され、公衆電話自体の電話番号は表示されません。「非通知」とは別の設定のため、「番号非通知は拒否」するが「公衆電話からの着信は拒否しない」という設定が可能です。

公衆電話から発信した場合でも、プリペイドカード（オートダイヤルカード）や新幹線公衆電話からの発信は「通知不可能」となる場合があります。

料金等支払手段

公衆電話の利用料金の支払手段は、硬貨とプリペイドカード（テレホンカード）です。100円硬貨を使用した場合、釣り銭は出ないため、長年問題視されてきました。テレホンカードはこの問題を解決する手段として採用されました。公衆電話は10円単位の契約になるため、消費者にとっては内税または非課税取引となりますが、電話事業者の消費税課税対象となるため、通話時間を短くして料金を調整しています。

事業状況

NTTグループが管理する公衆電話は、1984年に設置台数が最大となりました。1999年までに、硬貨専用機からテレホンカード対応機への置き換えが完了しています。

NTT東日本・西日本が管理する公衆電話は、1993年に通話料金が大幅に値上げされたことや、1990年代後半からの携帯電話やPHSの普及により利用者が減少し、1995年度から損失を計上しています。

現在、NTT東日本・西日本が管理する公衆電話は、第一種公衆電話と第二種公衆電話に区分されています。2021年、総務省は公衆電話の設置ルールを見直し、設置台数を削減した上で、避難所やコンビニエンスストアなどに非常時用公衆電話を増やす方向で調整しています。

設置に関する規制

NTT東日本・西日本は、電気通信事業法に規定される基礎的電気通信役務を提供する電気通信事業者であり、公衆電話は電気通信事業法施行規則に定める基準に則って設置されています。市街地では概ね1km四方に1台、それ以外の地域では概ね2km四方に1台設置することが義務付けられています。第一種公衆電話は、災害時などの緊急優先通話や、加入電話・携帯電話が利用できない場合に使用するため、市街地で約500m、郊外で約1km四方に1台設置されています。

第二種公衆電話は、電気通信事業法令上には定義されておらず、NTT社内の呼称で第一種公衆電話以外の公衆電話を指します。法令上の規制はなく、高頻度の利用が見込まれる場所に設置されます。必ずしも公衆が出入りできる場所に設置されるとは限りません。

実情および会計検査院からの指摘

NTTが設置する第一種公衆電話が設置基準を満たしているかについては疑義があります。新興住宅地や都市再開発地域などには公衆電話が全く存在しない地域があることが指摘されています。2006年の会計検査院の報告では、NTTが東日本で64.2%・西日本で65.4%の地域に公衆電話を設置しておらず、大分県に至っては県土の87.1%に公衆電話がないと指摘しています。

災害時には、公衆電話は災害時優先電話として通話が可能です。携帯電話や一般電話が回線の輻輳で使用不能になる恐れがあるため、公衆電話の使用が推奨されています。災害時の連絡手段確保のため、公衆電話の未設置地域をなくすべきという指摘もあります。

災害対策

災害で停電が発生した場合、公衆電話の機種によって対応が異なりますが、災害時には公衆電話の通話が無料化される場合があります。これは、阪神・淡路大震災で多くの公衆電話が使用不能になったことがきっかけです。災害救助法が適用される規模の災害で、広域停電が発生している地域で無料化されます。

無料化措置時は、以下の通話先が無料になります。

日本国内の固定電話・携帯電話・IP電話
災害用伝言ダイヤル（171）
ナビダイヤル番号（0570で始まる番号）
時報（117）・天気予報（177）

ただし、ピンク電話は無料化措置の対象外となります。また、無料化措置中はテレドーム番号（0180で始まる番号）へはかけられません。

2011年の東日本大震災で初めて公衆電話の無料化措置が発動されました。2016年の熊本地震でも熊本県で実施されています。

公衆電話機等の種類

アナログ公衆電話

緑色の外観で、10円・100円硬貨とテレホンカード併用のものと、テレホンカード専用のものがあります。最新機種として、2016年よりMC-D8の普及が進められています。デジタル公衆電話を改造した電話機も登場しています。一部を除き国際電話は使えません。

デジタル公衆電話

グレーまたは緑色の外観で、ISDN回線を利用しています。10円・100円硬貨とテレホンカード併用のものと、テレホンカード専用のものがあります。一部は国際電話に対応しています。グレーの電話機には、PCやPDA接続用のコネクタが用意されています。2024年1月にISDN回線が廃止されるため、順次置き換えが進められています。

列車公衆電話

鉄道線路にLCXや無線基地局を併設し、車内設置の公衆電話機と無線で通信を行う公衆電話です。携帯電話の普及により利用頻度が減少し、2021年6月30日に全ての新幹線でのサービスが終了しました。

衛星公衆電話

衛星電話（ワイドスター）システムを利用する公衆電話で、発信・着信とも可能です。クレジットカードでの支払いのみに対応しています。山小屋や離島などに設置されています。2011年6月1日から簡易公衆電話サービスを開始し、Edyによる支払いも可能になりました。

その他

秋田・山形新幹線や在来線、高速バスでは、携帯電話（自動車電話）のmovaサービスを利用した発信専用の公衆電話がありましたが、2012年3月31日にサービス終了しました。

ソフトバンクテレコム管轄の九州新幹線内設置の公衆電話もありましたが、2011年1月よりNTTコミュニケーションズ提供に切り替えられました。

KDDIの公衆電話は、旧KDDが設置した国際電話専用の公衆電話機で、クレジットカードや専用ICカードで支払いが可能でした。

停止されたサービス

NTT系の船舶公衆電話、航空機公衆電話、列車公衆電話、ICカード公衆電話、新電電系の日本テレコムの公衆電話、日本高速通信の公衆電話、国際電信電話の公衆電話、その他McBBフォン、Mosivoなどのサービスが停止しました。

歴史

明治期から終戦直後まで

1890年12月に東京と横浜で電話業務が開始され、電話局内に公衆電話が設置されました。1900年には新橋駅と上野駅に設置され、電話ボックス型の公衆電話も登場しました。当初は交換手に接続を依頼し、硬貨を投入する方式でしたが、1925年に公衆電話と改称され、ダイヤル自動方式が採用されました。太平洋戦争末期には都市が空襲で壊滅的な被害を受け、公衆電話の数も激減しました。

赤電話の登場

1951年に電電公社が商店などに公衆電話の取り扱いを委託するようになり、赤電話が登場しました。当初は料金を委託者と利用者の間で精算する必要がありましたが、トラブルが多発したため、硬貨投入式の赤電話が開発されました。

青電話・黄電話の登場

1953年に10円硬貨の流通が進んだため、硬貨投入方式の公衆電話として青電話が登場しました。青電話は電電公社が直接経営するもので、電話ボックス内に設置されました。1972年には100円硬貨にも対応した黄電話が登場しました。

テレホンカード

1982年にテレホンカード式公衆電話が設置されました。1999年にはテレホンカード式への置き換えが完了し、ICカード対応公衆電話も設置されましたが、2006年に廃止されました。

年表

公衆電話に関する主な出来事をまとめました。

公衆電話の施設数

公衆電話の設置数の推移を年表形式でまとめました。

参考文献

東日本電信電話・西日本電信電話『第一種公衆電話の必要性と収支改善の取り組みに関する参考資料』

脚注

注釈

出典

関連項目

委託公衆電話
特殊簡易公衆電話
特設公衆電話
自殺の名所
クロネコファックス

外部リンク

NTT東日本：公衆電話インフォメーション
NTT西日本：公衆電話インフォメーション
PayPhoneBox
公益財団法人 日本公衆電話会
みかかの鉄人/写真
公衆電話博物館

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