杉元相

杉元相（すぎ もとすけ）

杉元相は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将です。初名は隆相（たかすけ）。通称は次郎左衛門尉。豊前国の名族・杉氏の一門で周防国を本拠とする「杉次郎左衛門家」に生まれ、大内氏に仕え、防長経略以降は毛利氏に従いました。父は杉隆宣、子に杉元宣がいます。

生涯

大内氏家臣時代

大永2年（1522年）、大内氏家臣である杉隆宣の子として誕生。主君・大内義隆から偏諱を受け、「隆相」と名乗りました。

天文9年（1540年）の吉田郡山城の戦いでは、大内氏家臣として毛利元就の救援に向かい、小早川興景と共に吉田の坂・豊島に駐屯し尼子軍の攻撃に備えました。同年9月26日の池の内の戦いでは、小早川興景と共に尼子軍と戦い、吉田郡山城から出撃した毛利軍と共に挟撃して湯原宗綱を討ち取る戦功を挙げました。

天文10年（1541年）3月から5月初にかけて、陶隆房（後の陶晴賢）、内藤興盛、毛利元就らと共に安芸武田氏の佐東銀山城攻めに参加しています。

天文12年（1543年）5月7日、大内義隆の出雲攻め（第一次月山富田城の戦い）に従軍した父・隆宣が撤退中に戦死したため、家督を継承しました。

天文19年（1550年）10月17日、従五位下に叙せられ、「次郎左衛門尉」を名乗ります。

天文20年（1551年）8月、陶隆房（陶晴賢）らによる大内義隆への謀反（大寧寺の変）では陶側に味方。同年9月に大友義鎮（後の大友宗麟）の弟である大友晴英（後の大内義長）が大内氏の家督を継ぐことが決定すると、陶隆房の命により大友晴英を迎えに周防国を出立し、同年12月27日に豊後国の竹多津浦に着岸しました。

天文21年（1552年）1月5日、大友晴英を迎えに来た一行は大友氏の本拠である府内へ入り、同年1月16日には隆相が剣役として大友晴英に従って大友氏館に上りました。

天文24年（1555年）10月1日の厳島の戦いには従軍しておらず、同月から毛利氏による防長経略が始まっても大内義長に仕え、他の大内氏重臣と共に知行宛行状に署名していることが確認できます。また、この時期は「美作守」を称していました。

弘治2年（1556年）には、豊前国下毛郡中殿名1町9段の地と名田職を成恒輔家に対し与えたり、被官である大畠道忠に対して豊前国下毛郡吉水山領為末名内の下作職を安堵するなど、豊前国における権益に関与しています。また、大内氏から離反した秋月氏の出城と考えられる筑前国の千手城と馬見城攻めで多数の死傷者を出した豊後萩原氏の萩原兵部丞に対し感状を発給したり、杉重輔旧領の豊前国田川郡糒庄内の地を知行宛行うなどしています。

その後、毛利氏に降伏し、毛利隆元の偏諱を賜って「元相」と改名しました。

毛利氏家臣時代

弘治3年（1557年）には周防国佐波郡大前と植松の旧領安堵に加えて、大内義長と共に自害した大内氏家臣・野上房忠が領していた周防国都濃郡の野上庄（後の徳山）と遠石庄を与えられました。これにより杉氏の所領は3000貫（3万石相当）にまで拡大。元相は本拠を野上に移し、金剛山の山麓に館を構え、城山の一ノ井手城を居城としました。

永禄5年（1562年）には、豊前国田川郡中元寺における夜戦で戦功を挙げた岸通忠（後の仲子通忠）を称賛し、感状を与えています。

永禄6年（1563年）には、内藤氏家臣・錦見与五郎（後の錦見右衛門尉）が拝領した浮米について問題が発生したため、元相が領する佐波郡大前・植松の段銭から扶助する決定がなされました。

永禄10年（1567年）には、毛利元就から伊予出陣（毛利氏の伊予出兵）と城の普請を命じられています。

永禄12年（1569年）5月の立花城の戦いでは小早川隆景の旗下に属して戦い、同年閏5月には筑前国那珂郡における合戦で奮戦した仲子通忠に感状を与えています。同年10月の大内輝弘の乱では、敗走する大内輝弘を攻撃し、自害に追い込みました。

元亀4年（1573年）には、以前より与えられていた米100俵が滞っていたため、毛利輝元から急ぎ送るよう命じられています。

天正2年（1574年）には、野上の浄福寺全伯に依頼して一ノ井手に興元寺を建立し菩提寺としました。

天正6年（1578年）に荒木村重が織田信長に反旗を翻すと、毛利輝元は荒木村重への援軍として水軍を派遣しており、村重の属城である摂津花隈城へ元相が派遣されています。

天正8年（1580年）には、嫡男・元宣と共に興元寺に段銭を寄進しています。また、佐波郡植松村の地と祠堂米を寄進しています。

また、足利義昭の警護のため、備後国鞆に赴いたこともありました。

天正13年（1585年）1月26日に病死。享年64。菩提寺の興元寺に葬られました。法名は「興元寺殿興仲元家大居士」。家督は嫡男の元宣が継ぎました。

没後

慶長4年（1599年）には毛利輝元の命を受けた佐世元嘉が杉元相・元宣父子の菩提を弔うために興元寺の寺領を安堵しました。

安政5年（1859年）には、徳山藩の祈祷所である常祷院の参道に元相父子を祀る「杉家両霊社」が建立されました。

墓所

杉元相・元宣父子の墓は興元寺境内にあり、石造りの玉垣で囲まれて保護されています。墓石はいずれも安山岩製の宝篋印塔で、近世初頭の特色を示しています。昭和51年（1976年）には、徳山市の記念物（史跡）に指定されました。

逸話

熊野神社の社殿を再建。
弟・杉元秋の子孫には、旧制第一高等学校の校長を務めた杉敏介がいます。
* 興元寺には、元相の肖像画が所蔵されています。

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