松平光則

松平光則 / 戸田光則

松平光則（まつだいら みつひさ）は、江戸時代末期の大名であり、明治時代には華族となりました。信濃松本藩の第9代（最後）の藩主であり、同藩の藩知事を務めました。戸田松平家14代当主として、その名を歴史に刻んでいます。明治維新後には戸田姓に改姓しました。

生涯

文政11年（1828年）、第8代藩主である松平光庸の次男として誕生しました。当時の藩主は先代の松平光年でした。天保13年（1842年）5月25日、前年に亡くなった養嗣子の光領（光年の実子）に代わり、光庸の嫡子となります。同年10月1日には将軍徳川家慶に拝謁し、同年10月29日には従五位下・弾正少弼に叙任されました。弘化2年（1845年）10月22日、光庸の隠居により家督を相続し、松本藩主となりました。

文久元年（1861年）の和宮降嫁の際には、中山道本山宿から下諏訪宿までの沿道警備を担当しました。文久2年（1862年）には、幕府の命令により東禅寺警衛役を任ぜられますが、藩士伊藤軍兵衛が引き起こした第二次東禅寺事件により、光則は差控となり、翌年には相模国浦賀の警備役を命じられました。この事件は、幕末の混乱期における藩の動揺を示す出来事でした。

元治元年（1864年）には、天狗党の乱鎮圧のために中山道和田峠に派兵しますが、敗退してしまいます。禁門の変が起こると、縁戚関係にあった正親町三条実愛邸に藩士を派遣し警護にあたらせました。長州征討にも幕府側として参戦しています。

王政復古後の慶応4年（1868年）1月2日に、元将軍徳川慶喜が鳥羽・伏見の戦いを起こすと、新政府は1月10日に慶喜追討令を下し、慶喜は朝敵となりました。1月27日には、松平姓を賜っていた大名家に対し「徳川慶喜反逆ニ付テハ松平之苗字ヲ称シ居候族ハ（略）速二各本姓二復」すべしとの勅命が下りました。光則は、この勅命に従い、松平姓を捨てて戸田姓に復姓しました。また、家紋の葵紋も廃止し、明治以降の戸田家では六曜紋を使用することになります。この出来事は、光則が時代の変化を敏感に察知し、迅速に対応したことを示しています。

その後、光則は官軍に参加し、長岡征討や会津征討に従軍しました。その際の戦功により、明治2年（1869年）に賞典禄3000石を賜りました。同年6月19日には版籍奉還により松本藩知事に任じられ、華族に列せられます。明治4年（1871年）7月14日の廃藩置県まで藩知事を務めました。版籍奉還の際に定められた家禄は現米で3685石であり、明治9年（1876年）の金禄公債証書発行条例に基づき、家禄と賞典禄（実額750石）の合計4435石と引き換えに、12万2104円75銭6厘の金禄公債が支給されました（華族受給者中60位）。

明治前期には、光則の住居は東京府日本橋区矢ノ倉町にありました。明治14年（1881年）には長男の康泰に家督を譲り、明治17年（1884年）の華族令により、康泰が子爵に叙せられました。明治25年（1892年）に生涯を閉じました。

栄典

1885年（明治18年）7月13日、勲五等双光旭日章を受章しました。

家族

父母
松平光庸（父）
吉野氏 - 側室（母）
妻
重 - 溝口直諒の娘
子女
戸田康泰（長男） - 生母は重
戸田氏懿（三男）
戸田光祐（四男）
嶋子 - 戸田忠恕の妻
茅子 - 松平忠興の妻
京子 - 相馬誠胤の妻
諒子 - 小笠原貞孚の妻
桂子 - 石川重之の妻

登場作品

テレビドラマ

『篤姫』（2008年、NHK大河ドラマ、演：八波一起）

参考文献

石川健次郎「明治前期における華族の銀行投資―第15国立銀行の場合―」『大阪大学経済学』第22号、大阪大学経済学部研究科、1972年、27 - 82頁。
刑部芳則『京都に残った公家たち: 華族の近代』吉川弘文館〈歴史文化ライブラリー385〉、2014年。
小田部雄次『華族 近代日本貴族の虚像と実像』中央公論新社〈中公新書1836〉、2006年。
落合弘樹『秩禄処分 明治維新と武士のリストラ』中央公論新社〈中公新書1511〉、1999年。
霞会館華族家系大成編輯委員会『昭和新修華族家系大成 別巻 華族制度資料集』霞会館、1985年。
霞会館華族家系大成編輯委員会『平成新修旧華族家系大成 下巻』霞会館、1996年。
華族大鑑刊行会『華族大鑑』日本図書センター〈日本人物誌叢書7〉、1990年。
新田完三『内閣文庫蔵諸侯年表』東京堂出版、1984年。
平凡社編『日本人名大事典』（平凡社、1990年）

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