段遼

段遼（だん りょう）

段遼（拼音：Duàn Liáo、生年不詳 - 339年）は、鮮卑段部の大人であり、初代大人である段日陸眷の孫にあたります。『魏書』では段護遼と表記されています。

生涯

即位

325年11月、当時の大人であった段牙が令支から都を移したことに、部族の民衆は大きな不満を抱いていました。段遼はこれに乗じて密かに地位を簒奪しようと企て、遷都を段牙の罪であると主張しました。同年12月、段遼は部族の民を率いて段牙を攻撃し殺害、自ら大人として立ちました。その後、東晋朝廷より幽州刺史・大単于に任じられました。段部は段務勿塵の時代以降、位号を自称し遼西の地に拠点を置き、漢人を従えて勢力を拡大しました。その勢力は日に日に強大となり、西は幽州を平らげて漁陽に接し、東は遼水にまで及ぶほどでした。統治下の胡人・漢人は3万戸を超え、騎射を行う兵は4、5万騎にも達しました。331年2月には、驃騎将軍に任じられています。

慕容部との対立

333年10月、慕容部の大人である慕容皝が庶兄の建威将軍慕容翰と不和になり、慕容翰は身の危険を感じて段部へ亡命しました。段遼は以前から慕容翰の勇名を聞いていたため、大いに喜び、手厚く迎え入れて敬愛を示しました。同年11月、慕容皝の弟である征虜将軍慕容仁が反乱を起こして遼東を占拠すると、段遼は宇文部と共に慕容仁を支援しました。

334年1月、慕容部の材官将軍劉佩が段部の領土である乙連に侵攻しましたが、段遼はこれを撃退しました。2月には、慕容部の領土である徒河に侵攻しましたが、慕容皝配下の張萌に敗れました。さらに、弟の段蘭と慕容翰に柳城への侵攻を命じましたが、慕容皝配下の都尉石琮・城大慕輿泥に撃退されました。

段遼はこれに怒り、段蘭と慕容翰を責め、柳城の攻略を厳命しました。10日余り後、再び段蘭と慕容翰を派遣して柳城を包囲させました。段蘭は雲梯を造り、地下道を掘り、20日間に渡って四方から昼夜問わず攻撃を仕掛けましたが、石琮と慕輿泥は堅固に守りを固めました。さらに、石琮は機を見て将士を率いて出撃し、段蘭軍を攻め、段蘭は千五百の兵を失いました。その後、寧遠将軍慕容汗・封奕らが救援として到着すると、段蘭は柳城の北にある牛尾谷においてこれに大勝し、大半の兵を討ち取りました。段蘭はこの勝利に乗じて深く侵入しようと考えましたが、慕容翰は祖国が滅ぼされるのではないかと危惧して反対したため、段蘭もやむなく退却しました。

335年12月、段部と宇文部は慕容仁の下へ使者を派遣し、修好を深めました。段部と宇文部は慕容仁の本拠地である平郭に館を置きましたが、慕容皝の帳下督張英は百騎余りを率いて間道から侵入し、館を襲撃しました。宇文部の使者10人余りが殺害され、段部の使者は捕えられました。

336年6月、中軍将軍李詠に命じて慕容部の領土である武興に夜襲を仕掛けさせましたが、雨のために途中で中止して軍を返しました。慕容部の都尉張萌は退却中の李詠軍を追撃し、李詠を生け捕りにしました。

その後、段遼は段蘭に数万の兵を与えて曲水亭まで進軍させ、再び柳城攻撃に取り掛からせました。宇文部の大人宇文逸豆帰は安晋へ侵攻し、段蘭に呼応しました。しかし、慕容皝が歩兵騎兵合わせて5万を率いて柳城に進軍すると、段蘭も宇文逸豆帰も退却しました。

劣勢へ

337年7月、数千の騎兵を率いて慕容部へ侵攻しましたが、慕容皝はこれを予測しており、封奕に騎兵数千を与えて馬兜山の諸道に伏兵として配置していました。これにより段遼は挟撃を受け、大敗を喫して将軍栄伯保が戦死しました。慕容皝の世子である慕容儁が段部の諸城を攻めると、段部は大敗を喫しました。

337年3月、慕容皝は段部の本拠地である乙連城の東に好城を築き、将軍蘭勃を派遣して段部を威圧しました。また、曲水にも城を築き、蘭勃を援護させました。4月、乙連では飢饉が深刻となり、段遼は数千両の車で穀物を輸送しようとしましたが、蘭勃はこれを奪い取りました。6月、段遼は従弟の揚威将軍段屈雲に精鋭騎兵を与え、興国城を守る慕容皝の子である慕容遵を夜襲させましたが、五官水上で敗れ去り、段屈雲は敗戦して敗残兵は尽く捕虜となりました。

同月、中軍将軍陽裕は慕容部との講和を進言しましたが、段遼はこれを聞き入れませんでした。やがて陽裕は中央から遠ざけられました。

後趙との敵対と滅亡

338年1月、段遼は段屈雲を派遣して後趙領の幽州へ侵攻させ、幽州刺史李孟を易京へ撤退させました。慕容皝は後趙の石虎へ使者を派遣し、称藩する代わりに段遼討伐の援軍を求めると、石虎はこれに応じて総勢17万の兵で討伐軍を興しました。3月、慕容皝も石虎に呼応して自ら三軍を率いて令支以北の諸城を攻撃して回りました。

段遼は慕容皝を攻撃しようとしましたが、慕容翰の進言により思いとどまりました。しかし、段蘭はこれに激怒し、総力を持って出撃しました。結果、慕容皝の伏兵に遭い大敗を喫し、多くの兵と民、家畜を失いました。

石虎が金台まで進軍すると、段部勢力下の漁陽郡・上谷郡・代郡の諸太守は相次いで降伏し、多くの城が石虎の手に落ちました。段遼は段蘭の敗戦を聞くと、石虎との戦いを避け、妻子親族及び豪族を率いて密雲山へ逃走しました。慕容翰とはここで袂を分かち、宇文部へ亡命しました。左右長史である劉羣・盧諶・崔悦らは府庫を封じて降伏を請うた。

石虎は将軍に段遼を追撃させ、妻子を捕らえさせました。段遼は単騎で山中奥深くに逃げ込み、子の段乞特真を使者として後趙に派遣し謝罪すると、石虎はこれを受け入れました。12月、段遼は後趙へ降伏の使者を派遣しましたが、途中で心変わりして前燕にも密かに降伏の使者を派遣しました。石虎は征東将軍に兵を与えて段遼を迎えに行かせましたが、慕容皝は麻秋を攻撃するため慕容恪を派遣し、麻秋軍に大打撃を与えました。段遼は慕容恪に伴われ、その民と共に棘城へ送られました。慕容皝は段遼を厚遇しましたが、339年4月、段遼は謀叛を企て失敗し殺害され、首は後趙へと送られました。彼の死により事実上段部は滅亡しましたが、弟の段蘭は後趙の服属下で勢力を保ちました。

参考資料

『魏書』（列伝第九十一）
『晋書』（成帝康帝紀、列伝第三十三）
* 『資治通鑑』（卷第九十三）

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