満誓

満誓（まんぜい / まんせい）



満誓は、飛鳥時代から奈良時代にかけて活動した貴族、僧侶、そして歌人です。彼の本名は笠 麻呂（かさ の まろ）であり、姓は朝臣、官位としては従四位上、右大弁に任ぜられていました。特に彼は吉蘇路（木曽路）の開削者としても知られています。

経歴



大宝4年（704年）に正六位下から二階昇進し、従五位下に叙爵されました。慶雲3年（706年）には美濃守に任ぜられ、その後、和銅3年（710年）の再任を経て、養老4年（720年）まで、美濃守として14年間もその職を務めました。この在任期間中の和銅2年（709年）には、藤原房前による行政監察が行われた際に、尾張守や佐伯大麻呂たちと共に評価され、功田11町と穀物200斛、衣服1襲を授与されました。

さらに、大宝2年（702年）から始まった美濃・信濃間の山道開削においても、和銅7年（714年）には吉蘇路が開通し、その功績により朝廷から封戸70戸と功田6町を賜りました。元明朝においては、和銅元年（708年）には従五位上、和銅4年（711年）には正五位上、和銅6年（713年）には従四位下と次第に昇進していきました。

元正朝に入ると、霊亀2年（716年）には尾張守を兼任し、養老3年（719年）には按察使として尾張、三河、信濃の各国を管轄する役割を担いました。また、養老元年（717年）には多度山美泉行幸の後に従四位上に昇叙されています。やがて養老4年（720年）、彼は右大弁に任ぜられ、京官として復職を果たしました。

養老5年（721年）に元明上皇の病気回復を祈るために勅命で男女100人に出家が命じられ、満誓もその一人として出家を請い、以降「満誓」という名前で知られるようになりました。一説によると上皇の快復を目的にした出家であり、また政治的な意図もあったのではないかとも考えられています。

上皇が崩御した後の養老7年（723年）、彼は観世音寺の造寺司として筑紫に赴任しました。この寺は7世紀の後半に創建され、元明天皇が強い完成の意志を持っていたことから、満誓がその意志を継ぐべく赴任したとされています。

歌風・和歌作品



満誓の歌には、仏教的な無常観が映し出されているとされますが、一方で歴史言語学者のロイ・アンドリュー・ミラーは、彼の歌に仏教観が薄いと主張しています。彼が詠んだ歌の中には、九州での贈答歌が『万葉集』に収められ、特に有名な作品としては『万葉集』に収められた「世の中を 何にたとへむ 朝びらき 漕ぎいにし船の 跡なきごとし」が挙げられます。この作品は平安時代の『拾遺和歌集』にも収録されています。

官歴



満誓の官歴は以下の通りです。

子孫



満誓は天平年間に観世音寺の造寺司を務めていた際、赤須という名の女性との間に男子をもうけ、この子孫は観世音寺の寺家人として承認されました。子孫の夏麻呂は良民としての扱いを求めるため数度にわたり太政官や大宰府に訴えたものの、なかなか許可を得ることはできませんでした。最終的には貞観8年（866年）に、満誓の五世祖にあたる清貞、貞雄、宗主が良民として筑後国竹野郡に認められるに至りました。

脚注



満誓の生涯は、政治と宗教、そして文学という多様な側面にわたる興味深いものであり、彼の名は和歌を通じて今なお伝えられています。

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