王弥

王弥（おう び）

王弥（生年不詳 - 311年）は、中国五胡十六国時代の漢（後の前趙）の武将。字は子固。東萊郡出身。西晋末期の混乱期に大規模な反乱勢力を率い、華北を荒らし回ったことで知られる。後に劉淵に帰順し、漢の将軍として活躍したが、最終的には石勒との対立により命を落とした。

生涯

若き日

代々高官を輩出する名門の家系に生まれ、若くして洛陽に遊学。そこで後に漢を建国する劉淵と親交を深め、互いに本音を語り合える仲となった。故郷へ帰る際には、劉淵が自ら見送ったという。

反乱軍の統領

劉柏根の乱に参画

306年、劉柏根が挙兵すると、王弥は参謀役として参加。劉柏根軍は勢力を拡大するも、王浚の軍に敗れ、劉柏根は戦死。王弥は残兵を率いて逃走し、盗賊として活動を続けた。

華北を席巻

307年、王弥は征東大将軍を自称して挙兵。青州・徐州一帯を侵攻し、太傅司馬越が派遣した討伐軍を打ち破る。その後、旧友である劉淵が漢を建国したことを知り、劉霊と共に劉淵に帰順。鎮東大将軍に任じられ、東萊公に封じられた。

308年、勢力を盛り返した王弥は、苟晞と再び交戦し、これを撃破。青・徐・兗・豫の四州を侵攻し、多くの郡を制圧。その兵力は数万に膨れ上がり、西晋朝廷は制御不能となった。

第一次洛陽侵攻

308年4月、許昌を占領し、洛陽へ侵攻。司馬越は司馬王斌に洛陽の守備を命じ、涼州刺史張軌も救援軍を派遣。王弥は晋軍を破り洛陽城に迫るも、王斌や北宮純らの反撃を受け大敗。建春門を焼いて撤退した。

劉淵に帰順

王弥は劉霊と共に劉淵の下へ亡命。劉淵は王弥の到来を喜び、手厚く歓迎。王弥は劉淵に帝位に即くよう勧め、劉淵は王弥を孔明・仲華に例え、大いに喜んだ。王弥は司隷校尉に任じられた。

漢の将軍

鄴・壷関攻略

308年9月、石勒と共に鄴を攻略。309年4月、劉聡・石勒と共に壷関を攻め落とし、東萊公に封じられた。

第二次・三次洛陽侵攻

309年8月、劉聡と共に洛陽へ侵攻。弘農郡太守垣延の夜襲を受け大敗。10月、再び洛陽へ侵攻するも、賈胤や北宮純らの夜襲を受け敗退。王弥は劉聡に撤退を進言し、平陽へ帰還した。

11月、轘轅関から撤退する際、司馬越配下の薄盛・李惲らに追撃を受け敗れる。その後、襄城の諸県を侵攻し、避難民を扇動して反乱を起こさせた。

曹嶷を青州へ派遣

309年12月、曹嶷を安東将軍に推挙し、青州攻略を命じた。曹嶷は青州で勢力を拡大し、王弥の一族を迎え入れた。

310年1月、石勒と共に陳郡・潁川郡へ侵攻。その後、陽翟に駐屯し、弟の王璋を派遣して徐州・兗州へ攻め入らせたが、司馬越軍に敗れた。

第四次・五次洛陽侵攻

310年10月、劉粲・劉曜らと共に洛陽を攻撃。311年5月、劉曜と共に襄城へ侵攻。6月、王弥は洛陽を攻略し、懐帝を幽閉、皇太子を殺害。陵墓を暴き、宮殿や宗廟を焼き払い、洛陽を徹底的に破壊した（永嘉の乱）。

劉曜との抗争

洛陽での略奪を巡り劉曜と対立。王弥は劉曜の陣に攻撃を仕掛け、双方に多数の死者が出た。長史張嵩の諫言により、王弥は劉曜に謝罪し和解。しかし、王弥は次第に漢からの自立を模索するようになった。

311年8月、大将軍に任じられ、斉公に封じられる。しかし、配下の徐邈・高梁が兵を率いて曹嶷の下へ去り、勢力が衰えた。

最期

石勒との対立

王弥は石勒を疎ましく思い、懐柔のために美女や宝貨を贈った。劉暾の進言を受け、曹嶷と連携して石勒を挟撃しようと画策。しかし、劉暾が石勒に捕らえられ、計画が露見。石勒は王弥を誅殺することを決意した。

誅殺

311年10月、石勒の酒宴に招かれた王弥は、張嵩の諫言を聞かずに参加。酒宴の最中、石勒に斬り殺された。石勒は王弥の兵を吸収し、勢力を拡大した。

人物

幼い頃から才幹に優れ、様々な書に通じていた。勇敢さと優れた計略を持ち合わせ、腕力も人並み外れていた。騎射の腕は特に優れており、「飛豹」と称された。侵略の際には周到な準備を行い、必ず成功と失敗の両方を想定してから行動に移したという。

逸話

洛陽にいた頃、隠者の董仲道に「君は乱を好み禍を楽しむ者だ」と評された。

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