第12師団 (日本軍)

第12師団

第12師団は、1898年（明治31年）から1945年（昭和20年）まで存在した大日本帝国陸軍の師団の一つです。主に北部九州出身の兵士で構成されていました。日露戦争、シベリア出兵、日中戦争、太平洋戦争といった数々の戦争に参加しました。

歴史

創設

第12師団は、日清戦争後に新設された6個師団の一つとして、1898年11月21日に創設されました。師団司令部は福岡県小倉（現在の北九州市小倉北区）の小倉城内に置かれ、兵営などの施設も城内に集中していましたが、一部は郊外の企救郡北方村にも設けられました。

兵士は、第12師管区、主に九州北部（および関門海峡に面した山口県の一部）出身の男子から徴兵されました。

日露戦争

1904年（明治37年）、日露戦争開戦と共に動員され、長崎港から出征。朝鮮の仁川に上陸し、北上して鴨緑江を渡り、第1軍に編入されました。満洲各地を転戦し、遼陽会戦などの主要な戦いに参加しました。

シベリア出兵

1918年（大正7年）8月2日、第12師団はシベリア出兵の動員命令を受け、門司港から出航。ウラジオストクに上陸し、シベリア各地を転戦しました。師団の出征後、小倉には留守第12師団が設けられ、兵器部なども移転しました。

1919年（大正8年）、他師団と交代し、7月20日に復員を完了しました。

久留米への移転

1925年（大正14年）、宇垣軍縮により第18師団が廃止されたことに伴い、第12師団は同師団の所在地だった久留米（現在の福岡県久留米市）に移転しました。この際、旧小倉師団と旧久留米師団の兵員を半々で抽出し編成することで、久留米師団の伝統を継承することに留意しました。

第12師団の移転後、小倉城内には野戦重砲兵第2旅団が、旧兵営跡には野戦重砲兵第5連隊と第6連隊が設置されました。その後、城内の歩兵第14連隊も北方へ移転しました。その後、小倉は関東大震災で大きな被害を受けた東京砲兵工廠の移転を誘致し、大阪砲兵工廠に次ぐ規模の日本陸軍工廠を建設しました。

日中戦争

1932年（昭和7年）、第一次上海事変勃発時、師団隷下の歩兵第24旅団を基幹とする混成第24旅団が編成され、上海へ派遣されました。同年2月22日、同混成旅団に派遣された工兵第18大隊所属の兵士3名が、鉄条網破壊のため爆薬筒を持って敵陣に突入し、爆死しました（肉弾三勇士）。

満洲駐屯

1936年（昭和11年）4月、第12師団は満洲に駐屯し、ハルビン、密山、東寧などを転々としました。1938年（昭和13年）1月には新設の第3軍に編入され、老黒山、城子溝へと移動。その後、1939年（昭和14年）には大肚子川に移動し、師団内で兵士の車両運転教育を開始しました。この頃、師団の満洲永駐が内示されました。

1940年（昭和15年）7月、歩兵第14連隊が第25師団に転出し、三単位編成へと改編。騎兵第12連隊は捜索第12連隊に改編されました。同年8月、満洲永駐後の九州北部代替常設師団として第56師団が新設され、第12師管を改称した久留米師管を管轄しました。同年12月には師団戦車隊が新設され、東部満ソ国境の警備を担いました。

1941年（昭和16年）7月、関東軍特種演習で動員され、欠員補充や増強が行われ、準戦時編成となりました。

太平洋戦争

太平洋戦争開戦後も、第12師団は満洲国内で対ソ連戦の訓練や抗日パルチザン掃討などの治安維持活動に従事しました。

1943年（昭和18年）には在満師団は駐屯体制に編成を縮小しました。

1944年（昭和19年）4月、第4派遣隊（第12歩兵団司令部、歩兵第24、第46、第48連隊の各第3大隊、野砲兵第24連隊第3大隊、工兵第18連隊第3中隊）が南洋のヤップ島へ派遣されました。同年11月には戦局の悪化から台湾への派遣が決定しましたが、輸送船舶の都合で馬匹随伴が制限され、大幅に縮小した臨時編成となりました。釜山経由で台湾へ向かう途中で敵潜水艦の攻撃を受け、輸送船3隻が沈没する被害を受けました。第10方面軍に編入され、新竹に在って台湾西部の警備にあたりました。

1945年（昭和20年）、連合軍が台湾を飛び越え沖縄本島に上陸したため、第12師団は陣地構築中のまま終戦を迎えました。

歴代師団長

田村寛一中将：1898年 10月1日 - 1899年3月6日
井上光中将：1899年3月13日 - 1906年7月6日
浅田信興中将：1906年7月6日 - 1910年8月26日
安東貞美中将：1910年8月26日 - 1912年2月14日
山根武亮中将：1912年2月14日 - 1912年11月27日
内山小二郎中将：1912年11月27日 - 1913年8月22日
藤井茂太中将：1913年8月22日 - 1914年5月11日
柴五郎中将：1914年5月11日 - 1918年7月2日
大井成元中将：1918年7月2日 - 1919年8月26日
木下宇三郎中将：1919年8月26日 - 1921年7月20日
森岡守成中将：1921年7月20日 - 1923年8月6日
磯村年中将：1923年8月6日 - 1926年7月28日
竹上常三郎中将：1926年7月28日 - 1928年3月8日
金山久松中将：1928年3月8日 - 1930年8月1日
木原清中将：1930年8月1日 - 1932年2月29日
杉山元中将：1932年2月29日 - 1933年3月18日
大谷一男中将：1933年3月18日 - 1935年3月15日
香月清司中将：1935年3月15日 - 1936年3月7日
清水喜重中将：1936年3月7日 - 1937年3月1日
山田乙三中将：1937年3月1日 - 1938年1月8日
上村清太郎中将：1938年1月8日 - 1940年3月9日
河辺正三中将：1940年3月9日 - 1941年3月1日
笠原幸雄中将：1941年3月1日 - 1942年8月1日
沼田多稼蔵中将：1942年8月1日 - 1943年10月29日
人見秀三中将：1943年10月29日 - 終戦

歴代参謀長

山根武亮工兵大佐：1898年 10月1日 - 1900年4月25日
楠瀬幸彦砲兵大佐：1900年4月25日 - 1901年6月28日
小原伝砲兵中佐：1901年6月28日 - 1906年7月6日
足立愛蔵砲兵大佐：1906年7月6日 - 1909年1月14日
木田伊之助砲兵中佐：1909年1月14日 - 1912年1月27日
木下宇三郎砲兵大佐：1912年1月27日 - 1913年7月3日
岡本茂若歩兵大佐：1913年7月3日 - 1915年8月10日
岡田重久歩兵大佐：1915年8月10日 - 1917年8月6日
松山良朔歩兵大佐：1917年8月6日 - 1919年4月15日
稲垣清歩兵大佐：1919年4月15日 - 1922年2月8日
山本宜一歩兵大佐：1922年2月8日 - 1923年3月17日
水町竹三歩兵大佐：1923年3月17日 - 1924年2月4日
岸孝一歩兵大佐：1924年2月4日 - 1928年3月8日
森下千一歩兵大佐：1928年3月8日 - 1929年3月16日
平松英雄歩兵大佐：1929年3月16日 - 1931年8月1日
牧野正迪航空兵大佐：1931年8月1日 - 1932年10月3日
石田保道砲兵大佐：1932年10月3日 - 1935年3月15日
篠原次郎歩兵大佐：1935年3月15日 - 1936年8月1日
中村正雄歩兵大佐：1936年8月1日 - 1938年6月
中永太郎歩兵大佐：1938年6月11日 - 1939年6月23日
不詳
井原潤次郎大佐：1940年12月1日 - 1942年7月9日
志村文雄大佐：1942年7月9日 - 1944年1月7日
村田定雄大佐：1944年1月7日 - 1945年2月20日
若山庸一中佐：1945年2月20日 - 終戦

所属部隊

師団創設時と日中戦争勃発前、第12師団は以下のように配備されていました。（括弧内は衛戍地）

歩兵第14旅団
歩兵第23連隊（福岡）
歩兵第24連隊（久留米）
歩兵第24旅団
歩兵第46連隊（小倉）
歩兵第48連隊（飯塚）
騎兵第12連隊（久留米）
野砲兵第24連隊（久留米）
工兵第18大隊（久留米）
輜重兵第12大隊（小倉）

1940年（昭和15年）に師団の衛戍地は久留米から満洲に移りましたが、補充は内地より行われました。

脚注

注釈

出典

参考文献

坂本悠一「北九州における軍隊と戦争　「軍都小倉」の成立・衰退・再生」、林博史・編『大陸・南方膨張の拠点』（地域のなかの軍隊6　九州・沖縄）、吉川弘文館、2015年。
外山操・森松俊夫編著『帝国陸軍編制総覧』芙蓉書房出版、1987年。
秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年。
福川秀樹『日本陸軍将官辞典』芙蓉書房出版、2001年。
外山操編『陸海軍将官人事総覧陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年。