陳震

陳震（ちん しん）

陳震（ちん しん）は、中国後漢末期から三国時代の蜀漢に仕えた政治家。字（あざな）は孝起（こうき）。荊州南陽郡の出身。子は陳済（ちん さい）。

生涯

劉備への仕官と蜀漢での活躍

劉備（りゅうび）が荊州牧（けいしゅうぼく）となると、陳震は従事（じゅうじ）として招かれ、諸郡の監督を任された。劉備が益州（えきしゅう）を攻略する際には、龐統（ほうとう）らと共に劉備に随行し、その軍事行動を支えた。建安19年（214年）、劉備が益州を支配すると、蜀郡北部都尉（しょくぐんほくぶとつい）（後に郡名が変更され汶山太守（ぶんざんたいしゅ））に任命され、その後、犍為太守（けんいたいしゅ）へと転任した。

中央での活躍と呉への使者

建興3年（225年）には中央に召還され、尚書（しょうしょ）に任じられ、尚書令（しょうしょれい）に昇進した。同年、呉（ご）への使者として派遣されたが、その具体的な目的は史書には記録されていない。この年、諸葛亮（しょかつりょう）は南征（なんせい）を実施している。

諸葛亮からの信頼

建興5年（227年）の出師表（すいしのひょう）において、諸葛亮は「侍中（じちゅう）の郭攸之（かくゆうし）・費禕（ひい）、尚書（しょうしょ）の陳震（ちんしん）、長史（ちょうし）の張裔（ちょうい）、参軍（さんぐん）の蔣琬（しょうえん）、これらは皆、忠義に厚く節を守り死ぬ覚悟のある臣下である」と陳震を称賛している。

呉との同盟維持への貢献

建興7年（229年）、同盟関係にあった呉の孫権（そんけん）が皇帝に即位し、蜀漢国内に動揺が走ったが、諸葛亮は呉との同盟関係を維持することを決断し、衛尉（えいい）に昇進していた陳震を祝賀の使者として呉に派遣した（「諸葛亮伝」が引く『漢晋春秋』）。諸葛亮は兄の諸葛瑾（しょかつきん）に手紙を送り、陳震を「老いてますます誠実な性格である」と賞賛し、呉と蜀の友好関係を発展させるにふさわしい使者として紹介した。陳震は使者として謙虚に振る舞い、武昌（ぶしょう）において孫権と会盟し、天下を分割することを誓約した（呉志「呉主伝」）。その内容は、呉が徐州（じょしゅう）・豫州（よしゅう）・幽州（ゆうしゅう）・青州（せいしゅう）を、蜀漢が并州（へいしゅう）・涼州（りょうしゅう）・冀州（きしゅう）・兗州（えんしゅう）をそれぞれ領有し、司隷（しれい）は函谷関（かんこくかん）を境界とする、というものであった。陳震は帰国後、城陽亭侯（じょうようていこう）に封じられた。

李厳の失脚と陳震の洞察

建興9年（231年）、李厳（りげん）が兵糧輸送の遅延の責任を逃れるために偽りの発言をして免職となった際、諸葛亮は蔣琬（しょうえん）と董允（とういん）に手紙を送り、「陳震は以前呉に赴く際、李厳は腹の中に棘（とげ）があり、郷里の人々も近づけないと話していた。私は、棘というものは触れなければ良いだけだと思っていたが、蘇秦（そしん）・張儀（ちょうぎ）のような弁舌によるごまかしが突然行われるとは思いもよらなかった。陳震にこのことを知らせてやらねばならない」と述べた。

建興13年（235年）に死去し、子の陳済（ちん さい）が跡を継いだ。

陳寿（ちんじゅ）は陳震を「忠実で謙虚であり、老いてますます慎ましい人物であった」と評している。

三国志演義における陳震

小説『三国志演義』では、はじめ袁紹（えんしょう）に仕えており、徐州（じょしゅう）で曹操（そうそう）に敗れ袁紹に身を寄せた劉備（りゅうび）と親しくなり、曹操に降伏していた関羽（かんう）への連絡役を引き受けている。劉備が劉表（りゅうひょう）との同盟の使者に行くと称して袁紹の下を離れた後は、袁紹の命を受け江東（こうとう）の孫策（そんさく）との同盟交渉に赴いたが、袁紹との同盟に乗り気であった孫策が急死すると、後継者の孫権（そんけん）は曹操と同盟を結ぶことにしたため失敗している。後に劉備の元へ身を寄せるようになるが、ほぼ名のみの登場となっている。

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