1985年の鉄道

1985年の鉄道界：激動と転換の様相

1985年（昭和60年）は、日本の鉄道、特に日本国有鉄道（国鉄）にとって、将来の分割民営化を控え、抜本的な改革が進められた激動の一年でした。長らく赤字に苦しんできた特定地方交通線の廃止や第三セクター鉄道への転換が本格化した一方、都市部では新幹線や地下鉄の延伸、新規路線の開業が進み、輸送力の増強や利便性の向上が図られました。また、多くの新型車両が登場し、鉄道技術の進歩を象徴する一方、痛ましい事故や社会的な事件も発生しました。

年明け早々、1月1日には国鉄香椎線の一部貨物支線や岡多線の貨物営業が廃止されました。また、台風被害により休止中だった松本電気鉄道上高地線の一部区間（新島々～島々間）が正式に廃止され、終点だった島々駅も姿を消しました。都市交通では、1月9日に北九州高速鉄道小倉線が開業し、小倉駅をはじめとする12の新駅が誕生。モノレールによる都市内輸送が始まりました。

3月に入ると、重要な動きが集中しました。3月14日には国鉄の全国的なダイヤ改正が実施され、特に東北新幹線が悲願だった上野駅までの延伸を果たしました。これにより、東京駅を経由せずに都心へのアクセスが可能となり、利用者の利便性が大幅に向上しました。この改正に合わせて、水沢江刺駅や新花巻駅といった新幹線駅も開業しています。また、常磐線に国際科学技術博覧会（つくば万博）へのアクセス駅として臨時駅の万博中央駅が開業したほか、信越本線に安茂里駅、山陽本線に高島駅や新井口駅、長崎本線に西諫早駅が新設されました。路線の廃止も進み、室蘭本線の一部貨物支線や、四国の小松島線、九州の鹿児島本線（博多臨港線の一部）が廃止となり、貨物営業も複数区間で終了しました。この日、鹿島臨海鉄道が大洗鹿島線（水戸～北鹿島間）を開業させ、国鉄鹿島線との間で相互直通運転を開始。小田急電鉄小田原線に開成駅、横浜市営地下鉄1号線・3号線も延伸開業し、複数の新駅が開業するなど、都市圏の鉄道路線網が拡充されました。

4月1日には、国鉄の特定地方交通線を中心に多数の路線が廃止されました。北海道では相生線、渚滑線、万字線、岩内線、興浜北線、興浜南線、美幸線、手宮線といったローカル線が、新潟県では弥彦線の一部（東三条～越後長沢間）、鳥取県では倉吉線、兵庫県では室木線、香月線、福岡県では勝田線、添田線、矢部線といった路線が国鉄としての役割を終えました。このうち、北条線（兵庫県）は北条鉄道へ、三木線（兵庫県）は三木鉄道へ、大畑線（青森県）は下北交通へ、矢島線（秋田県）は由利高原鉄道へ、明知線（岐阜県）は明知鉄道へと、地域の受け皿となる第三セクター鉄道として生まれ変わり、運行が引き継がれました。しかし、多くの路線は完全に姿を消し、それに伴い数えきれないほどの駅や仮乗降場も廃止されました。同和鉱業花岡線、蒲原鉄道線の一部、加悦鉄道線といった私鉄・専用線もこの日に廃止されています。

その他の開業・延伸として、4月5日には大阪市営地下鉄中央線が深江橋駅から長田駅まで延伸。4月25日には西武鉄道山口線が軽便鉄道から案内軌条式鉄道（レオライナー）に生まれ変わり開業しました。6月には神戸市営地下鉄西神延伸線が開業し、山手線も新神戸駅から大倉山駅まで延伸しています。

車両面では、国鉄が新世代の近郊・通勤形電車として211系と205系を、次期新幹線車両として100系を登場させたほか、リゾート列車「アルファコンチネンタルエクスプレス」も登場しました。私鉄・第三セクター各社も、伊豆急行の観光電車「リゾート21」こと2100系、西武鉄道8500系「レオライナー」、京浜急行電鉄1500形、南海電気鉄道9000系・10000系など、それぞれの個性やニーズに合わせた新型車両を投入しました。ローカル線を引き継いだ第三セクター鉄道向けには、由利高原鉄道YR-1000形や明知鉄道アケチ1形、北条鉄道フラワ1985形、三木鉄道ミキ180形といった小型気動車が登場し、地域の足として活躍を始めました。一方で、多くの古い貨車形式がこの年に消滅しています。国鉄の車両が第三セクター鉄道へ譲渡される動きも見られました。

設備改良では、国鉄外房線の一部複線化、東武鉄道野田線の一部複線化が行われました。また、9月30日には東北本線の一部を利用する形で埼京線（赤羽～大宮間）が開業し、赤羽線を介して池袋駅まで直通運転を開始。これにより首都圏北西部の通勤輸送力が強化されました。同時に川越線（大宮～高麗川間）が電化（直流1500V化）され、埼京線との直通運転が実現しました。遠州鉄道では新浜松駅周辺の路線移設と高架化が完成し、第一通り駅が開業するなど、都市部の利便性向上が図られました。

社会的な出来事としては、7月11日に国鉄能登線で列車脱線事故が発生しました。また、11月29日には首都圏で国電同時多発ゲリラ事件が発生し、主要駅への放火などにより鉄道網が一時的に混乱し、浅草橋駅などが翌日まで営業休止を余儀なくされました。

優れた車両に贈られる賞では、第28回ブルーリボン賞に名古屋鉄道の展望車付き特急形電車8800系「パノラマDX」が、第25回ローレル賞には帝都高速度交通営団（現・東京メトロ）銀座線用の01系電車と、国鉄から転換した樽見鉄道の小型気動車ハイモ180形がそれぞれ選定されました。

その他、東武鉄道が運営していた日光の明智平ロープウェイが日光交通へ譲渡されるといった動きもありました。

1985年は、国鉄改革が加速し多くの地方路線が転換・廃止される一方で、都市圏の鉄道網や新幹線が拡充され、多様な新型車両が投入されるなど、日本の鉄道が大きな変革期を迎えていたことを示す一年と言えるでしょう。これらの動きは、その後の日本の鉄道網の姿を大きく左右することになりました。

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