大和堆

大和堆とは

大和堆（やまとたい）は、日本海のほぼ中央に位置する、東西約130km、南北約20kmに及ぶ広大な海底の隆起です。最も浅い部分の水深は236mで、周辺海域は日本有数の好漁場として知られています。この海域は、冷水と暖水が混ざり合う場所に位置し、プランクトンが豊富に発生するため、多様な魚介類が生息しています。

名称

大和堆は、日本語では「やまとたい」と発音し、ローマ字では「Yamato Tai」と表記されます。英語では、国際水路機関（IHO）が「Yamato Bank」という名称を使用しており、その他にも「Yamatotai Bank」「Noto-tai」「Yamato Ridge」「Yamato-tai」「Yamato Seamount」「Vozvyshennost’ Yamato」など、様々な名称が用いられています。

地理的特徴

大和堆は、かつてアジア大陸と陸続きだった古日本列島が、新生代に大陸から分離する際に形成された海嶺の一部です。この海嶺は「大和海嶺」と呼ばれ、日本海盆と大和海盆に挟まれるように、隠岐諸島から日本海中央部へ向かって伸びています。大和海嶺は、「北大和堆」と「大和堆」の二つの主要な隆起部から構成されており、その間には深い地溝状の落ち込み（北大和堆トラフ）が存在します。また、大和堆の北東部にはやや独立した「拓洋堆」と呼ばれる高まりも見られます。

地質

北大和堆と拓洋堆からは、約2億年前の花崗岩が確認されており、本州中央部の飛騨変成帯の花崗岩との関連性が指摘されています。一方、大和堆は、中生代の流紋岩が確認されているものの、新第三紀または第四紀には安山岩や玄武岩の噴出があったと考えられています。これらのことから、大和堆は、本州と隣接していた時期の造山活動によって形成された可能性が高いとされています。

海洋環境

大和海嶺は、冷水域と暖水域の境界に位置するため、表層の生産性が高く、海底の生物多様性も豊かです。このため、大和堆周辺は日本海でも有数の漁場となっています。また、陸地との繋がりも深く、山陰地方の山地、隠岐諸島、大和海嶺は、地続きの地形として捉えることもできます。

発見の歴史

大和堆は、1924年に水産講習所（現在の東京海洋大学）の調査船「天鷗丸」によって発見されました。当初、日本海は一様に深い海と考えられていましたが、「天鷗丸」の調査によって、その中央部に浅い場所があることが明らかになりました。その後、1926年には、日本海軍の測量艦「大和」によって精密な測量が行われ、最浅部の水深が236mであることが確認されました。この時、新しく発見された浅瀬は、測量艦「大和」の名前にちなんで「大和堆」と命名されました。さらに、1930年には海洋観測船「春風丸」によって、大和堆の北側に新たな浅瀬が発見され、「春風堆」と名付けられましたが、翌年、測量艦「大和」の調査により「北大和堆」と改名されました。

2019年の北朝鮮漁船衝突事件

2019年 10月7日、大和堆周辺の日本の排他的経済[[水域]]（EEZ）内で、北朝鮮の漁船が日本の水産庁取締船「おおくに」に衝突する事件が発生しました。この事件は、北朝鮮の漁船が違法操業をしていたことが原因で起きたとされています。衝突後、北朝鮮の漁船は沈没し、乗組員は救助されましたが、この事件は、大和堆における外国漁船の違法操業問題の深刻さを浮き彫りにしました。

年表

大和堆の形成から現在に至るまでの主な出来事を年表形式でまとめます。

新生代新第三紀鮮新世から第四紀更新世：大和堆が生成される。
1885年：農商務省に水産局が設置される。
1897年：遠洋漁業奨励法が公布され、大型漁船の遠洋航海が開始される。
1909年：水産資源の視点からの地形調査が開始される。
1924年：調査船「天鷗丸」が大和堆を発見する。
1926年：測量艦「大和」が精密測量を行い、大和堆と命名される。
1930年：海洋観測船「春風丸」が北大和堆を発見し「春風堆」と命名される。
1931年：測量艦「大和」の調査により「春風堆」が「北大和堆」へ改名される。
1977年：日本が200海里漁業専管水域法を施行し、大和堆が日本の管理下に置かれる。
1982年：国際連合が『海洋法に関する国際連合条約』を採択。
1994年：『海洋法に関する国際連合条約』が発効し、「排他的経済[[水域]]（EEZ）」という概念が成立。
1996年：日本が『海洋法に関する国際連合条約』を批准し、大和堆が日本の排他的経済[[水域]]に属すこととなる。
2016年：環境省が「生物多様性の観点から重要度の高い海域」を選定し、大和堆が保全対象となる。
2017年：北朝鮮漁船による大和堆での乱獲が深刻化する。
2019年：水産庁の漁業取締船と北朝鮮漁船が衝突する事件が発生。
2020年：中国漁船による違法操業が増加し始める。
* 2023年：大和堆周辺で北朝鮮が発射した弾道ミサイルが落下。

大和堆の利用と権利

大和堆は、古くから漁場として利用されており、イカ、サバ、タチウオ、スルメイカ、エビ、カニなどの豊富な水産資源が獲れます。これらの水産資源は、日本の漁業にとって非常に重要なものとなっています。

権利

大和堆が発見された当初は、大陸棚の概念がなかったため、公海とされていましたが、1977年に日本が漁業専管水域を設定し、大和堆を管理下に置きました。その後、『海洋法に関する国際連合条約』が発効し、「排他的経済[[水域]]（EEZ）」という概念が明確化され、大和堆は日本のEEZに属することとなりました。しかし、北大和堆は日本のEEZには含まれていません。

合法と違法

合法

大和堆では、日本の漁業者がイカ釣り漁、カニ籠漁業、底引網漁業などを合法的に行っています。特に、スルメイカ漁は盛んで、毎年6月から翌年1月まで漁期が続きます。イカ釣り船の集魚灯は、夜間には大気圏外からも見えるほどの光の束となり、大和堆での経済活動を象徴しています。

違法

近年、大和堆では外国漁船による違法操業が頻繁に行われています。特に、北朝鮮の漁船による乱獲が問題視されており、日本の水産庁や海上保安庁が取り締まりを強化しています。2017年には、北朝鮮が「漁獲戦闘」を奨励したことで、多数の木造漁船が大和堆に押し寄せ、乱獲が行われました。また、2019年には、北朝鮮の漁船が日本の取締船に衝突する事件も発生しました。近年では中国漁船による違法操業も増加しており、新たな問題となっています。

まとめ

大和堆は、日本海の中央部に位置する、地質学的にも興味深く、豊かな水産資源に恵まれた海域です。しかし、近年では外国漁船による違法操業や資源の枯渇が問題となっています。日本は、大和堆の資源を保護し、持続可能な利用を図るための対策を講じることが求められています。

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