崔林

崔林（さい りん）

崔林（さい りん、生年不詳 - 245年）は、中国後漢末期から三国時代の政治家であり、魏に仕えた人物です。字は徳儒（とくじゅ）。冀州清河郡東武県（現在の河北省衡水市故城県）の出身で、従兄に崔琰（さい えん）がいます。子に崔述（さい じゅつ）・崔随（さい ずい）がおり、後世には崔瑋（さい い）、崔悦（さい えつ）、崔潜（さい せん）といった子孫が続いています。『三国志』魏志にその伝記が記されています。

生涯

崔林は晩成型の人物として知られ、若い頃は一族からあまり注目されていませんでしたが、従兄の崔琰だけは彼の才能を高く評価していました。曹操（そうそう）が冀州（きしゅう）を制圧した後、崔林は召し出されて鄔県（うけん）の県令（県長）に任じられます。しかし、当時は貧しかったため、単身で徒歩で赴任したと伝えられています。

曹操が壷関（こかん）を征伐した際、彼は「県令・県長の中で最も徳政を行っている者は誰か」と尋ねました。并州（へいしゅう）刺史の張陟（ちょうちょく）が崔林の名を挙げたため、曹操は崔林に注目し、彼を主簿（しゅぼ）に取り立てました。その後、別駕（べつが）となり、丞相（じょうしょう）の掾属（えんぞく）として重用されるようになります。魏が建国されると、崔林は御史大夫（ぎょしたいふ）にまで昇進しました。

曹丕（そうひ）（文帝）の時代になると、崔林は尚書令（しょうしょれい）に昇進し、その後幽州（ゆうしゅう）刺史に転任しました。当時、曹丕の寵臣であった呉質（ごしつ）が北方の軍権を握っており、刺史や太守たちはこぞって呉質を敬い、顔色をうかがっていました。しかし、崔林はそうした態度を取らず、淡々と職務に励みました。涿郡（たくぐん）太守であった王雄（おうゆう）が崔林のことを心配し、別駕を通じて注意を促しましたが、崔林は異民族対策が急務であるとして、あくまで職務を優先しました。このため、崔林は治績を挙げていたにもかかわらず、呉質に憎まれ、河間（かかん）太守に左遷されてしまいます。この時、世間は崔林に同情したと言われています。

その後、崔林は中央に戻り、大鴻臚（だいこうろ）となりました。彼は外交儀礼の整備や簡素化に尽力し、その功績を高く評価されました。

曹叡（そうえい）（明帝）の時代には、関内侯（かんないこう）の爵位を受け、光禄勲（こうろくくん）・司隷校尉（しれいこうい）に任じられました。ここでも彼は充分な治績を挙げたため、人々から慕われる存在となりました。劉劭（りゅうしょう）が官僚制度について提言した際には、崔林も意見を述べています。

景初（けいしょ）元年（237年）、司空（しくう）と司徒（しと）が空席となった際、孟康（もうこう）の推薦により、崔林は三公（さんこう）の後任に推挙され、司徒・安陽亭侯（あんようていこう）に任じられ、領邑600戸を与えられました。三公と爵位を同時に与えられたのは崔林が最初であるとされています。後に安陽郷侯（あんようきょうこう）に昇進しました。

魯国（ろこく）の宰相から孔子の祭祀に関する提案があった際、その取り扱いについて、博士（はかせ）の傅祗（ふし）と議論になったと伝えられています。

明帝の時代には、領邑が分割され、彼の息子の一人が列侯に取り立てられました。正始（せいし）5年（245年）12月に死去し、子の崔述が跡を継ぎました。

崔林は、その晩成型の才能を開花させ、魏の政治において重要な役割を果たした人物として、歴史に名を残しています。

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