インド・ルピー

インド・ルピーの詳細解説

インド・ルピー（Indian Rupee, भारतीय रुपया）は、インドの公式通貨であり、経済活動の基盤をなしています。ISO 4217では「INR」と表記され、通貨記号は「₹」です。1ルピーは100パイサ（Paisa）に相当し、インド準備銀行が通貨発行を担っています。

歴史

ルピーの歴史は古く、16世紀にシェール・シャーが発行した銀貨が起源とされています。この銀貨は、ムガル帝国時代にも広く流通し、イギリス東インド会社も同様の銀貨を発行しました。1835年、イギリスはインド全土で通貨体系を統一し、1ルピーを16アンナ、64パイサ、192パイと定めましたが、銀本位制から金本位制への移行期には、ルピーの価値が下落し、経済に悪影響を及ぼしました。第一次世界大戦中には銀不足から兌換紙幣が発行されました。独立後の1957年、1ルピー＝100ナヤパイサの制度が導入され、1964年以降はパイサが使用されています。

電子決済の普及

2016年、高額紙幣の廃止措置後、新札への移行が滞り、100ルピー札への需要が集中しました。この混乱を背景に、Paytm、MobiKwik、GoogleTez、Mペサ、BHIM、Airtel Indiaなどの電子決済サービスが急速に普及しました。銀行口座の開設が進み、キャッシュレス決済が一般化しました。

ルピー記号

2010年、インド政府はルピーの新しい通貨記号「₹」を導入しました。この記号は、デーヴァナーガリー文字の「र」とローマ字の「R」を組み合わせたもので、インドの文化と経済発展の象徴とされています。2本の横線は、インド国旗の三色旗と、国内の経済格差是正を目指す「=」記号を意味します。しかし、伝統的な思想「ヴァーストゥ・シャーストラ」では「首をかき切る」ような形と捉えられ、一部で経済停滞の原因だと批判されています。

紙幣

現在流通している紙幣は「マハトマ・ガンディー」シリーズで、5ルピー、10ルピー、20ルピー、50ルピー、100ルピー、200ルピー、500ルピー、2000ルピーの8種類があります。紙幣には、表面に英語とヒンディー語、裏面に15の地方言語で額面が記載されています。2016年の高額紙幣廃止に伴い、1000ルピー札は廃止され、500ルピー札は新デザインとなり、新たに2000ルピー札が発行されました。新札には偽造防止技術が施されており、セキュリティー・スレッド、潜像、パールインク、マイクロ文字、表裏透過レジストレーション、ユーリオンなどが採用されています。また、額面ごとにサイズが異なります。2017年から2018年にかけて、10、50、100ルピー札にも新札が登場し、200ルピー札も新たに発行されました。現在、新旧の紙幣が混在して流通しています。

無効になった高額紙幣

2016年11月、モディ首相は汚職と脱税の撲滅を目的として、1000ルピー札と500ルピー札の流通を停止しました。この措置により、銀行やATMには国民が殺到し、混乱が生じました。旧紙幣は一定期間、銀行で交換が可能でしたが、この政策はタンス預金を炙り出し、地下経済を可視化する狙いがありました。2023年5月には、2000ルピー札の流通も停止され、9月末までに交換または預金が推奨されました。

紙幣の使用言語

インドの紙幣には、表面にヒンディー語と英語、裏面にアッサム語、ベンガル語、グジャラート語、カンナダ語、カシミール語、コンカニ語、マラヤーラム語、マラーティー語、ネパール語、オリヤー語、パンジャーブ語、サンスクリット語、タミル語、テルグ語、ウルドゥー語の計17言語で額面が記載されています。

市民生活での実情

インドでは、銀行口座を持たない人も多く、高額紙幣が日常の買い物で使いにくい状況があります。100ルピー以下の紙幣や硬貨が頻繁に利用され、少額のお釣りは省略されることもあります。このような状況が、電子決済の普及を後押ししています。

硬貨

現在流通している硬貨は、50パイサ、1ルピー、2ルピー、5ルピー、10ルピー、20ルピーの6種類です。ただし、50パイサ硬貨は流通量が少ないです。50パイサ未満の硬貨は、法的価値を失っています。硬貨のデザインは数年ごとに変更され、材質もステンレス、ニッケル黄銅、バイメタルなどが用いられています。

為替レート

為替レートは日々変動しており、国際市場で取引されています。

まとめ

インド・ルピーは、インド経済を支える重要な通貨であり、その歴史と変遷は、インドの社会経済の変化を反映しています。電子決済の普及、高額紙幣の廃止、新紙幣の導入など、様々な出来事を経て、現在に至っています。今後もインドの経済発展とともに、ルピーの動向は注目されるでしょう。

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