ブッチャー・バション

ブッチャー・バション：狂犬の血を引く巨漢レスラーの生涯

ポール・バション（1937年10月7日 - 2024年2月29日）は、ブッチャー・バションのリングネームで知られるカナダ出身のプロレスラー。実兄はWWE殿堂入りも果たしている狂犬、マッドドッグ・バション。娘のルナ・バション、妹のビビアン・バションもプロレスラーという、まさにプロレス一家に生まれた。

初期のキャリアとマッドドッグとの合体

キャリア初期は、ニキタ・ゾロトフなるロシア人ギミックのヒールとしてアメリカ中西部で活動。その後、1959年よりポール"ザ・ブッチャー"バションとして、兄マッドドッグとのタッグチームを本格的に始動させる。1960年代にはテキサス、ジョージア、ノースカロライナなどアメリカ南部を席巻。極悪兄弟コンビとして各地のタッグ王座を奪取し、その名を轟かせた。

日本での活躍

1967年4月には日本プロレスに初来日し、第9回ワールドリーグ戦に出場。ジャイアント馬場、吉村道明ら強豪を相手に苦戦するも、芳の里、ミツ・ヒライからは勝利を収めた。また、同月には吉村&大木金太郎組のアジアタッグ王座に挑戦している。帰国後はジョージアに定着し、スタン・バションとのギミック上の兄弟コンビでも活動した。

1971年にはAWA世界タッグ王者として国際プロレスに参戦。グレート草津&サンダー杉山組の挑戦を退け、実力を見せつけた。AWAを主戦場としながらも、カナダ各地でも活動。ポール&ジョー・ルダック、ハリウッド・ブロンズ、テキサス・アウトローズなど、様々なチームと激闘を繰り広げた。1972年にはアンドレ・ザ・ジャイアントをボディスラムで投げ、観客を沸かせた。

シングルでの活動とWWF参戦

1973年にマッドドッグとのコンビを解消。1974年には国際プロレスに再来日し、ストロング小林、ラッシャー木村らとシングルマッチで対戦。1975年にはWWWF（現WWE）に登場し、ブルーノ・サンマルチノのWWWFヘビー級王座に挑戦。マディソン・スクエア・ガーデンではアンドレとのシングルマッチも実現した。また、ボビー・ダンカンやジョージ・スティールと組み、WWWF世界タッグ王座にも挑戦している。

1976年には新日本プロレスに初参戦。第3回ワールド大リーグ戦に出場するも、星野勘太郎、木戸修らに敗れるなど、戦績は振るわなかった。

WWF復帰と引退後の活動

1983年下期より、WWFに復帰。ジミー・スヌーカ、サージェント・スローターらベビーフェイス勢のジョバーを務めた。1984年には、実兄マッドドッグもベビーフェイスとしてWWFに参戦。兄弟タッグは実現しなかったものの、ポールの結婚式が番組内で執り行われるなど、話題を呼んだ。

現役引退後は、1985年に新日本プロレスに、1986年にはジャパン女子プロレスにマネージャーとして来日。娘のルナ・バションをサポートした。2003年には自著を出版。2019年には兄とのドキュメンタリー映画が公開された。

晩年と死

1993年に結腸癌、2003年に咽頭癌を患い、闘病生活を送る。2024年2月29日、86歳で死去。

得意技

ハングマンズ・ホールド（The Hangman's Noose）
ベアハッグ
* エルボー・ドロップ

タイトル歴

数々のタッグ王座を獲得。特にマッドドッグ・バションとのコンビでは、AWA世界タッグ王座をはじめ、多くのタイトルを手にした。

ブッチャー・バションは、兄マッドドッグの陰に隠れがちながらも、その巨体とパワーを活かしたファイトスタイルで、多くのファンを魅了した。ハングマンズ・ホールドを日本で初公開したレスラーとしても知られ、日本のプロレス界にも大きな足跡を残した。

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