于謹

于謹（う きん）

于謹（493年 - 568年）は、北魏末から北周にかけての軍人であり、字は思敬、本貫は河南郡洛陽県です。その卓越した軍事的手腕で、北魏から西魏、そして北周へと時代が移り変わる激動の時代を生き抜き、国家の安定に大きく貢献しました。

生涯

幼い頃から孫子の兵書を愛読し、その才能は早くから認められていました。元天穆には「王佐の材なり」と評されたと伝えられています。

北魏時代

523年、破六韓抜陵の乱が発生すると、于謹は元纂の下で柔然討伐に参加し、その軍事的な才能を発揮しました。少数精鋭の騎兵を率いて敵を翻弄し、数々の勝利を収めました。特に、鉄勒との戦いでは、寡兵ながらも知略を駆使して敵を欺き、見事な勝利を飾りました。これらの功績により、積射将軍の号を受けました。

524年からの広陽王元淵の下での反乱鎮圧では、その語学力を活かし、諸国の言語に通じていたことから、単身で敵陣に乗り込み、多くの部族を帰順させるなど、外交手腕も発揮しました。

その後も、南朝梁との戦いや葛栄討伐などで活躍し、孝荘帝の即位後には鎮遠将軍に任じられ、直寝に転じました。爾朱天光の下での邢杲の乱鎮圧、万俟醜奴討伐にも参加し、石城県伯に封じられました。

532年、韓陵の戦いで高歓率いる軍に敗れると、関中に帰還し、賀抜岳に重用されました。

西魏時代

534年、賀抜岳が殺害されると、于謹は宇文泰に関右に拠って自立し、天子を擁立することを進言しました。孝武帝に従って関中に入り、宇文泰の下で潼関を攻略し、北雍州刺史に任じられました。西魏建国後は、驃騎大将軍などの要職を歴任し、国政に深く関与しました。

537年、王游浪の反乱を鎮圧し、東征では先鋒を務めました。沙苑の戦いでの勝利に貢献し、常山郡公に封じられました。その後も、河橋・邙山の戦いに参戦し、大丞相府長史、大行台尚書などを歴任しました。541年には、稽胡の反乱を鎮圧し、大都督・恒州刺史に任じられました。邙山の戦いでは、敗走中に敵を欺く奇策を用いて、味方の撤退を助けるなど、老獪な戦術家としての面も見せました。

547年、東魏の侯景が西魏に帰順を求めると、宇文泰に諫言しましたが聞き入れられず、自身は潼関に駐屯し、華州刺史を兼任しました。その後、司空に任じられ、549年には柱国大将軍に進みました。554年には、江陵を攻略し、多くの財宝と人々を連れ帰りました。

北周時代

557年、北周が建国されると、于謹は燕国公に封じられ、太傅・大宗伯を歴任し、朝政に参与しました。宇文泰の死後、幼い宇文覚を擁立し、宇文護の執政を支えました。559年、賀蘭祥の吐谷渾遠征では、名目上の総指揮官として戦略を授けました。563年には三老とされ、延年杖を賜りました。564年、宇文護の北斉遠征では、老齢ながらも軍略の諮問に答えました。567年には雍州牧に任じられましたが、翌年、76歳で死去しました。死後、太師・雍州刺史の位を追贈され、諡を文とされました。

人物

于謹は、智略に優れただけでなく、語学にも堪能であり、外交交渉においてもその才能を発揮しました。また、老いてもなお衰えぬ軍事的な手腕は、周囲から高く評価されていました。

子女

于寔（上柱国・大左輔・燕国公）
于翼（上柱国・太尉・任国公）
于義（上柱国・潼州総管・建平郡公）
于儀（上大将軍・趙州刺史・安平郡公）
于智（柱国・涼州総管・大司空・斉国公）
于紹（上開府・綏州刺史・華陽郡公）
于弼（上儀同・平恩県公）
于蘭（上儀同・襄陽県公）
于曠（上儀同・恒州刺史）

伝記資料

『周書』巻15 列伝第7
* 『北史』巻23 列伝第11

もう一度検索