卞壼

卞壼（べん こん）

卞壼（281年 - 328年）は、中国西晋・東晋時代の政治家、武将です。字は望之といい、済陰郡冤句県（現在の山東省菏沢市牡丹区）の出身です。

生涯

卞壼は、卞粋の長男として生まれました。父は「卞氏六龍」と称されるほどの秀才であり、卞壼自身も若い頃からその名を知られていました。斉王司馬冏からの誘いがありましたが、これには応じませんでした。

太安2年（303年）に八王の乱で父が長沙王司馬乂に誅殺されると、身の危険を感じて故郷に帰りました。その後、永嘉年間に再び朝廷に召し出され、著作郎に任じられ、父が授けられていた成陽公の爵位を継承しました。永嘉の乱で洛陽が前趙によって陥落させられると、徐州刺史の裴盾を頼り、その代理として広陵相を務めました。

その後、司馬睿が建康で元帝として即位し東晋を建国すると、卞壼は召喚されて従事中郎となりました。皇太子司馬紹（後の明帝）の長史となりますが、母の喪に服すために一時的に職を辞します。復帰後は太子中庶子、散騎常侍と昇進し、侍講東宮、太子詹事、御史中丞、吏部尚書と、要職を歴任しました。

太寧2年（324年）の王敦の乱では、中将軍として王含の軍勢を防戦し、その功績により建興県公に封じられましたが、すぐに領軍将軍に転じました。

明帝の病が重篤になると、庾亮、王導、郗鑒、温嶠、陸曄らと共に皇太子司馬衍（後の成帝）を補佐するよう遺命を受けました。明帝の崩御後、顧命により右将軍・給事中・尚書令となり、成帝政権下で庾亮と共に朝政を担うことになります。しかし、卞壼は戦で負った背中の傷が悪化し、度々辞任を願い出ましたが、受け入れられませんでした。

咸和2年（327年）には光禄大夫・散騎常侍に任じられます。同年、庾亮が北の大軍閥である蘇峻の軍権を剥奪しようと大司農に任命しようとした際、卞壼は蘇峻の反乱を警戒して強く反対しましたが、受け入れられませんでした。卞壼の懸念通り、蘇峻は反乱を起こし、蘇峻の乱が勃発しました。卞壼は尚書令に復し、右衛将軍に任じられました。

咸和3年（328年）、蘇峻が東陵口まで迫ると、卞壼は仮節・領軍将軍・給事中・都督大桁東諸軍事として西陵で郭黙・趙胤らと蘇峻軍を迎え撃ちましたが、大敗を喫して退却しました。蘇峻が青渓に迫った際も迎撃に出ましたが、火計を用いた蘇峻軍の前に再び大敗し、子の卞眕・卞盱と共に戦死しました。享年48歳。

咸和4年（329年）に蘇峻の乱が鎮圧されると、その忠節が認められ、侍中・驃騎将軍・開府儀同三司が追贈され、諡は忠貞とされました。

墓所

南京市朝天宮には、北宋時代に整備された卞壼の墓所が現存しています。1982年には南京市文化遺産に登録されました。

逸話

『三十国春秋』によると、没後85年経った義熙9年（413年）に卞壼の墓を暴いた者がいましたが、その時、卞壼の遺体は腐敗しておらず、生きているかのような状態を保ち、爪が樹根のように背中まで伸びていたと伝えられています。

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