沈林子

沈林子（しんりんし）

沈林子（387年 - 422年）は、東晋から南朝宋にかけての軍人であり、字は敬士、本貫は呉興郡武康県です。激動の時代を駆け抜け、数々の戦で目覚ましい功績を挙げました。

生涯

沈林子は、沈穆夫の子として生まれました。父と共に京口に移り住み、そこで成長しました。幼い頃に王恭から「王子師のようだ」と評されたという逸話が残っています。隆安3年（399年）、孫恩の乱に沈氏一族が加担したことが発覚し、林子は父、祖父、叔父を失うという悲劇に見舞われました。この事件がきっかけとなり、林子は復讐を誓い、劉裕に忠誠を誓うことになります。

元興3年（404年）、劉裕が桓玄打倒のために挙兵すると、林子は兄の沈田子と共に従軍し、京口の占拠と建康の平定に貢献しました。彼は父祖の仇である沈預を討ち、その首を墓前に供え、長年の復讐を果たしました。その後、劉毅に冠軍参軍として迎えられましたが、就任しませんでした。義熙4年（408年）、劉裕が揚州刺史となると、林子はその下で揚州従事となり、建熙県令を兼任し、資中県五等侯に封じられました。

義熙5年（409年）、劉裕が南燕を攻撃すると、林子は従軍して行参鎮軍軍事を務めました。臨朐攻略戦では、南燕の慕容超が派遣した虎班突騎を撃破し、晋軍の危機を救いました。広固攻略戦では、劉敬宣と共に広固城の西隅を攻めました。義熙6年（410年）、広固が陥落すると、盧循の反乱軍が建康に迫りました。林子は別軍を率いて石頭に入り、盧循軍と連戦しました。徐赤特が無謀な攻撃を仕掛け伏兵に敗れると、林子は彼の軍を収容し、堤を破壊して盧循軍の進軍を阻止しました。その後、朱齢石と合流し、反撃に転じて盧循軍を破りました。劉裕は徐赤特を処刑し、林子を参中軍軍事に任命しました。

義熙8年（412年）、劉裕が劉毅を討伐すると、林子は参太尉軍事を務めました。義熙11年（415年）、劉裕が司馬休之を討伐する際にも従軍し、先鋒を務めました。反乱軍の郭亮之が武陵を占拠すると、林子は軍を率いて郭亮之を討ち、七里澗で斬首しました。武陵平定後、石城の魯軌を討伐し、魯軌が襄陽に敗走すると追撃しました。襄陽が平定されると、江陵の留守を任されました。義熙12年（416年）、劉裕が平北将軍を兼任すると、林子は太尉参軍のまま参平北軍事となりました。

劉裕が後秦討伐のために北伐を開始すると、林子は参征西軍事となり、三府の中兵を代行し、建武将軍の号を与えられました。先鋒として軍を率い、汴水から黄河へと進軍しました。倉垣を攻略し、襄邑に入りました。義熙13年（417年）、後秦の薛帛が拠る解県を襲撃して破り、兵糧を確保しました。尹昭が拠る蒲坂を檀道済と共に攻撃しますが、王鎮悪が苦戦している潼関への転進を進言し、包囲を突破して潼関へ向かいました。姚紹率いる後秦軍に包囲され苦戦を強いられますが、黄河を渡り劉裕の本隊に合流しました。

姚紹が残した姚鸞を夜襲し破ると、姚讃が駐屯する河上の城塁を攻撃して連破し、姚紹率いる3万の軍勢も打ち破りました。

劉裕本隊が閿郷に入り、姚泓が堯柳に兵を駐屯させると、沈田子が武関から北上し藍田に軍を進めていました。劉裕は林子を秦嶺から進軍させ沈田子を支援させました。姚泓を追撃し、姚泓は灞上に逃れ、沈田子と林子の兄弟は長安を奪取しました。林子は参相国事となり、多くの人々が林子のもとに帰順しました。後秦の残党を寡婦水まで追撃し、多数の捕虜を捕らえました。

劉裕が東帰する際、林子は水軍を率いて石門に駐屯し、劉義隆が荊州刺史となると、その下で西郎中兵参軍となり、新興郡太守を兼ねました。劉義隆が鎮西将軍となると、林子は鎮西府に転じ、建威将軍・河東郡太守に任じられました。劉裕が再び北伐を計画しますが、林子が強く諫めたため中止となりました。

永初元年（420年）、劉裕が皇帝に即位すると、林子は漢寿県伯に封じられ、鎮西府諮議参軍に任じられました。母の死により呉興に帰郷し葬儀を行いましたが、喪が明けないうちに輔国将軍として起用されました。しかし、ほどなくして病に倒れ、永初3年（422年）に46歳で亡くなりました。諡は懐伯。

子女

沈邵（後嗣）
沈亮
沈璞

伝記資料

『宋書』巻100 列伝第60
* 『南史』巻57 列伝第47

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