東郷町斧渕

鹿児島県薩摩川内市東郷町斧渕

概要

東郷町斧渕は、薩摩川内市の中北部に位置する地域です。旧東郷町の中心部であり、歴史と文化が色濃く残っています。川内川の恵みを受け、古くから交通の要所として栄えてきました。

地理

薩摩川内市の中北部、川内川下流域に位置しています。北は東郷町鳥丸、南は楠元町や白浜町、東は東郷町南瀬や東郷町山田、西は田海町と隣接しています。地域内には、薩摩川内市立東郷学園義務教育学校や薩摩川内市役所東郷支所など、公共施設が集まっています。北部は農業地域、南部は国道267号沿いに商店街と住宅地が広がっています。

河川

地域内には、一級河川である川内川が西へ蛇行しながら流れています。また、北部の山地からは、樋渡川や田海川などの支流が川内川に合流しています。これらの河川は、地域の生活や農業に重要な役割を果たしています。

川内川（一級河川）
樋渡川
田海川
下鶴田川
岩切川

自然公園・自然保護地区

東郷町斧渕の一部は、川内川流域県立自然公園の普通地域に指定されており、豊かな自然環境が保全されています。

地名の由来

「斧渕」という地名は、斧研山という山の山麓で川内川の淵に位置することに由来するとされています。

小字

角川日本地名大辞典によると、東郷町斧渕には多数の小字が存在します。例として、古川、川口、大渡、下一重、上一重、廻淵、常盤元、下柚木田、中柚木田、上柚木田、竹下、西前寺渡、常福寺、下淵脇、上淵脇、高城、山居口、石坂、小路、愛宕下、谷ノ口、城内、大手口、東川内、稲園、向江田、庄原、狸ヶ宇都、開山、西俣、久木元、高松、福田、道ノ宮、梅木ヶ迫、鳶巣、新城、上野、宇都良、下ノ迫、榎木田、藤原、久保田、沖牟田、樋渡、赤剥、堂ノ下、諏訪川原、瀬戸ノ上、町口町、下鶴田、上鶴田、善神王、後馬場、柳ヶ丸、猫村、岩下薬師院、宇都、松田、松田川原、七迫、平田、登瀬坂、永迫、内田、古城、穴田、轟、谷津、崩ヶ迫、沖園、寺ヶ原、山仁田、深田、大瀬戸、上穂計、下穂計、栗脇、灰ノ牟礼、小田坂、諏訪谷、丸尾、甲田、小田原、現王、楠松田、小田、簾掛、宮ヶ原、猿喰、平木場、鴛川内、斧研、内浦、石堂、原田、前田、滑石、越ノ元、原道、頭無、岩塚、内繰、茨原、東、小仏町、中棚、浦田、枯木ヶ迫、芹谷、大迫、笠之元、平尾、三本松、造鹿倉、桜ヶ平、下水流、中水流、上水流、佐山、前原、前畑、五社段、通山、久留須、柏木、紫尾ヶ迫、石井手、外戸ノ元、池平、岩切、池畠、大園、八幡前、七ツ枝、大原、京塚、耳仏、荒平、浦田前、木場田、八升坂、登瀬迫、烏帽子形、石原、笹原、茶屋段、松坂、野中、大谷、境ノ谷、高山、大牟礼、古屋敷、家深、鍋川、永山、立岩などがあります。

歴史

先史時代

松尾神社付近や新城跡からは、弥生土器や古墳時代の須恵器の破片が発見されており、古くから人々が生活していたことが伺えます。

平安時代

東部の司野は、風光明媚な地として知られ、歌人能因法師の「能因歌枕」にも詠まれたとされています。司野という地名は、古代に国司が下向してきたことに関係するという説があります。また、大前氏の居城した国司城の境域が現在の司野まで含まれており、国司城の山野であったことから司野という地名が付いたとも言われています。

中世

高城郡の地頭であった千葉氏が権力を失うと、大前道友が斧渕城を構え、東郷や高城・祁答院を統治しました。斧渕城は別名を国司城・古城といい、司野からかつての薩摩川内市立東郷小学校に至る丘陵地帯にありました。大前氏は、約313年にわたり東郷一帯を統治しました。

その後、室町時代には田海の車内氏が東郷を統一し、斧渕の鶴岡城に転居。子孫は東郷氏を名乗りました。斧渕という地名は、南北朝時代より見え、「東郷之鋒（斧）淵村」という記述が初見とされています。斧渕村は東郷氏の統治下となりましたが、一部は大口の高城氏が領有していたとされています。天正15年の九州平定の際、東郷氏は鶴岡城に籠り豊臣秀吉軍に抗戦しましたが、その後降伏し、東郷氏は佐土原に移封されました。

近世

江戸時代には薩摩藩の外城である東郷に属し、地頭仮屋が置かれ、その周辺に麓集落が形成されました。川内川沿いには、舟倉町と呼ばれる商人町も栄え、水運の要衝として重要な役割を果たしました。東郷の地頭は掛持地頭であり、遥任でした。慶長19年に宮之城島津家が転封されたのちは薩摩藩の直轄領となりました。その後、日置島津家が東郷領主となった時期もありましたが、再び薩摩藩の直轄領となりました。

人形浄瑠璃の伝来

元禄元年、東郷の武士が江戸から文弥節の師匠を連れ帰り、人形浄瑠璃を広めたとされています。これが「東郷文弥節人形浄瑠璃」の起源とされ、現在では国指定重要無形文化財となっています。

舟倉町と水運

地頭仮屋が置かれた地区は「舟倉」と呼ばれ、水運の要地として発展しました。舟倉町には多くの商店が並び、川内川を利用した水運が盛んに行われました。舟倉には、豪商として知られた田代家があり、明治時代には鹿児島市内の商人である岩元善兵衛に金禄公債を売り渡したり、借入を行うなど経営は厳しかったとされています。田代家は、山形屋から暖簾分けを許され、山形屋川内支店を開業しましたが、1963年に閉店しました。

明治初期

明治時代になると、1874年に東郷郵便役所が設置され、1879年には戸長役場が置かれました。1887年には隈之城警察署東郷巡査駐在所が舟倉に置かれましたが、2012年に廃止されました。

町村制施行以降

1889年の町村制施行により、上東郷村が成立し、斧淵は上東郷村の大字となりました。1922年には舟倉で大火が発生、1943年には大洪水が発生しました。第二次世界大戦中には疎開も行われ、1945年には舟倉がアメリカ軍による空襲で大きな被害を受けました。

1952年に東郷村が町制施行し東郷町となりました。1980年には総合体育施設、1982年には町民体育館が完成しました。1992年には国道267号の田海バイパスが開通しました。

1997年の鹿児島県北西部地震では、東郷町役場で震度5弱相当の揺れが観測されました。

2004年に東郷町は周辺町村と合併し、薩摩川内市となり、斧渕は大字「東郷町斧渕」となりました。

文化財

国指定

東郷文弥節人形浄瑠璃（重要無形民俗文化財）

市指定

松尾神社の木像（有形文化財（彫刻））
経塚山板碑（有形文化財（歴史資料））
石堂の田の神（有形民俗文化財）
小路磨崖仏（記念物（史跡）)
司野古石塔群（記念物（史跡））
古城殿石塔（記念物（史跡））
渋谷重親墓碑（記念物（史跡））

施設

公共

薩摩川内市役所東郷支所
東郷保健センター
東郷公民館
薩摩川内市立図書館東郷分館
斧渕地区コミュニティセンター
東郷総合運動場
とうごう共同福祉施設アミティプラザ東郷

教育

薩摩川内市立東郷学園義務教育学校
薩摩川内市立東郷幼稚園
若あゆこども園

郵便局

東郷郵便局

寺社

諏訪神社
妙見神社
愛宕神社
五社神社
松尾神社
九玉淹崎神社
水天宮
司野神社
浄久寺（浄土真宗本願寺派）
金剛寺（臨済宗相国寺派）

産業

2014年の経済センサスによると、東郷町斧渕には99の民営事業所があり、862人が従業員として働いています。主な業種は、飲食料品小売業、その他小売業、総合工事業、窯業・土石製造業などです。

2015年の国勢調査では、15歳以上の就業者数は1,601人で、製造業、医療・福祉、卸売業・小売業、建設業、農業・林業などが主な産業となっています。

商業

江戸時代には舟倉町が商人町として栄え、多くの商店がありました。明治時代には藍染物屋、油しめ屋、焼酎屋、豆腐屋、駄菓子屋、反物屋などが並び、大正時代には料亭も存在しましたが、1943年に廃業しました。1985年には東郷スーパーが開店しました。

2月と12月には市も開催されていましたが、現在は場所を移して開催されています。現在では、近隣の商業施設の影響を受け、購買力の流出が課題となっています。

教育

東郷町斧渕には、薩摩川内市立東郷学園義務教育学校と薩摩川内市立東郷幼稚園があります。かつては、鹿児島県立東郷高等学校、薩摩川内市立東郷中学校、薩摩川内市立東郷小学校も存在していました。

高等学校：1908年に上東郷村立東郷女子実業補習学校として設置され、1987年に閉校しました。
義務教育学校：2019年に開校した薩摩川内市立東郷学園義務教育学校は、小中一貫校です。旧東郷町の全域が通学区域となっています。
中学校：1947年に開校した薩摩川内市立東郷中学校は、2019年に東郷学園義務教育学校に移行するのに伴い閉校しました。
小学校：1873年に設立された薩摩川内市立東郷小学校は、2019年に東郷学園義務教育学校に移行するのに伴い閉校しました。
幼稚園：1951年に開設された薩摩川内市立東郷幼稚園は、1987年に周辺の幼稚園を統合しました。

交通

道路

国道267号
鹿児島県道46号阿久根東郷線
鹿児島県道335号市比野東郷線
鹿児島県道344号東郷山田宮之城線

路線バス

鹿児島交通
薩摩川内市コミュニティバス

地域南部には国道267号が東西に通っています。旧道は川内川沿いの舟倉を通り、1992年に田海バイパスが開通しました。西部には鹿児島県道46号が南北に通り、阿久根方面へ接続しています。その他、鹿児島県道335号、344号も地域内を通っています。

かつては、宮之城線の楠元駅が最寄り駅でした。

脚注

注釈

出典

参考文献

橋口兼古、五代秀堯、橋口兼柄 著、島津久光 編『三国名勝図会』薩摩藩、1843年。
東郷町郷土誌編集委員会『東郷町郷土史』東郷町、1969年。
角川日本地名大辞典編纂委員会『角川日本地名大辞典 46 鹿児島県』角川書店、1983年。
福岡管区気象台、地震津波監視課、鹿児島地方気象台、熊本地方気象台『1997年3月26日と 5月13日の鹿児島県薩摩地方の地震調査報告』 62巻〈験震時報〉、1998年8月17日。
芳即正、五味克夫『日本歴史地名大系47巻 鹿児島県の地名』平凡社、1998年。
東郷町郷土誌編纂委員会『東郷町郷土史 続編』東郷町、2003年。
上村まい,野中哲照、2014、「東郷文弥節人形浄瑠璃の伝来」、『国際文化学部論集』15巻3号、鹿児島国際大学国際文化学部。
* “令和3年度薩摩川内市の教育” (PDF). 薩摩川内市教育委員会. 2021年5月30日閲覧。

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