牽招

牽招（けんしょう）

牽招（生没年不詳）は、後漢末期から三国時代にかけての魏の武将・政治家で、字は子経といいます。冀州安平郡観津県の出身で、子は牽嘉と牽弘、孫には牽秀がいます。

生涯

若き日

10代の頃、同郷の楽隠に師事し、楽隠が何苗の長史となると、牽招もこれに随従しました。中平6年（189年）、洛陽の動乱で何苗と楽隠が殺害されると、牽招は他の門下生と共に楽隠の棺を守って帰郷しようとしました。しかし、途中で賊に襲われ、他の門下生が逃亡する中、牽招は棺に取りすがって泣いて頼み、その義気に感じ入った賊に見逃されました。この出来事から、牽招の名は知られるようになりました。

また、若い頃には劉備と交友があり、「刎頸の交わり」を誓った仲であったと伝えられています。

袁紹への仕官

その後、牽招は冀州の袁紹に仕え、督軍従事を拝命し、烏桓突騎を兼任しました。袁紹の死後は、その子である袁尚に仕えました。建安9年（204年）、袁尚が中山郡へ逃れると、その従兄弟である并州刺史の高幹に救援を求めましたが、高幹は曹操にも袁尚にも与しようとせず、牽招を殺害しようとしました。牽招は逃走しましたが、退路を絶たれていたため、袁尚の下に戻ることができず、そのまま曹操に降伏しました。

曹操への仕官

曹操に降伏後、牽招は冀州従事として仕えました。その後、曹操に反逆した袁譚を支援する峭王（遼東烏桓の蘇僕延）を説得するため、柳城に派遣されました。そこで公孫康配下の韓忠と遭遇し、韓忠が公孫康の正統性を主張して曹操を批判したため、怒って韓忠を斬り捨てようとしました。しかし、峭王が謝罪したため、牽招は剣を収め、峭王は曹操に服することになりました。この時、韓忠は峭王に単于の印綬を授けようとしていたとされています。

建安10年（205年）の袁譚滅亡後、牽招は軍謀掾に任命され、烏桓征伐に随行し、柳城で護烏桓校尉に任命されました。建安12年（207年）、公孫康が袁尚・袁煕の首級を送ってくると、牽招は首級の前で祭祀を行いました。曹操はこの行為を咎めることなく、むしろその忠義を評価し、茂才（秀才）としました。

建安20年（215年）の漢中征伐にも随行し、平定後は中護軍として漢中に留まりました。その後、鄴に戻り、平虜校尉として青州と徐州の郡兵を率いて東萊郡の賊を破り、その首領を斬りました。

魏王朝での活躍

黄初元年（220年）、曹丕が即位すると、牽招は使持節・護鮮卑校尉に任命され、昌平に駐屯しました。解儁とともに鮮卑を監督し、寛大な統治を行い、漢族・異民族を問わず帰順者を受け入れました。鮮卑族の素利や弥加ら部落十数万家、歩度根や泄帰泥ら部落3万家を帰服させることに成功しました。その後、右中郎将・雁門太守となり、優れた行政手腕で農地開発と秩序安定に貢献しました。また、雲中郡では泄帰泥らを指揮して軻比能を撃破しました。

黄初7年（226年）、曹叡が即位すると、牽招は関内侯の爵位を賜りました。太和2年（228年）、護烏桓校尉の田豫が馬邑城で軻比能に包囲されると、牽招は救援に駆けつけ、田豫を救出し、軻比能を撃破しました。その後、諸葛亮と連携する軻比能を討伐する計画を進めていましたが、その途中で亡くなりました。

牽招の子である牽嘉の子、つまり牽招の孫にあたる牽秀は、晋代に平北将軍にまで昇進しました。

人物評

陳寿は牽招について、「義を守ること壮烈で、威厳と功績は顕著だった。その能力を十分に発揮するには、大守程度では役不足であった。」と評しています。

小説『三国志演義』には登場しません。

参考文献

* 『三国志』魏書26牽招伝

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